産業組織論 入門 (9) 独占企業と死加重 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2015年1月29日 復習 供給を行う企業が1社しかいない市場を独占である という 数社の企業が競争していてある程度競争がある市 場を寡占という 寡占よりも企業数が多いが,完全競争よりも少な い状態は独占的競争であるという 利潤を最大にする企業は限界収入=限界費用 となる水準で産出量を決定する 生産量を増加させたとき収入の増加を限界収入という 縦軸との切片は需要曲線と限界収入曲線で共通 2015/1/29 産業組織論 6 2 生産量2枚のときの限界収入 支払い意欲(円) 10000 8000 5000 4000 3000 生産量を増やしたときに 限界収入に2つの効果 限界収入は6000円 ・価格下落によって既存 の消費者からの売上げ が落ちる(オレンジ) ・新規の顧客の収入が 入る(紫) 限界収入 =新規顧客効果 ー既存顧客効果 1 2015/1/29 2 3 4 5 産業組織論 6 枚数 3 HW:他の生産量での限界収入を求めよ 生産量が1の時の収入は10000円 生産量が2の時の収入は16000円 生産量が3の時の収入は1500円 生産量が4の時の収入は1600円 生産量が5の時の収入は1500円 2015/1/29 産業組織論 6 4 HW:他の生産量での限界収入を求めよ 生産量が0から1の時の限界収入は10000円 生産量が1から2の時の限界収入は6000円 生産量が2から3の時の限界収入は 生産量が3から4の時の限界収入は 生産量が4から5の時の限界収入は 2015/1/29 産業組織論 6 5 独占企業の行動と社会的な評価 独占企業はプライスメーカー 価格ではなく数量を選ぶ 価格は需要曲線で決まる 需要曲線から限界収入曲線を導く 独占企業にとって最適な生産量を求める 限界収入=限界費用 となる水準を実際に求める 独占企業YKKの数値例を考える 2015/1/29 産業組織論 6 6 ファスナーを独占的に生産しているYKKの例 ファスナー価格(円) 100 95 90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 2015/1/29 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 0 0 定義されない 1 95 95 2 180 85 3 255 75 4 320 65 5 375 55 6 420 45 7 455 35 8 480 25 9 495 15 10 500 5 11 495 -5 12 480 -15 産業組織論 6 7 独占企業の需要曲線と限界収入曲線 円 120 100 80 60 ファスナー価格(円) 40 限界収入(円) 20 0 -20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -40 2015/1/29 産業組織論 6 8 独占価格 限界費用は一定の45円とする 固定費用は0円 MC=45 MR=45の産出量は Q=6 利潤の最大化は Q=6 で達成される 限界費用よりも高い価格をつけられる力を 独占力あるいは価格支配力という 独占企業がつける価格を独占価格という 2015/1/29 産業組織論 6 9 独占企業限界収入曲線と限界費用曲線 円 120 100 80 60 限界収入(円) 限界費用(円) 40 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -20 -40 2015/1/29 産業組織論 6 10 独占と市場価格 円 6単位の生産では 市場価格は70円になる M PM=70 C 限界費用曲線 P* 需要曲線 限界収入曲線 数量 Q M=6 2015/1/29 Q* 産業組織論 6 11 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 限界費用(円) 費用(円) 利潤 0 0 定義されない 定義されない 0 0 1 95 95 45 45 50 2 180 85 45 90 90 3 255 75 45 135 120 4 320 65 45 180 140 5 375 55 45 225 150 6 420 45 45 270 150 7 455 35 45 315 140 8 480 25 45 360 120 9 495 15 45 405 90 10 500 5 45 450 50 11 495 -5 45 495 0 12 480 -15 45 540 -60 2015/1/29 産業組織論 6 12 独占の弊害 独占価格によって価格は引き上げられる 限界費用と価格が等しい時の産出量は11個 独占は6個しか生産しない 経済厚生は価格=限界費用の水準と比べ低 下する 低下した厚生の損失を死荷重(しかじゅう)と いう 図形的に理解してみよう 2015/1/29 産業組織論 6 13 独占と経済厚生 円 消費者余剰 M PM P* 生産者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2015/1/29 Q* 産業組織論 6 14 独占だが限界費用で価格付けした場合 円 M PM P* 生産者余剰はゼロ 消費者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2015/1/29 Q* 産業組織論 6 15 死荷重 円 • 独占は競争よりも経済厚生 が低くなる • その損失を死荷重と呼ぶ 独占の経済厚生 M PM 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P* 需要曲線 数量 QM 2015/1/29 Q* 産業組織論 6 16 ファスナーの例の死荷重を求めよう 死荷重 円 独占の経済厚生 100 M PM=70 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P*=45 需要曲線 数量 Q M=6 2015/1/29 Q *=11 産業組織論 6 17 死加重を求める 三角形の面積=縦×横÷2 縦の長さ=70-45=25 横の長さ=11-6=5 三角形の面積=25×5÷2=62.5 死加重は62.5 独占の経済厚生は? 2015/1/29 産業組織論 6 18 独占と経済厚生 円 消費者余剰 100 M PM=70 P*=45 生産者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 Q M=6 2015/1/29 Q *=11 産業組織論 6 19 独占の経済厚生を求める 消費者余剰 三角形の面積=縦×横÷2 縦の長さ=100-70=30 横の長さ=6-0=6 三角形の面積=30×6÷2=90 生産者余剰 長方形の面積=縦×横 経済厚生は 縦の長さ=70-45=25 90+150=240 横の長さ=6-0=6 長方形の面積=25×6=150 2015/1/29 産業組織論 6 20 競争政策 価格が高すぎると非効率性が高まる 市場支配力の濫用 1. 2. 3. 大規模製造業者が下請け企業いじめ 大型小売店が納入企業に特別なサービスを要求 政府は積極的に競争の促進を実施している 独占禁止法(日本),反トラスト法(米国) 価格カルテル・談合の阻止 大きな合併の制限 優越的地位の濫用の防止 2015/1/29 産業組織論 6 21 自然独占 上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる このとき独占に任せておいた方が良い 費用逓増産業で独占が自然に発生するので自然 独占という 政府の規制が必要性,自治体が運営 以前は電力,電話,CATVも自然独占だった 技術革新により新規の参入が採算が合うように なった 規制の見直しが必要 2015/1/29 産業組織論 6 22 復習 独占企業は供給量を選ぶ 価格は需要曲線によって定まる 限界費用よりも高い価格をつけられる力を独占力 という 価格と限界費用が等しい状態から低下した経済厚 生の減少を死荷重という 独占力が高まると非効率性が高まる それを是正するのが競争政策 費用が増えて自然に独占が成立するのを自然独占 そこから競争が望ましくする力が技術革新 2015/1/29 産業組織論 6 23
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