数式で扱う不完全競争 滋賀大学経済学部 助教授 大川 良文 独占市場 不完全競争市場における利潤最大化問題の最も簡単な例として、 まずは、独占企業の利潤最大化問題を考えてみましょう。 (例題1) 独占市場における社会的需要関数をD=9-p、独占企業の費用関数を C=3yとする(ただし、Dは社会的需要、pは財価格、yは生産量)。 このとき、独占市場における独占企業の生産量、独占価格、独占利潤を それぞれ求めなさい。 独占企業の限界収入 独占企業の利潤最大化条件は限界収入(Marginal Revenue略してMR)=限界費用 (MC)である。このため、限界収入と限界費用をそれぞれ求めて、それが等しくなる 独占企業の生産量を求めればよい。限界費用は費用関数を微分すればすぐに導出 できるため、問題は限界収入(MR)である。 完全競争市場と異なり、独占市場における価格は独占企業の生産量xと社会的 需要Dが等しくなるように決定される。このため、独占価格pは独占企業の生産量 xの関数となる。社会的需要関数D=9-pをpについて解くとp=9-Dとなる。これは、 需要関数の逆関数であり、逆需要関数という。この逆需要関数より、独占企業の 生産量と独占価格との関係はp=9-yとなる。 このことより、独占企業の収入はpy=(9-y)y=9y-y2となる。これを生産量xで 微分したものが限界収入であり、限界収入(MR)=9-2yとなる。 価格 左図は社会的需要曲線と限界収入曲線 限界収入 を図示したものである。両曲線の縦軸の 社会的需要曲線 9 p=9-y 切片は等しくなる一方で、限界収入曲線の 横軸の切片は、社会的需要曲線の切片の 限界収入曲線 半分の値となることがわかる。 MR=9-2y -1 -2 4.5 9 数量 独占企業の利潤最大化 独占企業の費用関数C=3yより、限界費用(MC)=3となる。 これより、利潤最大化条件MR=MCは9-2y=3となるため、これを yについて解くと、独占企業の生産量y=3となる。 この生産量は、独占企業の利潤π=py-C=9y-y2-9の利潤最大化 条件 dπ=0より導出することもできる。 dy 逆需要関数p=9-DにD=y=3を代入する事によって、独占価格p=6 となる。 最後、p=6、y=3より、独占利潤π=py-C=18-9=9となる。 価格 9 社会的需要曲線 p=9-y 独占価格 限界収入曲線 6 MR=9-2y 限界費用曲線 3 MC=3 利潤最大化生産量 3 4 8 クールノー・モデル シュタッケルベルク・モデル 次に複占市場における企業の行動について考えてみましょう。 まずは、複占企業の生産する製品の品質が同じであるクールノー・モデル に関する問題を考えてみてください。 (例題2) 複占市場において、両企業が同質財の生産を行っているとする。 社会的需要関数をD=9-p、第1企業の費用関数をC1=3y1、 第2企業の費用関数をC2=4y2とするとき、次の問いに答えなさい。 (1) クールノー均衡における両企業の生産量と利潤、そして市場価格 を求めなさい。 (2) 第1企業が先導者である場合のシュタッケルベルク均衡における 両企業の生産量と利潤、そして市場価格を求めなさい。 反応曲線の導出 両企業が同質財を生産する複占市場において、市場価格は両企業の生産量y1+y2 が社会的需要Dと等しくなるところで決まる。 逆需要関数p=9-Dより、両企業の生産量と市場価格の関係はP=9-(y1+y2)と なる。 これより、第1企業の利潤π1=py1-C1={9-(y1+y2)}y1-3y1となり、 第2企業の利潤π2=py2-C2={9-(y1+y2)}y2-4y2となる。このように、両企業 の利潤は自らの生産量だけでなく、相手企業の生産量にも依存するのである。 dπ 第1企業の利潤最大化条件 dy 1 =9-y2-2y1-3=0より、第1企業の利潤最大化 生産量y1=3- 1 2 1 dπ y2となる。また、第2企業の利潤最大化条件 dy 2=9-y1-2y2-4 =0より、第2企業の利潤最大化生産量y2= 5 2 y2 6 5 2 y2=6−2y1 第2企業の反応曲線 y2= 5 - 1 y1 3 5 2 y1となる。このように、複占市場 において、両企業の利潤最大化生産量は 相手企業の生産量に依存している。 これを図示したものが左図のような反応 曲線となるのである。 