開発経済学 ~貧困削減へのアプローチ~ 黒崎卓・山形辰史 著 第1章 膨張する開発経済学 文責 三木 健吾 1.開発経済学とは何か? • 人々の生活水準を上げるために、さまざまな 開発ニーズ(雇用、教育、環境、食糧、等等)に 応じて発展途上国で行われる開発について研 究する経済学の総称である。 (p.2) 2.開発経済学の定番 1940~60年代 • 余剰労働力を活用し、政府主導で主要産業 に最小臨界努力水準を超える投資を物的資 本および人的資本に対して行うことで貧困の 罠から脱却することが試みられた (p.5) • 当時は政府が中心の開発 • 輸入代替工業化へ 人的資本 Theodore W. Schultz • 人間に蓄積される知識や技術。人的資本に 投資することによって人々の知識や熟練が向 上し、その結果労働の生産性が向上し、経済 成長に大きく貢献するというのが人的資本論。 余剰労働 W. Arthur Lewis • 労働が無制限に供給されると考えると、労働 の限界性産物がゼロとなった過剰労働力が 存在する。労働力は生存賃金で無制限に雇 用される、資本家の余剰が再投資される間は 経済が成長する、という理論。 貧困の罠 Gunnar Myrdal • 物質的貧困(poverty)、身体的弱さ(physical weakness)、孤立化(isolation)、不測の事態に対して 脆弱なこと(vulnerability)、政治力や交渉力がな いこと(powerlessness)。この5つの状態が絡みあ い、貧困から抜け出せない状況のこと。 最小臨界努力 Harvey Leibenstein • 後進経済の状態から持続可能な成長を期待 しうる転換を達成するため、ある時点または 期間に必要最小の所得水準が存在する、と いうのが臨界最小努力の定理(the critical minimum effort thesis)。 余剰はけ口 Hla Mint • 国内市場にとって供給過剰となった場合の はけ口。余剰を国外へ輸出することで、市場 を拡大する、という理論。 3.輸出指向工業化と国際経済学 • 輸出指向工業化政策への転換 • 国際貿易論 • 非産油途上国における債務危機 • 国際金融論 1970年代 国際貿易論 • 有効保護率 (effective protection rate) その国が関税によってどれだけ自国の特定産業を保護しているかを 計測するために用いられる指標。 • 国内資源費用 (domestic resource costs) 貿易政策を通じてどの程度外貨を節約(浪費)することができるのか という国内資源の費用を示す指標。 4.構造調整の時代 • 構造調整貸付 1980年代 (Structural Adjustment Lending ) • マクロ政策・ミクロ政策 • 付加価値税 (Value Added Tax : VAT) 構造調整貸付 (Structural Adjustment Lending ) • 債務支払いを助けるための援助・借款。 • 貸し手が借り手の途上国の経済政策に関し て条件をつける(コンディショナリティー) • 低所得国にとっては、多額の資金を有利な条 件で借りることができる。 マクロ政策・ミクロ政策 • マクロ政策 財政均衡、金利自由化・引き上げ、為替切り下げ • ミクロ政策 公企業の廃止・合理化、流通や価格規制の自由化、 民営化や投資規制の緩和 付加価値税 (Value Added Tax : VAT) • 「全収入額から資本設備、土地、建物等他 の企業からの購入金額を差し引いたもの」 である。この差引額は、「原料等、他の事 業からの購入したものの価値にその企業 が付加したもの」である。それを税収化した もの。 5.膨張する開発経済学 • ゲーム理論 一般に利害の必ずしも一致しない状況における合理的意思決定や 合理的配分方法とは何かということについて考えるための数学理論。 • 内生経済成長理論 (endogenous growth theory) 1940~50年代の開発経済学者たちのアイデアをモデル化したもの。 資本だけでなく、人的資本、技術も必要だが、市場メカニズムにおい て、人の教育、技術は完全に補うことができないため、政府の介入を 必要とする、という理論。 最後に • 年代 経済状況 特徴 • 1940 開発経済学の定番 • 1950 輸入代替工業化 政府主導 • 1960 輸出指向工業化 民間主導 • 1970 輸出指向工業化 国際貿易論・国際金融論 • 1980 構造調整(貿易赤字) マクロ・ミクロ政策、世界銀行 • ~ ゲーム理論・内生経済成長理論 補足 このパワーポイントのファイルは http://web.sfc.keio.ac.jp/~s02834km/archive/ にアップされています。自由に活用してください。 他の方も関連資料等、Web上にアップしてくれると助かります。
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