産業組織論 入門 (9) 独占企業 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2014年1月9日 色々な市場 完全競争市場: 産出量を増やしても市場全体への影響は軽微 限界収入=価格,MR=p 独占: 産出量が2倍ならば産業全体の産出量も2倍 価格は下落 R=pQ 産出量増は価格は下落 Q(↑) →p(↓) 産出量が増加したときにどのくらい価格が 下落するかは市場構造(需要曲線)による 2014/1/9 産業組織論 9 2 需要曲線=支払い意欲曲線 最後の一個の支払い意欲と費用(価格)が同じときは それを購入すると考えていく 支払い意欲を大きいほうから並べて価格と支払い意 欲が一致している支払い意欲の個数が需要量 価格=支払い意欲⇒購入量 これは需要曲線と同じ 価格に対して購入しようとする数量 支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたときに支 払っても良い金額 2014/1/9 産業組織論 9 3 需要曲線から限界収入を求める 支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたときに支 払っても良い金額であり需要曲線と同等の役割 限界収入を需要曲線から求めることができる 需要曲線と同様に曲線として数量ー価格平面に図 示する 限界収入曲線とは生産量を増加させたときの収入 の増額を曲線に表したもの 2014/1/9 産業組織論 9 4 需要曲線と限界収入曲線 縦軸との切片は需要曲線と限界 収入曲線で共通.しかし,生産量 が増えると需要曲線の高さよりも 限界収入曲線の高さは低くなる. 価格下落によって既存の消費者 からの売上げが落ちる 価格 A 需要曲線 E 価格 P 限界収入MR 限界収入曲線 数量 Q 2014/1/9 産業組織論 9 5 例 買い手 2014/1/9 支払意欲(円) イチロー 10000 ダルビッシュ 9000 石川遼 8000 マー君 7000 香川真司 6000 産業組織論 9 6 需要量と価格として捉える 需要量 2014/1/9 価格 1 10000 2 9000 3 8000 4 7000 5 6000 産業組織論 9 7 企業の収入を求める 生産量が1の時の収入は10000円 生産量が2の時の収入は 2×9000=18000 円 生産量が3の時の収入は 円 生産量が4の時の収入は 円 生産量が5の時の収入は 円 2014/1/9 産業組織論 9 8 限界収入を求める 生産量が1の時の限界収入は 10000-0=10000 円 生産量が2の時の限界収入は 18000-10000=8000 円 生産量が3の時の限界収入は 円 生産量が4の時の限界収入は 円 生産量が5の時の限界収入は 円 2014/1/9 産業組織論 9 9 支払い意欲から導いた需要曲線 イチローの支払い意欲 ダルビッシュの支払い意欲 石川遼の支払い意欲 マー君の支払い意欲 香川真司の支払い意欲 価格(円) 10000 9000 8000 7000 6000 ・需要曲線を描く ・限界収入を描く 枚数 1 2014/1/9 2 3 4 5 産業組織論 9 10 独占企業の行動と社会的な評価 独占企業はプライスメーカー 価格ではなく数量を選ぶ 価格は需要曲線で決まる 需要曲線から限界収入曲線を導く 独占企業によって最適な生産量を求める 限界収入=限界費用 となる水準を実際に求める その時の経済的な損失を測る 2014/1/9 産業組織論 9 11 ファスナーを独占的に生産しているYKKの例 ファスナー価格(円) 100 95 90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 2014/1/9 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 0 0 定義されない 1 95 95 2 180 85 3 255 75 4 320 65 5 375 55 6 420 45 7 455 35 8 480 25 9 495 15 10 500 5 11 495 -5 12 480 -15 産業組織論 9 12 独占企業の需要曲線と限界収入曲線 円 120 100 80 60 ファスナー価格(円) 40 限界収入(円) 20 0 -20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -40 2014/1/9 産業組織論 9 13 独占価格 限界費用は一定の45円とする 固定費用は0円 MC=45 MR=45の産出量は Q=6 公式による利潤の最大化は Q=6 で達成 2014/1/9 産業組織論 9 14 独占企業限界収入曲線と限界費用曲線 円 120 100 80 60 限界収入(円) 限界費用(円) 40 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -20 -40 2014/1/9 産業組織論 9 15 独占と市場価格 6単位の生産では 市場価格は70円になる 円 M PM C 限界費用曲線 P* 需要曲線 限界収入曲線 数量 QM 2014/1/9 Q* 産業組織論 9 16 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 限界費用(円) 費用(円) 利潤 0 0 定義されない 定義されない 0 0 1 95 95 45 45 50 2 180 85 45 90 90 3 255 75 45 135 120 4 320 65 45 180 140 5 375 55 45 225 150 6 420 45 45 270 150 7 455 35 45 315 140 8 480 25 45 360 120 9 495 15 45 405 90 10 500 5 45 450 50 11 495 -5 45 495 0 12 480 -15 45 540 -60 2014/1/9 産業組織論 9 17 独占の弊害,死荷重 独占価格によって価格は引き上げられる 限界費用と価格が等しい時の産出量は11個 独占は6個しか生産しない 経済厚生は価格=限界費用の水準と比べ低 下する 低下した厚生の損失を死荷重という 2014/1/9 産業組織論 9 18 独占と経済厚生 円 消費者余剰 M PM P* 生産者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2014/1/9 Q* 産業組織論 9 19 独占だが限界費用で価格付けした場合 円 M PM P* 生産者余剰はゼロ 消費者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2014/1/9 Q* 産業組織論 9 20 死荷重 円 独占は競争よりも経済厚生が 低くなる.その損失を死荷重と呼ぶ 独占の経済厚生 M PM 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P* 需要曲線 数量 QM 2014/1/9 Q* 産業組織論 9 21 ファスナーの例の死荷重を求めよう 三角形の面積=縦×横÷2 =(70-45)×(11-6)÷2 =25×5÷2=62.5 死荷重 円 独占の経済厚生 100 M PM=70 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P*=45 需要曲線 数量 Q M=6 2014/1/9 Q *=11 産業組織論 9 22 競争政策 価格が高すぎると非効率性が高まる 市場支配力の濫用 1. 2. 3. 大規模製造業者が下請け企業いじめ 大型小売店が納入企業に特別なサービスを要求 政府は積極的に競争の促進を実施している 独占禁止法(日本),反トラスト法(米国) 価格カルテル・談合の阻止 大きな合併の制限 優越的地位の濫用の防止 2014/1/9 産業組織論 9 23 自然独占 上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる. 独占に任せておいた方が良い これを自然独占という 政府の規制の必要性,自治体が運営 以前は電力,電話,CATVも自然独占だった. 今は違う! 2014/1/9 産業組織論 9 24
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