② 第5学年の実践 ア 単元名 「三角形を調べよう」 イ 単元について 本単元では、三角形の内角の和が180°になることを理解するとともに、それ を用いて四角形の内角の和がどれだけになるかを考えることをねらいとしている。 また、平行四辺形、台形、ひし形、四角形の敷き詰めを取り扱っている。四角形 の内角の和は、360°になっていることから、1点に集まる角が360°になる ように敷き詰めていけば、合同な四角形は敷き詰めることができる。 この敷き詰め学習を通して、平面をすき間なく敷き詰め並べ方を考えるとともに、 敷き詰めた図形の中に他の図形を認めることや平行線の性質に気づくなど、図形に ついての見方や感覚を豊かにすることをねらいとしている。 ウ 児童の実態 (男子18名、女子13名、計31名) レディネステストの「角の大きさを2通りの方法で求める問題」では、180° より何度大きいかという方法で求めた場合の正答が26名、誤答が5名であった。 また、360°より何度小さいかという方法で求めた場合の正答が28名、誤答 が3名であった。 両問とも誤答者が数名いたが、180°や360°をもとに考えることはできて いた。ただ、何を問われているのか問題把握の不十分さが見られた。 普段の算数の授業では、自力解決の場面で既習事項を用い、自分なりに考えてみ ようとする姿が全体的に見られる。共同解決の場面では、発表にやや偏りがある。 考えを言葉や図、式でノートに書くことはほとんどの児童ができるが、個人差があ り、個別に配慮を要する児童も数名いる。 エ 研究の中心 (②思考したことを表現し、伝え合う場の工夫) 上記のような実態を踏まえて、伝え合える場ではまず、図や言葉、式等自分の考 えを書き込ませた学習シートを活用させるようにした。発表の際には、それをもと に一人一人の考え方を丁寧に吟味し、個人の意見のみに終わらないように、「自分 は、ここまで考えている」 「似ているが少し違う」「付け加える」等の集団思考の練 り上げができるように支援をした。 また、児童の思考を全体に伝える一つの手段として、かつ、思考の全体共有のた めに、四角形や四角形を構成する4つの角の拡大図を活用した。実際に拡大図に書 き込ませたり、並べ替えをさせたりしながら、説明をさせるようにした。 -1- オ 本時の学習 (ア) 目標 三角形の内角の和のきまりを適用し、四角形などの内角の和を求めることがで きる。 (イ) 本時指導の主張点 伝え合う場(共同解決の場)では、一つ一つの考え方を全員で考えていく。また、 児童それぞれの考え方(段階)を認め、よりよい解決方法を探らせるようにする。 (ウ) 授業の実際 主な学習活動 形態 教師の支援と児童の反応(○主発問 T 指示 C 児童の反応◇評価) 1 前時の復習をする。 一 斉 T 三角形の内角の和は何度でしたか。 (徹底) C 180°です。 2 学習課題を知る。 一斉 ○四角形の4つの角の大きさの和は、何度になるでしょうか。 (徹底) T まず、予想してみましょう。 C 270°。180°より大きい。 C 360°かな。長方形は90°×4で360°だから・・・。 3 自力解決をする。 個別 T 学習シートに自分の考えを書いてください。図(四角形)や言葉、式など (能動) を使って考えたことを整理していきましょう。 C 分度器で4つの角の大きさをはかってみよう。 C 三角形のときは、3つの角を寄せ集めて180°になったぞ。 C 四角形も同じ方法でできないかな。4つの角を切り取って寄せ集め てみよう。 C 対角線で分けると2つの三角形になるぞ。ということは・・。 4 共同解決をする。 一斉 T どんな方法で考えて、何度になったかな。発表しましょう。 (1) 四角形の4つの (能動) 研究の中心②思考したことを表現し、伝え合える場の工夫 内角の和とその求 ・個人の思考を整理した学習シートの活用・意見の練り上げ め方を発表する。 ・拡大図(手段、共有化)の活用 C ぼくは、四角形を2つの三角形に分けて考えました。三角形(の内角の 和は)は180°だから、360°になると思います。(図5-1) T 今の説明は分かりましたか。だれかもう 一度説明してください。 C この角とこの角とこの角で180°。 こっちの三角形でも同じことなので、 180°。全部で合わせると360°で す。 T ○○くんの言葉で説明してください。 C 対角線を引いて三角形2つになります。 180°が2つで360°です。 T だれか指さしながら説明してください。 C ここと、こことここで180°。また、こことこことここで180°。 180°が2つで360°です。 T 悩んでいる人がいますね。 T 三角形の二つの角を合わせたら、四角形の一つの角になるね。 T 全部合わせると四角形の4つの角になって いるようですね。 T 難しい考え方だけど前の学習を生かしてま (2) 五角形の5つの すね。 ・・・他にないですか。 内角の和の求め方 C 私は、分度器を使ってそれぞれの角の大き を考える。 さをはかりました。120°、 80°、 75°、85°で360°になりました。 C 4枚の四角形を使って4つの角を集めまし た。360°になりました。 -2- C 四角形の四つの角の和は360です。 T では、これ(五角形)はどうですか。 ○五角形の5つの内角の大きさの和は何度になるでしょうか。 C 対角線で3つの三角形に分けることができるので、180×3=540 C 三角形と四角形にもなるので、180+360=540 ◇三角形の内角の和のきまりを使って四角形などの内角の和を考える ことができる。(シート) T なるほどねぇ。三角形(四角形)に分けて考えていくといいね。 T では、六角形はどうなるかな。七角形は? C そうか!!180°ずつ増えていくんだ。何角形でも、求められるぞ!! 5 本時のまとめをする 一斉 C 四角形や五角形の内角の和が分かりました。 (徹底) C 何角形になっても180°ずつ増えていくということがわかりおもしろ かったです。 カ 成果と課題 (ア) 成果 伝え合える場では、学習シート(図5-1)に自分なり の考えを書き込むことにより、自信をもって発言に向か おうとする姿が見られた。前時までの学習の跡を教室横 面に掲示しておいたことで、それをヒントとして活用し、 課題解決にあたることができたことも意欲的な発表へと 【図5-1】 つながったと思われる。 考えが、「同じ」 「似ている」場合も何度か繰り返し発言させることで、個人・ 集団としての思考も深まっていった。拡大図も思考したことを共有するという意 味で効果的であった。 (イ) 課題 教師側の指名の仕方(意見の取り上げ方)に課題が残った。切ったり、測ったり といった具体的操作活動を伴うものから、対角線で2つの三角形に分割して考え るやり方へ練り上げていくことを考えていたが、それとは逆になってしまい、十 分な練り上げとはならなかった。 児童の「思考」「伝え合う活動」をスムーズに、また、活発なものにするため にも個の考え方を発表前にしっかり把握しておく必要があった。 -3-
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