産業組織論 入門 (9) 独占企業 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2013年12月19日 今日学ぶこと 1. 2. 3. 4. 5. 宿題の解答 独占 死荷重 競争政策 自然独占 2013/12/19 産業組織論 8 2 色々な市場 完全競争市場: 産出量を増やしても市場全体への影響は軽微 限界収入=価格,MR=p 独占: 産出量が2倍ならば産業全体の産出量も2倍 価格は下落 R=pQ 産出量増は価格は下落 Q(↑) →p(↓) 産出量が増加したときにどのくらい価格が 下落するかは市場構造(需要曲線)による 2013/12/19 産業組織論 8 3 支払意欲から限界収入を計算 独占企業は価格を自由に設定できる しかし,買うかどうか消費者の意志による 消費者余剰を計算したアイスショーの例で限界収 入を計算しよう イチローの支払い意欲は10000円だった イチロー以外にも石川遼,ダルビッシュ,北島康 介,亀梨がアイスショーを見ようと考えている ダルビッシュの支払意欲は8000円,石川遼は5000 円,北島は4000円,亀梨3000円. 価格7000円ならばイチロー、ダルビッシュ購入 2013/12/19 産業組織論 8 4 買い手 2013/12/19 支払意欲(円) イチロー 10000 ダルビッシュ 8000 石川遼 5000 北島康介 4000 亀梨和也 3000 産業組織論 8 5 支払い意欲のグラフ 支払い意欲(円) イチローの支払い意欲 ダルビッシュの支払い意欲 10000 石川遼の支払い意欲 北島康介の支払い意欲 8000 5000 亀梨和也の支払い意欲 4000 3000 枚数 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 6 アイスショーのチケットは何枚売れる 価格が低ければ沢山売れる 価格<支払い意欲 → 購入 価格>支払い意欲 → 購入しない 実際に売れる枚数 → 価格=支払い意欲 2013/12/19 産業組織論 8 7 生産量1枚のときの限界収入 支払い意欲(円) 価格は10000円 10000 1枚まで売れる 販売量を0枚から1枚に 増やしたときに収入は 10000円増える 8000 5000 4000 3000 限界収入は10000円 枚数 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 8 生産量2枚のときの限界収入 支払い意欲(円) 10000 価格は8000円 イチローからの売上げ は8000円に落ちる.しか し,ダルビッシュからの 売上げ8000円が発生 8000 販売量を1枚から2枚に 増やしたときに収入は 6000円増える 5000 4000 3000 2枚まで売れる 限界収入は6000円 枚数 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 9 生産量2枚のときの限界収入 支払い意欲(円) 10000 8000 5000 4000 3000 生産量を増やしたときに 限界収入に2つの効果 限界収入は6000円 ・価格下落によって既存 の消費者からの売上げ が落ちる(オレンジ) ・新規の顧客の収入が 入る(紫) 限界収入 =新規顧客効果 ー既存顧客効果 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 枚数 10 HW:他の生産量での限界収入を求めよ 生産量が0から1の時の限界収入は10000円 生産量が1から2の時の限界収入は6000円 生産量が2から3の時の限界収入は-1000円 生産量が3から4の時の限界収入は1000円 生産量が4から5の時の限界収入は-1000円 2013/12/19 産業組織論 8 11 需要曲線=支払い意欲曲線 最後の一個の支払い意欲と費用(価格)が同じときは それを購入すると考えていく 支払い意欲を大きいほうから並べて価格と支払い意 欲が一致している支払い意欲の個数が需要量 価格=支払い意欲⇒購入量 これは需要曲線と同じ 価格に対して購入しようとする数量 支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたときに支 払っても良い金額 2013/12/19 産業組織論 8 12 支払い意欲曲線と需要曲線 価格(円) 各棒グラフは個人の支払い意欲 10000 8000 需要曲線 5000 4000 3000 枚数 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 13 需要曲線から限界収入を求める 支払い意欲曲線は各数量から1単位増えたときに支 払っても良い金額であり需要曲線と同等の役割 限界収入を需要曲線から求めることができる 需要曲線と同様に曲線として数量ー価格平面に図 示する 限界収入曲線とは生産量を増加させたときの収入 の増額を曲線に表したもの 2013/12/19 産業組織論 8 14 限界収入曲線 支払い意欲(円) 生産量1枚の限界収入 は10000円 生産量2枚の限界収入 は6000円 限界収入は6000円 10000 8000 限界収入は-1000円 5000 限界収入は1000円 4000 3000 限界収入は1000円 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 枚数 15 需要曲線と限界収入曲線 縦軸との切片は需要曲線と限界 収入曲線で共通.しかし,生産量 が増えると需要曲線の高さよりも 限界収入曲線の高さは低くなる. 