第1企業の反応曲線 2 1 2 2 y1 クールノー均衡の導出 両企業の反応曲線の交点がクールノー均衡における両企業の生産量と なる。両企業の利潤最大化生産量y1=3- 12 y2とy2= 52 - 12 y1よりy1と y2を解くと第1企業の生産量y1= 7 、第2企業の生産量y2= 4 となる。 3 3 7 4 16 逆需要関数より市場価格はp=9-( 3 + 3 )= 3 となる。これより、 第1企業の得る利潤はπ1=py1-C1= 16 7 7 49 y2 3 × 3 -3× 3 = 9 、第2企業の得る 16 4 4 第1企業の反応曲線 利潤はπ2=py2-C2= 3 ×3 -4× 3 6 y2=6−2y1 = 16 となる。これが(1)の答となります。 9 5 2 4 3 クールノー 均衡点 第2企業の反応曲線 y2= 5 - 1 y1 2 7 3 3 5 2 y1 独占市場とクールノー均衡の違い 価格 9 6 16 3 3 (例題1)と(例題2)において、社会的需要関数は同じであり、(例題1)の独占企業 と(例題2)の第1企業は同じ費用関数を持っているため、(例題1)と(例題2)を 比較することによって、独占市場と複占市場における価格や生産量を比較することが できる。下図は、(例題1)の独占企業と(例題2)の第1企業を比較した図である。 青色の実線は社会的需要曲線であり、赤色の実線がそれに対する限界収入曲線に なります。市場を独占している場合は、この限界収入曲線と限界費用曲線によって 利潤最大化生産量3が決定され、社会的需要曲線より独占価格6が決定 4 します。複占市場の場合、第2企業の生産量 3 分だけ 社会的需要曲線 左方に社会的需要曲線をシフトさせた青色破線が 第1企業の 第1企業の直面する需要曲線となります。第1企業は、 直面する これに対応する赤色破線の限界収入曲線と限界費用 7 需要曲線 曲線より利潤最大化生産量 3 を決定します。市場 限界費用 価格は第1企業の生産量 7 と第1企業が直面して 3 曲線 いる需要曲線から、もしくは両企業の生産量の合計 4 11と社会的需要曲線より 16と導出される。独占時と 限界収入 3 3 3 曲線 比べて複占市場のときの方が、第1企業の生産量 数量 は少なく、市場価格も低下していることが左図より 9 7 3 11 3 3 わかります。 シュタッケルベルク均衡の導出 次に(2)について考えましょう。第1企業は先導者なので、自らの生産量に対する 第2企業の反応を考慮して利潤最大化生産量を決定する。 つまり、第1企業は第2企業の反応関数y2= 5 2 1 2 y1を考慮して利潤最大化問題 を解くのである。第1企業の利潤π1=py1-C1={9-(y1+y2)}y1-3y1にこれを 13 1 - y1)y1-3y1となるので、 dπ21 213 利潤最大化条件 = -y1-3=0より、シュタッケルベルク均衡における dy1 2 第1企業の生産量y1= 7 となる。これを第2企業の反応関数に代入すると 2 第2企業の生産量y2= 3 となります。逆需要関数より市場価格p=9-( 7 + 3 )= 19 4 2 4 4 7 7 49 × -3× = 、 となります。最後に両企業の利潤はπ1= 19 4 2 2 8 π2= 19 × 3 -4× 3 = 9 となります。これが(2)の答になります。 4 4 4 16 代入するとπ1=( 独占市場・クールノー均衡・ シュタッケルベルク均衡の比較 左下図はクールノー均衡点とシュタッケルベルク均衡点の違いを示している。 右下表は、第1企業が市場を独占しているケース(例題1)、複占市場における クールノー・モデル(例題2(1))と第1企業が先導者であるシュタッケルベルク・ モデル(例題2(2))のそれぞれにおける市場価格、各企業の生産量と利潤を 示したものである。左下図が示しているように、追従者(第2企業)の利潤 第2企業の はシュタッケルベルク・モデルの方が少なくなっていることと先導者(第1 生産量y2 企業)の利潤はシュタッケルベルク・モデルの方が増加しているが、 独占のときの利潤が大きいことを確認しておいてください。 