リージョナルガバナンス論B CFSPとJHA 第7週:6月3日 伊藤裕一 1 前回までの復習 単一市場形成から経済通貨同盟(EMU) へ 単一通貨導入の経緯 EUのテンプル構造 欧州委員会、理事会、議会、司法裁判所 各機関の機能と役割 各機関同士の関係 2 本日の内容 共通外交・安全保障政策 (Common Foreign and Security Policy) 司法・内務協力 (Justice and Home Affairs) どちらも国家の主権に深く関わる領域 &一定 の統合なしにはやっていけない領域 3 CFSP以前 マーストリヒト以前はEPC(European Political Cooperation) 登場する主要アクター NATO WEU アメリカ フランス(ドゴール大統領) ドイツ・イギリス 4 戦後欧州の安全保障 アメリカ主導→NATOへ フランス・EDC→WEUへ 大西洋重視か欧州重視か EPC ’69ハーグサミット ドイツの東方外交、国連加盟を支持 イギリスのEC加盟を支持 フランスのEPC、農業基金、EMUを支持 WEUのヨーロッパ化(仏)とNATO(米)との 緊張関係 5 明らかになった問題点 継続性=持ち回り議長制の問題 外交交渉を密にしたネットワーク 各国の立場を変えるメカニズムではない 全体の方向はアメリカ主導 EU内の中立国の存在 ハードパワーのアメリカ対人道支援の欧州 復興の負担が欧州にいくだけ? 現在でも継続する分業の問題 6 CFSPの成立(@マーストリヒト) 東欧革命→ドイツ統一 欧州委員会はPhare、Tacisによる支援、代表部の 設置 イラク・クウェート侵攻(’90・8月→湾岸戦争へ) 多国籍軍派遣=国連を通じたアメリカ主導 ユーゴ危機(’91→’92紛争へ) ドイツ単独でクロアチア、スロベニアの独立を承認 EU-国連の和平案は拒否される→Dayton合意とア メリカの空爆へ 各国の行動は常にばらばら 7 EUとして行動する困難さ 歴史的地理的な優先順位が国ごとに違う ルワンダ、ザイール、北アフリカ・・・フランス アルバニア、マケドニア、キプロス・・・イタリア、 ギリシャ 東欧、ウクライナ、ロシア、トルコ・・・ドイツ スペイン=モロッコ EU拡大と共に困難に 8 From Maastricht to Amsterdam 各国の対応 米・仏 ESDIとCJTF→仏・NATO復帰 英・仏 現実的協力を指向=WEUのEUへの統合 ベネルクス、スペイン、イタリアの賛成 北欧 WEUの’92 St.Petersburg Task(PKO)を強調 9 アムステルダム以降 外交の代表を置くことに フランスが従来から提案 初代はソラナ前NATO事務総長 決定の一部に特定多数決制(QMV)の導 入=実際は使われることは少ない(合意形 成を重視) コソボ紛争勃発 10 コソボの影響 アメリカは空爆を主張、英仏は地上軍投入を 主張 Cpabilities-Expectations-gap=アメリカ依存が浮 き彫り 難民の発生=統一的行動の必要性 ’98 英仏 St. Malo 宣言 基本認識:欧州独自の軍事行動能力が必要 NATOのヨーロッパ化(仏)、政府間協議によ る意思決定(英) ’02アフガン、’03イラクで分かったことは? 11 JHA 司法協力 法律上の各国の差 同じことをしてもA国では罪、B国では合法 これまでに無い法令 越境結婚→離婚→子供の養育権? 内務協力 犯人が国境を越えて逃げた場合 イギリスでのテロを予告したフランスに住むド イツ人テロリスト? 移民・難民 「4つの自由移動」が進むにつれて課題が明らかに 12 この分野の政策の始まり 対麻薬:ポンピドゥーグループ 対テロ:トレビグループ 内容:情報の交換、警察官の訓練・装備の共有 (特に対テロ部隊) 徐々に内容が充実、対象が拡大(’85にはフーリ ガン対策) 基本的にはアドホックな実務家レベルの集まり 13 JHAへ 1989年マドリッド欧州理事会にパルマ文書が提 出される =単一市場完成と並行して域内の安全が懸念 1999年European Drugs Intelligence Unit →Europolの前身 マーストリヒト条約でJHAとして三本柱のひとつに 既存のネットワークをまとめる 一般市民の不安や予想される脅威に対して反 応する→先取り方ではない 14 JHAの特徴 CFSPとの比較 関連政策領域が未確定 例えばVISA(査証)は1st pillar にも3rd pillar にもある 各国の差が大きい 英国法と大陸法、リベラルと保守的、宗教上 各国の制度(連邦制、共和制) 国籍付与の例 担当省庁 司法省、内務省、軍との関係 そもそも最も対外関係の少ない分野=外部か らの参加が少ない 15 シェンゲン協定 1985年 仏独ベネルクス(5カ国) 当初はEUとは別の枠組み シェンゲン域内での自由移動=国境管理をしな い 個別ケースではこれまでもあった イギリス・アイルランド 北欧 ベネルクス シェンゲン情報システム(例:渡航禁止者リスト) ダブリン協定(難民)と並んで意味の大きい協定16 JHAの3つの作業部会 警察・税関協力 最も協力が進展している。特に組織犯罪対策 司法協力 欧州司法地域(ヨーロッパ内である程度一定 の法制度を) 移民・難民問題 シェンゲンの枠組みで話される=英・アイルラ ンドが除外、アイスランド、ノルウェーが入って くる 17 アムステルダム条約 JHAの進展 シェンゲンをEUに統合、移民関連の問題 をECの枠内へ移行 =欧州委員会、司法裁判所が関与できる 欧州司法地域の概念 もとは70年代にフランス・スペインが提 案 18 JHAの問題点 法的根拠 透明性 EUレベルで合意を実施に移すメカニズム がない 19 法的根拠 各国の法的枠組み 国連やCouncil of Europe の人権憲章 EUの条約に基本的人権は載っていない ECとは別の枠組み=ECJの範囲外 →適法かどうかをいちいち交渉で決定するこ とに ベネルクス、ドイツ、オーストリア、ギリシャは 自ら進んでECJの裁定に従うことを宣言 20 透明性 各国の実務家レベルで具体的な内容が決 定されていく 細かい決定の連続 政策の性質上、秘密が多い →文書が作成され各国の言語になったとき (=EP、各国の議会で報告されるとき)に は、既に次の話しに進んでいる 21 メカニズムの問題 各国の主権に関わる分野には全会一致が必要 =全ての国に拒否権がある 大筋がつまっても詳細の合意ができない シェンゲン、ダブリン協定、Europolの例 合意を実行に移すメカニズムがない 130のJHA関連法のうち、法的拘束力を持つ のは15のみ 政府間協議の場のため、制裁処罰ができない 22 アムステルダム以降 アムステルダムでの変化 移民関連がECの枠組みへ シェンゲンがEUの枠組みへ 1999年タンペレ欧州理事会=JHAを集中的に討 議 目的:「アムステルダムの調印の意味を各国が理 解するため」 現在200ほどのプログラム=単一市場形成プロジェ クト並の規模→Convention でも進展 23 来週の講義 EUの将来の姿=Convention EUは連邦制になるべき?政府間協議で進 んでいくべき? それぞれの政策によって政策統合の状況 が違う=統一すべき?当然? 格差のある国、地域による統合は現実的 に可能なのか? 24
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