グローバル展開における大手メーカーの金型技術の課題と展望

特集 1 グローバル展開における大手メーカーの金型技術の課題と展望
日産自動車における
金型調達のグローバル化
日産自動車㈱ 田中
美徳*、岡本
和男**
当社では、2012 年からの中期 5 カ年計画である
産拠点での試作完了まで、金型原価、輸送費、関税、
「NISSAN POWER 88」
(以下、NP 88)を実行して
為替リスクなどすべての金型にかかったコスト)で最
いる(図 1)
。NP 88 計画は 6 本の実行柱をもち、そ
も安価なことである。企画・サイマルの段階で、いか
の一つに Business Expansion(事業の拡大)を掲げ
に歩留まりを考慮した部品数・型数設定の最適化と、
ている。これは、グローバル 740 万台生産と、50 を
金型製作における型費、輸送費や環境変化リスクなど
超える新車の投入を目標にしている。新車投入に伴う
を先手で考慮できるかが重要となる。リードタイム視
ボディ金型の供給については、地産地消を基本に金型
点では、新車によって異なる開発プロセスに対して、
準備を進めている。
オンスケジュールで調達できることを基本とし、品
金型準備・供給にあたっての重要関心事としては、
QCT の達成があげられる。品質視点では、ブランド
別(インフィニティ、日産、ダットサン)
、部品難易
質・コストと合わせて挑戦的な調達計画を提案・実施
する。
次の重要関心事としては、これら QCT 目標を達成
度別による、要求品質に応えるための技術開発を行い、 させるための、グローバル戦略・技術開発・技能伝承
実際の金型製作に反映させることである。コスト視点
があげられる。当社では、日本の役割と海外の役割を
では、TdC(Total derivered Cost;サイマルから生
明確化し推し進めている。これについては後述する。
*
Yoshinori Tanaka:車両生産技術本部 プレス技術部 エキ
スパートリーダー
**
Kazuo Okamoto:車両生産技術本部 プレス技術部 第一
圧型製作課 課長
〒223−8502 神奈川県座間市広野台 2−10−1
TEL(046)867−5127
また、グローバル拠点・地域ごとの所要と能力のバ
ランスも重要関心事となる。NP 88 の新車投入計画
の特徴の一つに、日本以外の拠点は金型所要が現地調
達能力を超えている。そのため、どの拠点
(Production
Site)に、どの拠点(Tooling Site)からの金型を供
Pillar 1
Brand power
給するかの最適プランの策定が重要になる。当社の場
Pillar 2
Sales power
合、アライアンスパートナーであるルノー社との協業
Pillar 3
Enhancing quality
Pillar 4
Zero-emission leadership
Pillar 5
Business expansion
Pillar 6
Cost leadership
で実行している。
図 1 NISSAN POWER 88 6 Pillars
022
これらの課題への取組みを、①日産の型づくり戦略、
②日本の役割、③海外の役割、④ルノーとの協業の順
に述べる。
日産の型づくり戦略
当社のグローバル金型調達戦略は、地産地消を基本