第1企業の 反応曲線 4 3 3 4 クールノー均衡点 シュタッケルベルク均衡点 (第1企業が先導者) 第2企業の 反応曲線 7 3 3 7 2 第1企業が市場を独占 しているケース 第1企業の 生産量y1 p y1 y2 π1 π2 独占 6 3 9 クールノー シュタッケ ルベルク 16 3 19 4 7 3 7 2 4 3 49 9 3 4 49 8 16 9 9 16 ベルトラン・モデル シュタッケルベルク・モデル 次に、複占企業の生産する製品が差別化されているベルトラン・モデル に関する問題を考えてみてください。 (例題3) 複占市場において、両企業が同質財の生産を行っているとする。 第1企業の生産する製品に対する社会的需要関数をD1=8-p1+ 12 p2、 第2企業の生産する製品に対する社会的需要関数をD2=8-p2+ 12p1、 第1企業と第2企業の費用関数をそれぞれC1=2y1、C2=2y2とするとき、 次の問いに答えなさい。 (1) ベルトラン均衡における両企業の製品価格、生産量、そして利潤 を求めなさい。 (2) 第1企業が先導者である場合のシュタッケルベルク均衡における 両企業の製品価格と生産量、そして利潤を求めなさい。 ベルトラン均衡の導出 ベルトラン・モデルはクールノー・モデルと違い価格が戦略変数となる。このため、 利潤を両企業の製品価格p1とp2の関数で表現しなければならない。 第1企業の生産量y1が社会的需要D1に等しいとき、第1企業の利潤π1=p1y1-C1 1 =p1y1-y1=(p1-2)y1=(p1-2)(8-p1+ 2 p2)となる。利潤最大化条件 dπ 1 1 1 dp1 =10+ 2 p2-2p1=0より、第1企業の製品価格p1=5+ 4 p2となる。 同様に、第2企業の利潤π2=(p2-2)(8-p2+ 1 2 p1)となるので、利潤最大化条件 dπ 2 =10+ 1 p1-2p2=0より、第2企業の製品価格p2=5+ 1 p1となる。 dp2 2 4 p2 このように、両企業の利潤最大化製品価格は相手企業の価格に影響を受ける。 これを図示したものが下図のような反応曲線である。反応曲線の交点より、 20 ベルトラン均衡における両企業の製品価格p1= 3 , 第1企業の反応曲線 20 p2= 3 が導出される。両企業の製品に対する需要 p =4p -20 2 20 3 1 第2企業の反応曲線 p2= 1 p1+5 5 4 5 20 3 p1 ,y2= 14 と 曲線より、両企業の生産量はy1= 14 3 3 なる。最後に、両企業の得る利潤はπ1= 196 , 9 196 π2= 9 となる。 シュタッケルベルク均衡の導出 次に、ベルトラン・モデルにおけるシュタッケルベルク均衡を導出しましょう。 第1企業が先導者であるとき、第1企業は第2企業の反応関数を考慮しながら 利潤最大化を行います。 これより、第1企業の利潤π1=p1y1-C1 =(p1-2)(8-p1+ 1 p2)に第2企業の 反応関数p2=5+ 1 4 dπ p1を代入すると、π1=(p1-2)( 21 2 2 7 p )となる。 8 1 利潤最大化条件 dp 1 = 49 - 7 p1=0より第1企業(先導者)の製品価格p1=7 4 4 1 となる。これを第2企業の反応関数に代入すると、第2企業(追従者)の製品価格 p2= 27 となる。これを各企業の製品に対する需要関数に代入するとy1= 35 、 y2 = 4 19 4 8 となる。最後に、各企業の得る利潤はπ1= 175 ,π2= 361 となる。 8 16 これが(2)の答となる。 ベルトラン均衡と シュタッケルベルク均衡の比較 左下図は、ベルトラン均衡とシュタッケルベルク均衡における各企業の製品価格と 利潤の違いを図示したものであり、右下表は数値で比較したものである。ベルトラン 均衡と比較して、シュタッケルベルク均衡の方が両企業の製品価格と利潤が増加 していることがわかる。シュタッケルベルク均衡において、追従者である第2企業の 利潤の方が先導者である第1企業の利潤を 第2企業(追従者)の製品価格p2 上回るのは面白い結果である。 第1企業の 等利潤曲線 27 4 20 3 5 シュタッケル ベルク均衡点 (第1企業が先導者) ベルトラン 均衡点 第2企業の 反応曲線 5 第2企業の 等利潤曲線 第1企業の 反応曲線 20 3 第1企業(先導者) の製品価格p1 7 ベルトラン p1 p2 π1 π2 20 =6.666 3 20 =6.666 3 196 =21.77 9 196 =21.77 9 シュタッケル ベルク 7 27 =6.75 4 175 =21.875 8 361 =22.5625 16 クールノー・モデルにおけるカルテル① 複占市場では、両企業がカルテル(共謀)を行うことによって、お互いの 利潤をクールノー均衡時よりも増加させることができます。