価格下落によって既存の消費者 からの売上げが落ちる 価格 A 需要曲線 E 価格 P 限界収入MR 限界収入曲線 数量 Q 2013/12/19 産業組織論 8 16 新しい例 買い手 2013/12/19 支払意欲(円) イチロー 10000 ダルビッシュ 9000 石川遼 8000 マー君 7000 香川真司 6000 産業組織論 8 17 需要量と価格として捉える 需要量 2013/12/19 価格 1 10000 2 9000 3 8000 4 7000 5 6000 産業組織論 8 18 企業の収入を求める 生産量が1の時の収入は10000円 生産量が2の時の収入は 2×9000=18000 円 生産量が3の時の収入は 円 生産量が4の時の収入は 円 生産量が5の時の収入は 円 2013/12/19 産業組織論 8 19 限界収入を求める 生産量が1の時の限界収入は 10000-0=10000 円 生産量が2の時の限界収入は 18000-10000=8000 円 生産量が3の時の限界収入は 円 生産量が4の時の限界収入は 円 生産量が5の時の限界収入は 円 2013/12/19 産業組織論 8 20 支払い意欲から導いた需要曲線 イチローの支払い意欲 ダルビッシュの支払い意欲 石川遼の支払い意欲 マー君の支払い意欲 香川真司の支払い意欲 価格(円) 10000 9000 8000 7000 6000 ・需要曲線を描く ・限界収入を描く 枚数 1 2013/12/19 2 3 4 5 産業組織論 8 21 独占企業の行動と社会的な評価 独占企業はプライスメーカー 価格ではなく数量を選ぶ 価格は需要曲線で決まる 需要曲線から限界収入曲線を導く 独占企業によって最適な生産量を求める 限界収入=限界費用 となる水準を実際に求める その時の経済的な損失を測る 2013/12/19 産業組織論 8 22 ファスナーを独占的に生産しているYKK ファスナー価格(円) 100 95 90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 2013/12/19 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 0 0 定義されない 1 95 95 2 180 85 3 255 75 4 320 65 5 375 55 6 420 45 7 455 35 8 480 25 9 495 15 10 500 5 11 495 -5 12 480 -15 産業組織論 8 23 独占企業の需要曲線と限界収入曲線 円 120 100 80 60 ファスナー価格(円) 40 限界収入(円) 20 0 -20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -40 2013/12/19 産業組織論 8 24 独占価格 限界費用は一定の45円とする 固定費用は0円 MC=45 MR=45の産出量は Q=6 公式による利潤の最大化は Q=6 で達成 2013/12/19 産業組織論 8 25 独占企業限界収入曲線と限界費用曲線 円 120 100 80 60 限界収入(円) 限界費用(円) 40 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -20 -40 2013/12/19 産業組織論 8 26 独占と市場価格 6単位の生産では 市場価格は70円になる 円 M PM C 限界費用曲線 P* 需要曲線 限界収入曲線 数量 QM 2013/12/19 Q* 産業組織論 8 27 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 限界費用(円) 費用(円) 利潤 0 0 定義されない 定義されない 0 0 1 95 95 45 45 50 2 180 85 45 90 90 3 255 75 45 135 120 4 320 65 45 180 140 5 375 55 45 225 150 6 420 45 45 270 150 7 455 35 45 315 140 8 480 25 45 360 120 9 495 15 45 405 90 10 500 5 45 450 50 11 495 -5 45 495 0 12 480 -15 45 540 -60 2013/12/19 産業組織論 8 28 独占の弊害,死荷重 独占価格によって価格は引き上げられる 限界費用と価格が等しい時の産出量は11個 独占は6個しか生産しない 経済厚生は価格=限界費用の水準と比べ低 下する 低下した厚生の損失を死荷重という 2013/12/19 産業組織論 8 29 独占と経済厚生 円 消費者余剰 M PM P* 生産者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2013/12/19 Q* 産業組織論 8 30 独占だが限界費用で価格付けした場合 円 M PM P* 生産者余剰はゼロ 消費者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2013/12/19 Q* 産業組織論 8 31 死荷重 円 独占は競争よりも経済厚生が 低くなる.その損失を死荷重と呼ぶ 独占の経済厚生 M PM 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P* 需要曲線 数量 QM 2013/12/19 Q* 産業組織論 8 32 ファスナーの例の死荷重を求めよう 三角形の面積=縦×横÷2 =(70-45)×(11-6)÷2 =25×5÷2=62.5 死荷重 円 独占の経済厚生 100 M PM=70 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P*=45 需要曲線 数量 Q M=6 2013/12/19 Q *=11 産業組織論 8 33 競争政策 価格が高すぎると非効率性が高まる 市場支配力の濫用 1. 2. 3. 大規模製造業者が下請け企業いじめ 大型小売店が納入企業に特別なサービスを要求 政府は積極的に競争の促進を実施している 独占禁止法(日本),反トラスト法(米国) 価格カルテル・談合の阻止 大きな合併の制限 優越的地位の濫用の防止 2013/12/19 産業組織論 8 34 自然独占 上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる. 独占に任せておいた方が良い これを自然独占という 政府の規制の必要性,自治体が運営 以前は電力,電話,CATVも自然独占だった. 今は違う! 2013/12/19 産業組織論 8 35
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