留学生リポート

留学生リポート
ドイツ・マンハイム大学
稲田啓輔(法学部)
私は 3 年の 8 月末から 10 ヶ月間、ドイツのマンハイム大学に交換留学しました。マンハイ
ム大学は経済学、政治学等、社会科学において高い評価を受けている大学であり、特にビジ
ネスに関しては国内はもとより欧州においても名声を得ています。ビジネスを専攻している
学生には極めて優秀な人が多く、彼らの知的レベルや勉強に対する姿勢を見て、刺激を受け
ることも多々ありました。
まず勉強に関して述べたいと思います。一学期目には欧州の人権法制や国際刑法など、国
際法分野に関する科目を主に履修しました。授業は、大人数、少人数関わらず、活発なディ
スカッションを通して展開されるため、慣れない授業形式で当初はついていけず、歯痒さを
感じることもありました。特に一学期目には、修士課程の授業をいくつか履修していたため、
言語だけではなく、知識の面でも苦労することが多かったです。そのため、学期の終わりに
Master の学生の前でプレゼンテーションを終えた時は、大きな達成感を感じたことを覚えて
います。二学期目には、レジーム論や EU の制度構造・政策など政治分野に関する科目を中
心に履修しました。EU をテーマに扱う授業やウクライナ問題の緊張が高まる中で、ヨーロ
ッパの人々と直接議論できたことは興味深かったです。ドイツ人が EU をリードする責任を
自覚していることに対して、他のヨーロッパの人々もドイツにそうした役割を求めているよ
うでした。しかし一方で、欧州統合の経済的敗者とも言われる南欧の人々の不満や、ドイツ
の台頭に大戦時のイメージを重ね、一抹の不安を抱える意見も耳にしました。こうした経験
は、当事者のリアルな心情を踏まえた上で、国際情勢を理解することにつながったと思いま
す。歴史的文脈では、日本同様、第二次世界大戦の敗北と周辺国への責任を背負ったドイツ
が、欧州で実際にどのような立ち位置を獲得しているのかを、肌で強く感じられたことは有
意義でした。今後、東アジアにおける日本の国際関係を見直すための、一つの視座になり得
るのではないかと考えています。
次に生活に関して書きたいと思います。ドイツ人は若い世代を中心に英語が上手です。大
学の授業、他の留学生との会話では英語を使っていたため、英語さえできれば生活できる環
境が整っていました。それでも、ドイツ人のコミュニティに入って彼らの社会をより深く理
解したいと思い、ドイツ語の学習は留学中継続して行っていました。冬休みには集中的な語
学コースに通い、学期中には積極的にドイツ人とドイツ語を使ってコミュニケーションをと
ることを心掛けることで、二学期目の始め頃には、日常会話レベルのドイツ語を扱うことが
できるようになっていました。留学前には英語でさえ不安があった自分が、ドイツ語まで話
せるようになれたことは、留学中最も驚いたことの一つです。大学や学生団体主催のパーテ
ィーが週に何度も開催されていたため、友達を作ることや親睦を深めることに関しては苦労
することはありませんでした。また、あまり知られていないことかもしれませんが、ドイツ
では食材をとても安く買うことができます。経済的に余裕がない学生にとっては、生活費を
抑えることができるため、理想的な留学先となるかもしれません。
ドイツ留学は質の高い教育や学費の安さ、英語課程の充実ぶりだけではなく、留学生のバ
ランスの良さもメリットに挙げられると思います。しばしば問題となるアジア圏学生の偏り
はなく、アメリカ系、ヨーロッパ系、アジア系の留学生がバランスよく在籍しています。ド
イツに留学した者として主観的な一意見に過ぎませんが、今後ドイツが有するメリットに目
を向け、英語圏留学だけではなく、ドイツ留学を志す日本人学生が増えることを願います。
最後になりましたが、食事会に招待して下さった如水会デュッセルドルフ支部の OBOG の
皆様、こうした貴重な経験をするために支援して下さった社団法人如水会、明治産業株式会
社、明産株式会社、並びに一橋大学国際課の皆様に厚く御礼申し上げます。
マンハイム大学のキャンパス。バロック宮殿で大変美しいです。
冬休みの集中語学コースに参加した留学生達。
マンハイムの街のシンボル Wassertrum。