問題 なぜイギリスにはブーメランしなかったのか? フランスやイタリアは? 日本は? そして ドイツ・オーストリア・ロシアでは、 ブーメラン効果によって何が起こったか? ↓ 汎民族主義運動 <<植民地の経験>>がヨーロッパ本土に跳ね返る イギリス ロシア ドイツ フランス イタリア 少数民族 しかし、ヨーロッパは決して一枚岩ではない。 各国で<<跳ね返り効果>>の影響の仕方が違っていた。 イギリスの場合 ● 安定した2大政党制が<<効果>>をブロック (アーレントによる説明) ● 産業革命の発祥地(19世紀半ばに進展) ↓ ▲▼直線的時間の世界 近 代 社 会 の ふ た つ の 要 素 ● ダーウィンによる進化論の提唱(同じ時代) ↓ ● 優生学の誕生(19世紀末、ゴールトンが提唱) ↓ ▲▼「使える命」の選別 → 生権力 イギリスからアメリカ経由でナチス・ドイツへ フランスとイタリアの場合 フランス 農業国、太陽王ルイ14世の時代に急速に「上からの近代化」 急進的なフランス大革命=典型的な国民国家の成立 「革命の伝統」=断続的な変革、不安定性 ↓ ドレフュス事件の舞台に イタリア 日本と同じ時期に国内統一、国民国家による中央集権化実現 しかし、地域の経済格差や文化的相違が大きい 多党乱立状態がつづく ↓ ムッソリーニの台頭(強制的な一党支配 ヒトラーの仲間?) ドイツ・オーストリア・ロシアの場合 旧帝国的秩序が支配する地域 ● 多くの民族が棲み分け状態(「民族の牢獄」) ● 皇帝権力のもと、強力な官僚制が発達 国民国家(「法の支配」)が未発達 ↓ 植民地で実験された<<人種社会>>に親和的 ↓ 第1次世界大戦によって旧帝国が崩壊したときに どうなったか? 第一次世界大戦 総力戦、帝国主義戦争としての ↓ 多民族支配の 旧帝国がすべて解体する ↓ 難民、無国籍者の大量発生 運や条件の整った少数民族 国民国家の建設へ 旧帝国 アメリカ大領領ウィルソン提唱 「民族の牢獄」 民族自決原理 だが、多くの少数民族は国民国家を つくれないままに<<路上生活>>へ ↑苦難1 苦難2→ <<行き場のないゴミ>> 汎民族主義運動 「シオン賢者の書」 世界を裏側から操っている連中がいる! そいつらと戦うのが民族の使命・・・ 「民族の牢獄」のなかで誇れる歴史をもてず、 近代的国民国家という輝ける未来も展望できない。 (過去も未来もない) 頼りになるのは「血の共同体」という神話だけ・・・ その神話がたとえウソだとしても、 悲惨な現在よりマシだという可能性さえあればいい。 (ウソと知っていながら信じてみる) ニヒリズムと感覚まひのなかで、 差別的な世界観にも抵抗がなくなっている・・・ ウソの神話が語るみずからの民族の奇跡的な勝利へとむけて、 敵との闘争の歴史(無限の過程)に参加せよ・・・ ウ ソ が 力 を も つ と き 神話のオリジナルとしてのユダヤ教 おそるべき苦難のなかで練り上げられた古代ユダヤ教は、 すべての歴史的過程を司る(と信じられる)神に従うことを命じる。 この点で、汎民族主義運動の神話とユダヤ教はよく似ており、 むしろ、ユダヤ教はオリジナルというべきである。 ↓ ユダヤ教から倫理性を差し引いて、 デタラメだけ並べたニセモノが汎民族主義運動の神話 オリジナルを殺せばニセモノだってホンモノになれる 「ユダヤ人なきユダヤ人憎悪」 (第3段階の反ユダヤ主義) 汎ゲルマン主義 → ナチズム 汎スラブ主義 → スターリニズム 国民国家の2つの要素とその破綻 汎民族主義運動 人種主義の暴走へ ● 旧帝国時代には、亡命者や行き場のないひとが異国 へ行けば、守ってもらえるという「庇護権」のしきたりが あった。旧帝国の解体とともにそうした伝統は消滅した。 ● そして近代的な人権は「国民」にしか保障されなかっ た。無国籍者たちは<<無法>>の荒野に投げ出されるし かなく、人権思想の限界が露呈した。 難民収容所 ● 行き場のない難民に、とりあえずの居場所を与える (最良ではないが、なくてはならないもの・・・) ● 「難民キャンプでは四角い空しかみえない」 (劣悪な環境。出るなと言われ、閉じ込められた状態に) ● 大量の<<無用な>>人間たちに対して収容所が利用される ↓ 収容所という装置は人間たちを管理するのに有効なのではないか? 難民収容所 → 労働収容所 → 絶滅収容所 (「全体主義の世紀」=「収容所の世紀」) これはナチスドイツだけでなく、 ソ連のシベリア抑留、アメリカの日系移民収容所、日本のハンセン病隔離施設・・・ いたるところで確認されること。 まとめ モッブの諸相 ① 故郷喪失者としてのユダヤ民族 ② 社会構造、産業構造の転換のなかで、 「あらゆる階級」から零れ落ちたモッブ ↓ (経済競争の敗者、戦争の敗者、はみだし者、 退廃的な文化む貴族、・・・そして植民地の支配者たち) ③ 旧帝国の解体にともなって出現した難民、無国籍者 ↓ 汎民族主義運動の担い手 / 難民収容所に収容された人々 歴史の見方 まとめ 全体主義の諸要素、出揃う ● モッブの大量発生 ● <<無法状態>>のリハーサル ● 「官僚制+人種主義=人種社会」の実験 ● ブーメラン効果 ● 第3段階の反ユダヤ主義=汎民族主義運動の神話 ● 国民国家の限界が露呈 ● 収容所という装置の有効性(?)が証明 ((日本の軍国主義 ・・・・・ 少し条件が違っている))
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