7 パラシュートの落ち方調べ

〈第 29 回 山﨑賞〉
7 パラシュートの落ち方調べ
静岡市立葵小学校
3 年 吉村 健吾
1 研究の動機
浜松にはやぶさ展を見に行った時、
はやぶさのカプセルは宇宙からパラシュートで落ちてきたが、
そのパラシュートの形が十字形をしていたと知ってふしぎに思った。静岡自然を学ぶ会のワークシ
ョップに参加した時、パラシュートの形によって空気のつぶがぶつかってじゃまをする力がちがう
から落ちるはやさが変わることを聞いたので、自分で作って調べてみることにした。
2 研究の目的
パラシュートで安全に着地するために、ぐらぐらしないでゆっくり地面に落ちるパラシュートを
作ることにした。パラシュートの形、大きさ、ひもの長さ、おもりの数を変えて、落下時間と落下
場所を調べることにした。
ひもの長さ L(cm)
3 研究の方法
(1) パラシュートの作り方
パラシュートのかさはビニール袋で、ひもはタコ
おもり
糸、おもりはクリップにした。かさの大きさは図1
パラシュートの大きさℓ(cm)
のようにかさの中心からの長さℓ(cm)
、ひもの長さ
は L(cm)とした。
図1 パラシュートの大きさℓとひもの長さ L
(2) 測定方法
風のえいきょうを受けないように室内で測定をした。落下場所は、写真
1 のようなシートを作って A ∼ F 点のどこに落ちたか調べた。落下時間は
手をはなした時からおもりが紙についた時までとして、10 回測定した平き
ん落下時間を調べた。
4 研究の内容とわかったこと
(1) 実験1
ア 内容
写真1 測定方法
パラシュートの形
(円形,八角形,六角形,四角形,三角形,
十字形)を変えて落下場所と落下時間を調べた。
(ひもの長
さ L = 50 cm、大きさ ℓ = 30 cm、おもり1個の時)
イ 結果は実験2の結果と一緒に比較
(2) 実験2
ア 内容
図2 大きさを変えたパラ
パラシュートの大きさを変えてℓ = 20 cm,ℓ = 10 cm
シュートの形と落下時間と
の時のいろいろなパラシュートの形
(円形,八角形,六角形,
の関係
四角形,三角形,十字形)で落下場所と落下時間を調べた。
(ひもの長さ L = 50cm、おもり1個の時)
イ 実験1,2からわかったこと
図2より形については、どの大きさも八角形が 1 番落下時間が長かった。あとは角の数が
少なくなるほど落下時間が短くなった。円形は1番落下時間が長くなる予想だったけど、角
もなくて、つけたひもの数が多くて広がりにくいから、落下時間が短くなったと考えた。
'4''00
'3''50
落下時間
'3''00
'2''50
ℓ=30
ℓ=20
ℓ=10
'2''00
'1''50
'1''00
'''50
'''
円形
八角形
六角形
四角形
パラシュートの形
三角形
十字形
6
8
7
7
5
6
6
3
2
5
円形
八角形
六角形
四角形
三角形
十字形
5
4
3
落
下
回
数
円形
八角形
六角形
四角形
三角形
十字形
落
下
回
数
(回
)
落下
回数
4
円形
八角形
六角形
四角形
三角形
十字形
4
3
2
2
1
1
1
0
0
A
B
C
D
落下場所
E
F
0
A
B
C
D
E
F
A
B
C
落下場所
図3 ℓ = 30 cm のいろんな
形と落下場所の関係
D
E
F
落下場所
図5 ℓ = 10 cm のいろんな
形と落下場所の関係
図4 ℓ = 20 cm のいろんな形
と落下場所の関係
大きさは、円形以外の全部の形が、パラシュートが小さくなるほど落下時間が短くなったから、
空気をたくさんためられる大きなパラシュートの方が落下時間は長くなると考えた。また、パラシ
ュートの大きさが小さくなるほど、形のちがいによる落下時間のちがいが小さくなることがわかっ
た。落下場所は、図3,図4,図5より、どの大きさの時も三角形(●)のパラシュートが近くに落
ちる回数が多かったことから、
空気をためにくい形は、
落とした場所のすぐ近くに落ちると考えた。
形と落下場所との関係はほかには見つからなかった。大きさと落下場所の関係は、大きなℓ = 30 cm
の時よりℓ = 20 cm の時の方が遠くにふんわりと落ちたことから、パラシュートの形や大きさ以外
のちがいによっても変わるかもしれないと考えて、もっと調べることにした。
(3)実験3
ア 内容
おもりの数を4こに増やして、実験(1)と同じようにいろいろなパラシュートの形(円形,八
角形,六角形,四角形,三角形,十字形)で落下場所と落下時間を調べた。
(ひもの長さ L = 50 cm,
大きさ ℓ =30 cm の時)
イ 結果
'4''00
6
'3''50
5
4
'2''50
おもり1こ
おもり4こ
'2''00
'1''50
落
下回
数
落下時間(秒)
'3''00
円形
八角形
六角形
四角形
三角形
十字形
3
2
'1''00
1
'''50
'''
0
円形
八角形
六角形
四角形
