産業組織論 第9章 ベルトラン・モデル 価格による競争 数値例 ベルトラン・モデルの数値例 ベルトラン=ナッシュ均衡 均衡を定義する 1 第9章 ベルトラン・モデル ベルトランは1883年に、クールノー の著作(『富の理論の数学的原理 に関する研究』)とワルラスの著作 (『社会的富の数学的理論』)に対し て、一つの書評を展開した。 2 ベルトランの論文 3 ワルラスとクールノーの著作 4 ベルトランの論文の英訳 James W. Friedman による英訳が、 Daughety, A.(ed.)[1988], Cournot Oligopoly: Charecterization and Applications, Cambridge University Press, pp.73-81 にある。 5 別の英訳 別の英訳はMargaret Chevaillier による。 ‘Appendix: Review by Joseph Bertrand of Two Books’ by Walras and Cournot respectively, in Jean Magnan de Bornier[1992], ‘ ”The Cournot-Bertrand Debate”: A Historical Perspective,’ History of Political Economy, Vol. 24(3), Fall, pp.646-653. 6 収録されている論文集 上の論文は次の論文集に再録されて いる。 Mary Ann Dimand and Robert W. Dimand (eds)[1997], The Foundation of Game Theory, Vol.I, An Elgar Reference Collection, Chelternham, UK・Lyme, US, pp.35-42. 7 競争は数量か、あるいは、価格か クールノーに対するベルトランの批判 のいくつかは、誤解によるものである。 ベルトランが主張した、競争は生産量 ではなく、価格が大事であるということ は、後に続く多くの経済学者を納得さ せた。 8 第9章の先頭へ戻る 産業組織論 第9章 ベルトラン・モデルの数値例 9 生産能力の制限はない 後に検討する、エッジワース・モデ ルと異なり、生産能力の制約はな いものと仮定する。 市場需要を一つの企業だけでまか なうことができる。 10 価格を戦略変数とする 2つの企業は価格を戦略変数とす るゲームを行う。 相手企業の価格を予想しながら自 分の企業の価格を相手と同時に発 表する。 11 需要関数と消費者の選択基準 需要関数を Q=500-p (9.2) とする。 生産物は同質であるので、消費者は価 格で判断する。 12 消費者の需要 低い価格をつけた企業から必要な量を 購入する。 もし、2つの企業が同じ価格をつけた場 合は、消費者からの需要を折半する。 13 企業1は120円、企業2は125円 表9.1を見てみよう。 消費者は安い価格をつけた企業1から購 入する。 企業1の売り上げは需要関数(9.2)より 380単位売れ、利潤は9,500となる。 企業2の売り上げはゼロで、利潤もゼロで ある。 14 企業1が企業2より安い価格を つける場合 企業2が利潤を増やすには、価格を下げて 消費者をひきつける必要がある。 15 企業1は120円、企業2は115円 次に、表9.2を見てみよう。 消費者は安い価格をつけた企業2から 購入する。 企業2の売り上げは需要関数(9.2)より 385単位売れ、利潤は7,700となる。 16 企業2が企業1より安い価格を つける場合 企業1の売り上げは今度はゼロで、利 潤もゼロである。 今度は企業1が価格を引き下げる誘因 を持つ。 17 企業1が企業2より安い価格を つける場合 表9.3については読者に任せる。 18 企業2が原価をつける 表9.4の場合、安い価格とつけて需要 を独占した企業2の利潤が、原価をつけ たためにゼロになっている。 相手企業よりも少しでも高い価格をつけ ていると企業1に消費者は来なくなり、需 要がゼロで利潤はゼロである。 19 利潤はともにゼロ 20 企業1も企業2も原価をつける 表9.5は2つの企業がともに原価をつけ た場合である。 仮定により需要を折半した2つの企業の 利潤は、原価をつけたのでゼロである。 この状態から2つの企業とも単独で価格 を変化させても、利潤を増加させることは できない。これは均衡と呼べる状態であ る。 21 原価をつけて利潤はともにゼロ 22 企業1の原価割れ戦略 表9.6は企業1が顧客欲しさに、原価 割れで競争に挑んだ場合である。 企業1の利潤は負で、企業2の利潤は ゼロである。 企業1は価格を上げることで、利潤を増 やすことが可能な状態なので、均衡で はない。 23 企業1は負の利潤となる 24 第9章の先頭へ戻る 産業組織論 第9章 均衡のグラフへ 企業1と企業2の反応曲線 ベルトラン=ナッシュ均衡を定義する 25 企業2の最適反応を求める 企業1がつける価格をp1、企業2がつけ る価格をp2とする。企業2の広い意味で の反応関数(反応対応)を求める。 すなわち、企業1の価格が与えられたとき、 企業2の利潤を最大にする企業2の価格 の集合を求める。 26 独占価格と完全競争均衡価格 独占価格をpM、完全競争均衡の価格を p*=mとする。 ここで、mは一定の限界費用を表す。 27 企業1が独占価格より高い価格 をつけるとき 企業1がpMより高い価格をつけるとき(p1 >pM)、企業2はpMをつければよい。 なぜならば、企業1の価格より低い価格を 企業2がつければ、需要を独占できる。 さらに、企業2は独占価格pMを選ぶと、定 義により、利潤を最大にできる。 28 企業1が完全競争均衡価格より大で, 独占価格以下の価格をつけるとき 29 企業2の最適な価格設定 30 企業1が完全競争均衡価格を つけるとき 企業1が完全競争均衡の価格p*をつけ るとき、企業2は、p*以上の価格をつけ ればよい。 なぜならば、完全競争均衡の価格p*は 限界費用mに等しいので、企業1よりも低 い価格を企業2がつければ、企業2の利 潤は負になる。企業2は、p*以上の価格 をつければ利潤をゼロに抑えることができ る。 31 企業1が完全競争均衡価格より 低い価格をつけるとき 企業1が完全競争均衡の価格より低い価 格をつけるとき(p1<p*)、企業2はp1よ り高い価格をつければよい。 なぜならば、企業1の価格以下の価格を つければ利潤は負であるが、企業1の価 格より高い価格をつければ需要がゼロと なるので、利潤をゼロに抑えることができ る。 32 企業2の最適反応(式で表現) 33 企業1の最適反応 同様に、企業1の広い意味での反応関数 (反応対応)を求めることができる。 34 企業1の最適反応(式で表現) 35 均衡の定義 均衡を定義する 企業1と企業2の反応曲線 36 ベルトラン=ナッシュ均衡 37 2つの企業の反応対応の交点 はベルトラン=ナッシュ均衡 図9.1に、2つの企業の広い意味での反 応曲線、あるいは反応対応のグラフが描 かれている。 2つの企業反応対応の交点(p*、p*) がベルトラン=ナッシュ均衡となる。 ここで、p*は完全競争均衡のときに成立 する価格で限界費用に等しい。 38 数値例の場合のベルトラン均衡 ベルトラン=ナッシュ均衡は、ただ一つあり、 p*=95 である。 39 参考文献 40 第9章の先頭へ戻る 産業組織論 第9章 第10章へ io_(ch10).ppt 参考文献 Shy, Oz (1996), Industrial Organization: Theory and Applications, The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, London, England. 最新版は第6刷。 41
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