数理シミュレーションによる 個体群管理技術の検討と生態 系への影響評価 東京大学海洋研究所資源解析分野 松田裕之 安江尚孝 森山彰久 2015/10/1 1 「駆除」手段 侵入・定着条件・実態の解明 刺網漁獲 産卵床破壊・人工産卵床誘引 遊漁の協力catch and eat 生態系管理(他魚種、餌生物、 環境条件などの制御) 2015/10/1 2 侵入・定着の実態解明 性比を調べる 仮説:定着すれば、性比はほぼ 1:1になる 野尻湖:統計的有意に雌過剰。 2000年から1:1化(定着)の兆候 齢構成、種組成、密放流実態 2015/10/1 3 野尻湖におけるコクチバスの 2歳魚以上の性比 年 1997 1998 1999 2000 2015/10/1 捕獲日 9月10日 10月17日 11月20日 5月26日 7月23日 9月27日 5月27日 7月27日 9月1日 6月2日 8月2日 10月17日 雄♂ 22 27 0 0 23 16 3 8 3 1 9 44 雌♀ 33 36 4 11 60 30 13 16 9 3 18 48 性比 0.598 * 0.721 ** 0.731 ** 0.561 4 (長野水試を改変) 1997年から1999 年のように偏った 性比が続く確率は 1%以下 帰無モデルは棄却 継続して雌に偏った密 放流が起こった可能性 がある。 2015/10/1 5 駆除効果の推定法 本栖湖のオオクチバスを例に 謝辞:大浜秀規様(山梨県水産技術セン ター) 2015/10/1 6 オオクチバスの生態 成熟年齢 : 2歳 最高年齢 : 7歳 産卵期 : 5月下〜7月上 雄が産卵床を作り、卵仔魚を保護 2015/10/1 7 大浜 (1997)による 本栖湖 面積 4.83km2 湖岸距離 10.4km 貧栄養湖 ヒメマス ニジマス ワカサギ コイ他 全22種 2015/10/1 調査は山梨県水技セによる 8 材料と方法 潜水目視調査、刺網調査 山梨県水技セのバス類調査(1998~2000) ① 個体数推定、②個体群パラメータ推定 ③個体群管理図 個体群抑制の費用 (計算機実験) 漁獲努力量と駆除効果 (個体群、産卵) 2015/10/1 9 成魚個体数推定方法 データ: 目視による発見尾数 産卵盛期の6月を推定 2歳魚以上(成魚)を推定 個体数は区画ごとに推定 (個体数)=(生息密度)×(生息面積) 2015/10/1 10 生息密度の推定 魚は各区画ごとにランダム分布 探索幅(透視度) 探索距離 透視度内は全個体見える 生息面積の推定 2015/10/1 魚は湖岸から水深20m内に生息 11 ブートストラップ法による期待 値と信頼区間の推定 {559,318,277,680,605} 488 {599,599,605,680,277} 536 {318,277,680,605,277} 431 重複を許し、リサンプ リング ・ ・ ・ ・ 2015/10/1 485 12 推定された6月の成魚個体数 4000 3000 個 体 数 2000 (尾) 1000 0 1998 2015/10/1 1999 年 (誤差線は95%CI) 2000 13 個体群パラメータの推定方法 データ: 1999年の刺網による漁獲データ 自然死亡係数 M (バス釣りを含む) 漁獲死亡係数 F=qX (漁獲努力量に比例) q: 漁獲能率 X: 刺網反数(漁獲努力量) 全減少係数 Z=M+F Zを推定し、FとMを求めるやり方 2015/10/1 14 全減少係数Zの推定方法 個体数と齢構成に定常状態を仮定 4 0.4 n=59 3 0.3 3 ○ log 4 頻 0.2 度 個2 体 数 5 6 0.1 Zˆ 0.522 1 7 0 0 265 315 体長(mm) 2015/10/1 365 2 3 4 5 6 7 年齢 15 8 FとMの推定 E=F[1-exp(-Z)]/Z 漁獲率 E=C/N 全減少係数 Z=F+M 漁獲係数 F=qX E: 漁獲率、C: 漁獲尾数、F: 漁獲係数、 q: 漁具能率、X: 漁獲努力量 M: 自然死亡係数 M=0.37±0.088(/年) 2015/10/1 16 漁獲係数Fと漁獲率Eの関係 1 0.8 漁 0.6 獲 率 0.4 0.2 0 0 0.5 231反 2015/10/1 1 1.5 2 漁獲係数F(/year) 17 除去指数(100-%SPR) %SPR= 漁獲がある時の生涯産卵量 漁獲のない時の生涯産卵量 ×100 7 exp[(M F)(x 2)] W x 除去指数 100 x 2 7 (%) exp[M(x 2)] Wx 100 x 2 (産卵量は親魚の体重Wxに比例すると仮定) 2015/10/1 18 刺網 → 成魚を漁獲 産卵床破壊 → 産卵床保護雄、卵仔魚の除去 7 100 exp[( F M )(x 2)]W x2 7 exp[ M ( x 2)]W x2 x 100 x 刺網の効果と産卵床破壊の効果 2015/10/1 どちらの効果が大きいのか? 19 漁獲努力量と除去指数の関係 100 75 除 去 指 50 数 (%) 25 0 0 231反 2015/10/1 500 反数(反) 1000 20 個体群制御のための費用の算出方法 バス個体数の年変化を追う数理モデルを構築 刺網は毎年一定反数入れる →(刺網総反数) = (駆除年数)×(年間の反数) (制御のための総費用) = (刺網総反数)×(1反あたりの投入費用) 2015/10/1 21 再生産式 R : 再生産率(毎年一定) Rには不確実性(高い、低い)を考慮 q : 漁獲能率、X : 刺網反数 (漁獲努力量) 刺網1反投入の費用 : 2100円 (減価償却は100円) 個体群が低水準 : 10個体とする Nt+1=[exp(-M)Nt+RNt-1]exp(-qX) 2015/10/1 22 個体数10以下までの必要年数と 総費用の関係 6 t=∞ 総 費 4 用 千 万 2 円 ( t=584 ) t=13 0 0 2015/10/1 10 個体数10以下までの必要年数(年) 20 23 まとめ 本栖湖のオオクチバス密度は100m2に2尾前後 漁獲による駆除を考えなければ生存率は約70%/年 刺網反数を増やしても除去効果は頭打ち →他の駆除方法との併用が必要 再生産率が高い場合、駆除は早急にすべき 2015/10/1 24 バス類の他魚種への 摂食量評価 主な餌種、次善の餌種への影 響(餌選好性は可変的)、 競合魚種への影響が重要。 2015/10/1 25 個体群パラメター 体長(香川県満濃池) Lx=432.41*[1-e(-0.3582*(x+0.554))) ] 体長-体重関係(川下1999) Wx=0.0213Lx3.0574 生残率は漸減して1歳以降M=0.358 (安江修論)と仮定 産卵数=8.67 Wx(2歳以降)7歳で15000 2015/10/1 26 1尾あたり年摂餌量Fx (サケマス資源管理センター、プレ終了評価p9より) Fx= 0.00012 e0.471*15 Wx -0.0591*15+1.62 水温通年15℃と仮定。30g-500g だけの推定値を大型にも外挿 2015/10/1 27 当歳魚の摂餌は無視できな い? 1.E+07 1尾あたり摂食量g/日 体重g 1.E+06 個体数(生残率) 1.E+05 個体群摂食量g/日 1.E+04 1.E+03 1.E+02 1.E+01 1.E+00 0 2015/10/1 1 2 3 4 age 5 6 7 28
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