パラシュートの形
三角形
十字形
A
B
C
D
E
F
落下場所
図6 おもりの数を変えたパラシュー 図7 ℓ = 30 cm のいろんな形と落下
トの形と落下時間との関係
場所の関係(おもりの数 4 個)
ウ 実験3からわかったこと
図6より、どの大きさもおもり4この方が落下時間は短くなった。
おもりが1この時と空気のつかまえ方は同じだけど、おもりが多いと
下に落ちようとする力が強くなると考えた。また、図7は図3とくら
べると、一つの場所にまとまって落ちる回数が増えたから、おもりの
数が多い方が安定して落ちると考えた。そこで、大きさとおもりの重 写真2 比べたパ
さとの関係を調べることにした。
ラシュート
実験3の追加実験
表1 実験3の追加実験結果
おもり 1 こ
おもり4こ
写真2のように、おもり1このパラシュートとおも
大きさ1倍
大きさ4倍
り4こでパラシュートの大きさの4倍のパラシュート
を作って落下時間をくらべてみたところ、表1のよう
平均落下時間
'1''19
'1''18
に落下時間はほぼ同じになったから、落下時間はパラ
シュートの大きさとおもりの数のバランスで決まると考えた。
(4) 実験4
ア 内容
八角形のパラシュートで、ひもの長さを L = 20 cm,30 cm,40 cm と変えて、パラシュートの
大きさℓ = 30 cm,20 cm ,10 cm の時の落下場所と落下時間を調べた。
イ 結果
'4''00
12
8
'3''50
7
10
'3''00
'2''00
'1''50
8
落下回数(回)
ℓ=30
ℓ=20
ℓ=10
落下回数(回)
L=50cm
L=40cm
L=30cm
L=20cm
6
4
5
L=50cm
L=40cm
L=30cm
L=20cm
4
3
'1''00
2
2
'''50
1
0
0
'''
20
30
40
ひもの長さL(cm)
50
図8 八角形のパラシュ
ートのひもの長さ L と落下
時間との関係
A
B
C
D
E
A
F
B
C
図9 ℓ = 30 cm の八角形の
パラシュートのひもの長さ
L と落下場所との関係
D
E
F
落下場所
落下場所
図 10 ℓ = 20 cm の八角形の
パラシュートのひもの長さ
L と落下場所との関係
ウ 実験4からわかったこと
大きさℓ = 30 cm の時、ひもの長さ L が短くなると
落下時間も短くなったので、
ひもが短くなるほど早く落
(a)
ちると予想したが、図8から、落下時間は、大きさとひ
もの長さのバランスによって決まると考えた。
予想通り
図 11 ℓ = 10 cm の八角形の
にならなかった組み合わせは、大きさ ℓ = 20 cm,ひも
パラシュートのひもの長さ
の長さ L = 30 ∼ 50 cm とℓ = 10 cm,L = 20 ∼ 50 cm
L と落下場所との関係
の時だった。このことから、図 12 のようにパラシュー
ひもの長さ L(cm)
ト全部の大きさ (ℓ+ℓ)とひもの長さ L が同じくらいの
長さになる時に、ゆっくり落下するのではないかと考えた。
落下場所については、図9,図 10,図 11 をくらべると、
パラシュート全部の大きさℓ+ℓ(cm)
同じ大きさならば、ひもの長さを変えても同じような
場所に落ちることがわかった。
しかし図9 ∼ 図 11 のグ 図 12 パラシュートの大きさと
ラフの形が違ったので、落下場所はひもの長さ L よりパ
ひもの長さ
ラシュートの大きさで決まると考えた。ただ、ひも
の長さ L が短くなると、落下する時におもりがぐる
(a)
(a)
(b)
ぐる回ったり、左右にゆれたので、その理由を調べ
6
ることにした。
cm
実験4の追加実験
図 13 のようなもけいを作って、
写真3のようにゆら
(b)
して、ゆれる速さをくらべてみたところ、表2のよう
写真3
10
な結果となり、(a)の方が速くゆれたから、ぐるぐるま
測定方法
cm
わったり、左右にゆれるようになったのは、ひもが短
くなったせいだと考えた。
5 これからの研究
図 13 もけい
今回はビニールでパラシュートを作ったけど、今度は
表2 実験4の追加実験結果
いろんな材料でパラシュートを作ってくらべてみたい。
(a)
(b)
また、人が使うパラシュートには、あながあいている
事を知ったので、
あなの場所を変えて実験してみたい。 10 回のゆれにかかっ
00'03''40 00'04''25
6 感想
た時間(秒)
はじめて自由研究をやった。風をうけないように、ま
どを閉めてエアコンもせんぷうきもつけないで実験をやったのであつくて大変だった。実験の前に
予想してから実験をしてかくにんするのが楽しかった。
6
5
落下回数(回)
落下時間(秒)
6
'2''50
4
L=50cm
L=40cm
L=30cm
L=20cm
3
2
1
0
A
B
C
D
落下場所
7 参考図書 理論社 NHK やってみようなんでも実験第 4 集後藤道夫監修
E
F