そのことを 次の問題を解きながら確認しましょう。 (例題4) 複占市場において、両企業が同質財の生産を行っているとする。 社会的需要関数をD=9-p、第1企業と第2企業の費用関数を ともにci=3yi(ただし、i=1,2)とするとき次の問いに答えなさい。 (1)クールノー均衡における両企業の生産量と利潤を求めなさい。 (2)両企業の利潤の合計が最大化されるとき、両企業の生産量の合計 Y=y1+y2はいくらになるか求めなさい。 (3)両企業が(2)で求めた生産量をそれぞれ半分ずつ生産した場合に 各企業が得る利潤の大きさを求めなさい。 (4)第1企業が(3)で求めた生産量を生産するとき、第2企業が自らの 利潤の最大化を考えたときにどれだけの生産を行えばよいか求める とともに、そのときの両企業の利潤の大きさを答えなさい。 クールノー・モデルにおけるカルテル② まずは(1)について、(例題1)と同様な手法で解いてみましょう。 社会的需要関数より、逆需要関数がp=9-(y1+y2)となることから、 第1企業の利潤π1=py1-c1={9-(y1+y2)}y1-3y1となるので、 利潤最大化条件 dπ 1 =6-y2-2y1=0より、第1企業の反応関数はy1=3- 1 y2 dy1 2 となる。同様にして第2企業の反応関数もy2=3- 1 y1となる。 2 両企業の反応関数からy1とy2を求めると、y1=y2=2となり、これがクールノー 均衡時における両企業の生産量となる。 また、このときの市場価格はp=9-(2+2)=5となるため、両企業の利潤は π1=π2=5×2-3×2=4となる。 次に(2)について考えてみよう。 両企業の利潤の合計π1+π2=py1-c1+py2-c2={9-(y1+y2)}(y1+y2) -3y1-3y2=(9-Y)Y-3Yとなるため、利潤最大化条件 より、両企業の利潤の合計を最大化するY=3となる。 d(π 1+π 2) =6-2Y=0 dY 3 となる。市場価格p=9-3=6 3 3 2 9 であるため、各企業の利潤π1=π2=6×2 -3×2 = 2 となる。 両企業がY=3の半分ずつ生産するとき、y1=y2= これが(3)の答えである。 クールノー・モデルにおけるカルテル③ (1)∼(3)までの結果を図によって示しておこう。 まず(1)では、両企業の利潤最大化問題から反応曲線を導出し、その交点から クールノー均衡時における両企業の生産量を導出した。このときに両企業が 得る利潤はπ1=π2=4であるため、クールノー均衡点を通る両企業の等利潤 曲線はそれぞれπ1=π2=4の水準に対応している。(2)と(3)で導出した 第2企業の 両企業の利潤の合計を最大化する生産量Y=3 を両企業で半分づつ生産 生産量y2 する生産量の組み合わせy1=y2= 3 は左図の点Aで示されている。 2 6 左図が示すように、点Aはそれぞれクールノー均衡に 第1企業の y =6-2y1 対応する第1企業の等利潤曲線の下方、第2企業の 反応曲線 2 等利潤曲線の左方にあるため、点Aにおける両企業の 第2企業の 3 π2=4 利潤はクールノー均衡時よりも大きくなることが予想 等利潤曲線 9 クールノー される。実際に(3)で求めたπ1=π2= 2 はクールノー 均衡点 2 均衡時の利潤4を上回っていることが 第1企業の 3 π =4 1 等利潤曲線 確認できる。つまり、両企業がカルテル 2 A 3 第2企業の (共謀)を結び 2 づつ生産することに 1 反応曲線 y2=3- 2 y1 よって、お互いにクールノー均衡時 第1企業の よりも高利潤を得ることができるの 3 2 3 6 生産量y1 2 である。 クールノー・モデルにおけるカルテル④ 3 次に(4)について考えてみよう。第1企業が 2 生産するときに、第2企業の利潤を 3 最大化する生産量は、第2企業の反応関数にy1= 2 を代入して導出される。 1 3 9 下図の点Bが示すように、このときの第2企業の生産量はy2=3- 2 ×2 = 4 となる。