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産業組織論
(6) 労働需要
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2011年12月1日
今日学ぶこと
1.
2.
3.
4.
5.
労働の限界生産物
労働の限界生産物価値
労働需要
利潤最大化
限界費用との関係
2011/12/1
産業組織論 6
2
企業の雇用行動
企業の目的は利潤の最大化
 利潤が最大になる生産量を選ぶ
 最適な生産量はそれに対応する要素需要が存在
 労働需要はどのように決まるか
 労働市場は完全競争的 であると仮定する

生産物供給 Q
労働需要 L
企業
生産物価格 P
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労働価格=賃金率 W
産業組織論 6
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労働をどのくらい雇用するか
客が来なくウエイトレスが暇なレストラン
 忙しくて猫の手も借りたい甘味処
 どのくらい雇用を増減すれば良いか
 限界概念が労働需要を説明
 労働を1単位増やした時のこの2つを比較

 限界収入
 限界費用
限界収入が限界費用を上回れば雇用を増やす
 労働を増やしたらいくら生産が増えるのか?

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労働の限界生産物

企業が労働を1単位増やした時の生産量の増
加を労働の限界生産物という
労働量(時間)
0
1
2

米(Kg)
0
14
26
14-0=14
労働力が1時間の時の生産量の増加は14Kgな
ので,労働量1時間の時の労働の限界生産物
は14Kg
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労働投入量,生産量,限界生産物の関係
労働(時間)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
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米(Kg)
0
14
26
36
44
50
54
56
56
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限界生産物
定義されない
14
12
10
8
6
4
2
0
6
生産関数のグラ
フの傾きが労働
の限界生産物
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生産関数のグラフと限界生産物
生産関数のグラフの傾きが限界生産物に等
しくなる
 労働量の変化は1単位でなければ下記の公式
で計算できる
生産量の変化
労働の限界生産物=
労働投入量の変化
 労働の限界生産物を英語で marginal product
of labor という
 略して MPL と呼ぶ

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8
労働の限界
生産物(Kg)
16
14
12
10
8
6
4
2
0
1
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限界生産物曲線
2
3
4
5
6
労働投入量(時間)
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8
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労働の限界生産物は逓減する

労働投入量を増やせば生産量は増える
しかし,その生産量の増加分は段々と減っ
ていく
 この現象を収益逓減(収穫逓減)という
 これは次の二つのことを意味する


労働の限界生産物は生産物が増えるに従っ
て減っていく

生産関数のグラフの傾きは段々と小さくな
る
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労働の限界生産物価値

生産量の増加から収入の増加へ
労働の限界生産物に生産物価格を乗じれば,
労働を1単位増やした時の収入の増加が分かる
 労働の限界生産物価値とは,労働を1単位増や
したときに生じる生産物の価値の増加を意味

労働の限界生産物価値=労働の限界生産物×生産物価格
労働の限界生産物価値は英語で value of
marginal product of labor という
 略して VMPL とする

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限界生産物の価値
従って以下の公式が成り立つ
VMPL=P × MPL
 つまり1単位の労働力を増やすと VMPL の収
入が増える
 お米の生産物価格がキロあたり150円とする
 1時間の労働の限界生産物は14Kgなので
14 × 150 = 2100
 1時間の労働の限界生産物価値は 2100円

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労働投入量,生産量,限界生産物価値の関係
労働(時間)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
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米(Kg)
0
14
26
36
44
50
54
56
56
限界生産物 限界生産物価値
定義されない
定義されない
14
2100
12
1800
10
1500
8
1200
6
900
4
600
2
300
0
0
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労働の限界生産
物価値(円)
労働の限界生産物価値曲線
2500
2000
1500
1000
500
0
1
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2
3
4
5
6
労働投入量(時間)
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7
8
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労働需要
追加的に労働者を雇う時の追加的な便益は,
労働の限界生産物価値 VMPL に等しい
 労働投入が1時間の時には2100円の収入の増加
 限界費用は賃金率 W だ
 1時間あたりの労賃が限界費用となる
 最適な労働量は?
 時給が900円ならば VMPL > W
 利益の増加=2100-900=1200
 労働を増やした方が良い
 労働2時間の VMPL=1800 > W

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最適な労働量は?
一番利益が大きくなるのは労働の限界生産
物価値と賃金率が等しくなる水準
 労働5時間の VMPL=900 = W

限界便益と限界費用が均等する時に利益が
最大化される
 これは一般的な原理だ


労働の限界生産物価値曲線に価格線を引い
てみる
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労働の限界生産
物価値(円)
労働の限界生産物価値曲線
2500
2000
1500
1000
900
500
0
1
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2
3
4
5
6
労働投入量(時間)
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7
8
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労働の限界生産
物価値(円)
労働の限界生産物価値曲線
2500
2000
1500
賃金率W=900
1000
900
500
最適な労働時
間は5時間
0
1
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3
4
5
6
労働投入量(時間)
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7
8
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労働の限界生産
物価値(円)
労働の限界生産物価値曲線
2500
労働の限界生産物価値曲線は労働
時間からその限界生産物価値を見る
2000
1500
賃金率900円
1000
W
最適な労働時
間は5時間
500
0
1
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2
3
4
5
6
労働投入量(時間)
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7
8
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労働市場の均衡
w
労働の限界生産物価値
と賃金率の均等が両曲
線を関連づける
D
労働需要曲線は縦軸の賃金率
から横軸の労働需要量を見る
w
労働需要曲線
L
L
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お米の市場価格が150円
米(Kg)
収入
0
14
26
36
44
50
54
56
56
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総費用
0
2100
3900
5400
6600
7500
8100
8400
8400
利潤
1500
2400
3300
4200
5100
6000
6900
7800
8700
産業組織論 6
-1500
-300
600
1200
1500
1500
1200
600
-300
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利潤最大化
限界収入が150円,限界費用が150円になる
50Kgのお米の生産量が経済理論の教えると
ころの最大点
 50Kgのお米を作るのに5時間の労働が必要
 利潤を最大化する生産量は同じになる
1. 限界費用=市場価格
2. 労働の限界生産物価値=賃金率
 これは偶然ではない

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限界費用と限界生産物
1.

労働の限界生産物価値=賃金率
VMPL=W
VMPL=MPL×Pを思い出そう
(MPLを移項する)
MPL×P=W
W
P=
MPL

左辺の W/MPLは限界費用に等しい
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限界費用と限界生産物/2
生産量の変化
労働の限界生産物=
労働投入量の変化
W × 労働投入量の変化
W
=
生産量の変化
MPL
労働の費用の変化
=
=限界費用
生産量の変化
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限界費用と限界生産物/3

結局,以下の関係式が成り立った
W
= MC
MPL

ここで以下の式が成り立っていたから
W
P=
MPL

次が成り立つ
P = MC
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限界費用と限界生産物/4
つまり,限界費用で見ても限界生産物で見
ても最適な生産量や労働投入量が分かる
 利潤を最大化する生産量は同じになる
1. 限界費用=市場価格
2. 労働の限界生産物価値=賃金率


生産関数と費用関数は同じ情報を持っている
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