防災教育ゲーム

防災教育ゲーム「クロスロード」
静岡県版の開発
総合科学専攻
3061-6023
日比 陽子
研究目的
現在の日本では自然災害が多
発しているにもかかわらず、防災
教育があまり普及していない。
そのため、様々な防災教育ゲー
ムが開発されている。中でも、
「クロスロード」(矢守ほか、2005、
ナカニシヤ出版)は、災害時
のさまざまな意思決定場面にとも
なうジレンマを実体験すること
によって防災意識を高める優れ
たゲームとして有名である。
クロスロード 神戸編問題
現行のクロスロードは、阪神・淡路大震災の経
験、発災直後の応急対応に関する問題がほと
んどを占めている。このため、東海大震災や、
静岡県に深刻な被害を与えてきた風水害・火
山災害などの地震以外の自然災害に関する内
容、発災前の段階における備えや発災直前の
情報伝達に関する内容が含まれていない。
そこで
静岡県の自然災害に特化し、発災直後の問
題に限定しない「クロスロード」を開発し、静岡
県民の防災意識の向上に資することを目的と
する。
研究方法
①静岡の過去の自然災害履歴を調査し、災害の
優先順位を決定し、問題を試作する。
②試作したクロスロードを学生や市民に対して試
験実施する。
③実施後にゲームが防災意識に与えた効果を測
定し、課題を明らかにするためのアンケート調査
実施する。
④結果を分析。問題を改良。ゲームの完成度を高
めていく。
研究結果・今後の取り組み
静岡大学版のクロスロードの開発・検証をおこっ
た小柳(2007、総合科学専攻ミニ卒論)は、東海
地震に関して地域や大学が直面している問題を
作成し、実施とアンケート調査による検証をおこ
なった。
あなたは…静岡県知事…です.
戒宣言発令.ところが地震が発生しない
まま,3日後に注意情報のレベルに戻っ
た.新幹線と高速道路が再開されたが,
沿線住民から「恐ろしいので止めてほし
い」との要望が殺到.JRや高速道路会
社と交渉するか? (問題例)
アンケート結果(「現代防災科学」受講生44名)
問1.ゲームは楽しかったですか?
問4.一つの問題に多様な考えがある
と感じましたか?
楽しくなかった
7% 2%
どちらかといえば
楽しくなかった
無回答
感じなかった
楽しかった
34%
57%
どちらかといえば
楽しかった
問2.ゲームは有意義だった
と思いますか?
有意義ではなかった
どちらかといえば有
意義ではなかった
11% 2%
どちらかといえば
有意義だった
36%
問3.防災への理解は深まりましたか?
どちらかといえ
ば感じなかった
どちらかといえば
深まらなかった
どちらかといえば
感じた
47%
61%
有意義だった
51%
問5.「正解」をYESかNOのどちらかに
確定する必要があると思いますか?
無回答
必要がある
5%
11%
0%
必要はない
39%
どちらかといえば
深まった
感じた
30%
深まらなかった
14%
2%
0%
7%
27%
18%
どちらかといえば
必要がある
深まった
どちらかといえば
必要はない
39%
問6.他の参加者の「決定」および、その理由・根拠に関して、
あなたが最も強く「なるほど」と感じた問題はどれか?
• 6番の問題を選んだ人が1番多い。
• 「交通の要所なので経済的損失が大きい」「知事の役目を果た
すため条件付きで交渉する」など色々な状況を考えながら議論
していた。条件に幅があるため、相手の意見の思わぬ発想に納
得することも多かったと思われる。
「現代科学実験」受講生30名
「現代防災科学」受講生44名
8
6
6
人
数4
19
20
15
4
3
3
10
3
7
6
2
2
1
1
5
1
0
2
2
1
2
3
4
5
1
0
1
4
6
7
8
9
問題番号
10
11
13
1
5
6
7
無し
アンケート結果では、全般的に好評だったこ
とが確認できたが、一方自分の身近な事柄で
ないと興味が持てない。もう少し幅広く学べる
内容にした方が良い。と考える人も多く存在し
た。
また、東海地震に特化したために他の災害
に対応できていないことや、試行と検証が人
数的に不十分であることが指摘できた。
災害は主に以下9つに分類できることが分かった。
(静岡県市町村災害史より)
災害
程度
1.地震 ほぼ震度6-7相当。
2.津波 2mを越えた地域
3.高潮 記録されたもの
4.火山 記録されたもの
5.台風 死者発生など被害大
7.竜巻 全潰家屋12戸以上
8.旱魃 一連旱魃年はいる
9.冷害 顕著なもの
静岡県内の災害(1600~1980)
冷害
5%
旱魃
10%
地震
8%
津波
10%
竜巻
4%
高潮
7%
火山
1%
台風
55%
図より、地震以外の自然災害頻度も多い事が分かる
「クロスロード」
「あたは…要援護者の親をもつ一般市民です」
台風の接近による豪雨のため静岡市内に避
難勧告が発令された。しかし、親は高齢のう
え足が不自由なため、避難させる方がむしろ
心配。2階にいれば大丈夫と思われる(状況
設定)。それでも避難させる?(問題設定)」
YES
(待機してもらう)
NO
(避難するのを手伝う)
この問題の背景としては、高齢化が進んで
いる日本では高齢者の避難に関する問題が
不可避であるということ、また静岡は、台風被
害が多い点があげられる。
他の問題としては、近年頻発している局地
的集中豪雨に関する問題のほか、富士山の
噴火、東海地震による津波、を想定した問題
を作成中である。
「クロスロード」
「あたは…ペットを家族にもつ親です。」
東海地震で、自宅はほぼ崩壊。家族全員で
避難所へ。日頃の防災対策のおかげで非常
持ち出し袋には家族分、さらにペットの食料
までも確保できている。しかし、周りには食料
が確保できていない家族が多数。その前で、
非常持ち出し袋を空ける?」
YES
(空ける)
NO
(空けない)
この問題は、防災対策に関して興味を持ち、
家庭に帰ってから家族で防災に関して話し合
い対策するきっかけとなることを目的に製作
した。
さらに、ゲームを通して災害情報の収集方
法や、避難の心得等に関して興味を持ち、実
際に知識が得られる内容を取り入れ、対策す
るきっかけとなるように問題を吟味する予定
である。また、十分な人数に対するゲーム実
施プランと、それを検証するための質問紙も
考案中である。