このときの市場価格はp=9-{ 3 + 9 }= 21 となるため、第1企業の 2 4 4 3 3 27 21 9 9 81 利潤π1= 21 × -3× = 、第2企業の利潤π 2= 4 × 4 -3× 4 = 16 4 2 2 8 3 6 3 9 4 2 3 2 9 となる。第2企業はお互いに 2 生産しようというカルテルを裏切り 4 生産 することによって、カルテル時の利潤 9 よりも高い利潤を 2 得ることが可能なのである。第1企業についても同様に 第1企業の y =6-2y1 反応曲線 2 第2企業がカルテルを守って 3 の生産を行うのであれば、 2 第2企業の 9 π2=4 カルテルを裏切って の生産を行うことによって(左図点C) 等利潤曲線 4 B クールノー カルテル時よりも高い利潤を得ることが可能で 均衡点 ある。このように、カルテルにはそれを裏切る 第1企業の π =4 ことによって、自分だけ高い利潤を 1 等利潤曲線 C A 得ようとする裏切りの誘因が常に 第2企業の 1 存在するのである。 反応曲線 y2=3- 2 y1 第2企業の 生産量y2 3 2 9 4 2 3 6 第1企業の 生産量y1 クールノー・モデルにおけるカルテル⑤ カルテルの議論をゲーム理論を用いて考えてみよう。各企業が、協調してカルテルを 結ぶか、裏切って自らの反応曲線に応じた生産を行うかの戦略があるとする場合 各企業の選ぶ戦略と、それに応じた各企業の利潤を右下表によって示します。 このゲームにおける第1企業の行動を考えると、第2企業が協調しても裏切っても 裏切った方が利潤は高くなるため、第1企業は裏切りの戦略を選ぶ。同様に、第2 企業も裏切りの戦略を選ぶため、ナッシュ均衡は両企業が裏切るクールノー 第2企業の 均衡となる。実際には両企業が協調してカルテルを結ぶ方が両企業にとって 生産量y2 望ましいにもかかわらず、各企業が自らの利潤だけを考えて行動する事に 6 よって両企業にとって望ましくない結果が生じるという囚人のジレンマが成立 するのである。 3 9 4 2 3 2 第2企業の π2=4 等利潤曲線 B クールノー 均衡点 第1企業の π =4 等利潤曲線 1 C A 第1企業の 生産量y1 3 2 9 4 2 3 6 第2企業 裏切り 第 裏切り 1 企 協調 業 (4,4) 協調 81 27 8 ( 16 , ( 27 8 81 , 16 ) 点B ) 点C クールノー均衡点 9 (2 , 9 2 ) 点A(カルテル) (第1企業の利潤,第2企業の利潤) 独占的競争① 最後に独占的競争市場に関する問題を考えてみよう。 (例題5) 独占的競争市場における各企業の製品に対する逆需要関数を p=100-ny、費用関数をC=20y+8とする(nは独占的競争市場 における企業数、yは独占的競争企業の生産量)。 以下の問いに答えなさい。 (1)企業数が20社である時の独占的競争企業の生産量と製品価格 および利潤を求めなさい。 (2)長期均衡における企業数と製品価格を求めなさい。 独占的競争② まず(1)について考える。企業数n=20のとき、独占的競争企業の製品に対する 逆需要関数はp=100-20yとなるため、利潤π={100-20y}y-(20y+8) dπ =80y-20y2-8となる。利潤最大化条件 dy =80-40y=0より、利潤最大化 生産量y=2となる。このときの製品価格p=100-20×2=60、利潤π=60×2 -20×2=80となる。 次に(2)について考える。企業数をnと考えると独占的競争企業の利潤は π={100-ny}y-(20y+8)=80y-ny2-8となる。利潤最大化条件 dπ 40 =80-2ny=0より、利潤最大化生産量y= n となる。このとき、利潤は dy 40 40 2 1600 π=80× n -n× n -8= n -8となる。長期均衡においては独占的競争 企業の利潤はゼロとなるため、π=0より長期均衡における企業数n=200となる。 このとき、独占的競争企業の生産量y= 40 = 1 となる。長期均衡における製品 200 5 価格は逆需要関数よりp=100-200× 1 =60となる。 5
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