企業の金融活動 金融経済論(小川英治) 1 企業の意思決定 企業は、第一段階で投資額を決定する。 第二段階で、企業は、どのように資金を調 達するか、資金調達を決定する。 金融経済論(小川英治) 2 企業の投資 収益の現在割引価値と費用の比較 投資の限界効率 企業価値(株価)最大化 金融経済論(小川英治) 3 収益の現在割引価値と費用の 比較(1) 企業が機械を導入する投資プロジェクトの 意思決定を行う。 機械の購入費用:C円 機械の収益: R1 , , Rn 円 機械の限界収益は逓減 金融経済論(小川英治) 4 収益の現在割引価値と費用の 比較(2) 収益の現在割引価値(PVR) R1 R2 PVR 2 1 r (1 r ) Rn (1 r ) n 収益の現在割引価値と費用の比較 PVR C :機械を増加 PVR C :最適台数 PVR C :機械を減少 金融経済論(小川英治) 5 PVR C PVR(←収穫逓減) C 最適台数 金融経済論(小川英治) 台数 6 投資の限界効率(1) 実質利子率と投資の限界効率(MEI)を比 較 R1 R2 C 2 1 MEI (1 MEI ) Rn n (1 MEI ) 機械の導入台数が増えるにつれて、投資 の限界効率は低下する。 金融経済論(小川英治) 7 投資の限界効率(2) MEI>r:機械を増加 MEI=r:機械の最適台数 MEI<r:機械を減少 金融経済論(小川英治) 8 投資の限界効率 実質利子率 投資の限界効率(←収穫逓減) 実質利子率 最適台数 金融経済論(小川英治) 台数 9 企業価値(株価)最大化 企業価値(株価) V F ( K 0 , L ) wL I 0 F ( K 0 I 0 , L ) wL F ( K 0 I 0 , L ) wL 2 1 r (1 r ) F ( K 0 I 0 , L ) wL F ( K 0 , L ) wL I 0 r 金融経済論(小川英治) 10 V I F (K0 I0 ) r V I 金融経済論(小川英治) 11 限界価値 + 1 ー dF ( K 0 I 0 ) dI 0 r 最適台数 金融経済論(小川英治) I 12 企業価値(株価)最大化の最適 投資量 資本の限界生産力=実質利子率となる資 本量あるいは投資量が最適。 dF ( K 0 I 0 ) r dI 0 金融経済論(小川英治) 13 企業の資金調達 企業の資金調達手段 ①内部留保 内部資金 ②減価償却 ③株式 ④社債 外部資金 ⑤借入金 金融経済論(小川英治) 自己資本 他人資本 14 法人企業部門の資金過不足と 投資(対名目GDP比率) 図3-7 法人企業部門の資金過不足と投資(対名目GDP比率) 25.0% 20.0% 15.0% 10.0% 資金過不足 設備投資 在庫投資 5.0% 6 5 20 0 4 20 0 3 20 0 2 20 0 1 20 0 0 20 0 9 20 0 8 19 9 7 19 9 6 19 9 5 19 9 4 19 9 3 19 9 2 19 9 1 19 9 0 19 9 9 19 9 8 19 8 7 19 8 6 19 8 5 19 8 4 19 8 3 19 8 2 19 8 1 19 8 19 8 19 8 0 0.0% -5.0% -10.0% -15.0% 金融経済論(小川英治) 15 79 19 F Y 80 19 F Y 81 19 F Y 82 19 F Y 83 19 F Y 84 19 F Y 85 19 F Y 86 19 F Y 87 19 F Y 88 19 F Y 89 19 F Y 90 19 F Y 91 19 F Y 92 19 F Y 93 19 F Y 94 19 F Y 95 19 F Y 96 19 F Y 97 19 F Y 98 19 F Y 99 20 F Y 00 20 F Y 01 20 F Y 02 20 F Y 03 20 F Y 04 20 F Y 05 20 F Y 06 FY 19 法人企業部門の資金調達(残 高)の推移 億円 図3-8 法人企業部門の資金調達(残高)の推移 14000000 12000000 10000000 8000000 6000000 株式・出資金 株式以外の証券(その他) CP 居住者発行外債 事業債 その他貸出 非金融部門貸出金 公的金融機関貸出金 民間金融機関貸出 4000000 2000000 0 金融経済論(小川英治) 16 MM理論 モジリアーニ・ミラー(MM)理論 ある条件の下では、企業価値が資本構成 に影響されないことから、資金調達は無差 別である。 取引費用、租税、市場の不完全性、情報 の不完全性などによって、MM理論が成立 しなくなる。 金融経済論(小川英治) 17 MM理論の証明(1) 毎期、利子支払い前の利益Xを得る企業 について、資本構成を基準にして2つの ケースを考える。 ①ケースE:負債がなく、自己資本 SE のみで 資金調達される。 ②ケースD:自己資本 S D とともに負債 DD でも 資金調達される。 金融経済論(小川英治) 18 MM理論の証明(2) ケースEの企業価値 VE SE ケースDの企業価値 VD SD DD 金融経済論(小川英治) 19 MM理論の証明(3) 株式保有者はケースDの株式をその株式 総額のうちaの比率で保有する。 もし株式市場にケースEの株式とケースD の株式の両方が取引されているならば、そ の株主はケースDの株式 aSD を売ると同 時に aDD を借入れて、a SD DD に相当 する金額のケースEの株式を a SD DD SE の比率だけ買うことができる。 金融経済論(小川英治) 20 MM理論の証明(4) 株式保有者へのケースDにおける株式か らの配当 YD は、利益Xから負債の利子支 払 rDD を差し引いた大きさに保有株式比 率aを掛けたものとなる。 YD a X rDD ケースDにおける株式を売るとともに借入 れをして、ケースEにおける株式を保有す ることからの正味の配当 YE は、 a S D rDD YE X arDD SE 金融経済論(小川英治) 21 MM理論の証明(5) a S D rDD YE X arDD SE VD a X arDD VE VD a X aX YD VE VD YD 1 aX VE 金融経済論(小川英治) 22 MM理論の証明(6) ケースEの企業価値よりケースDの企業価値の 方が大きい( VE VD)かぎり、ケースEの配当の 方がケースDの配当よりも大きい( YE YD)。 投資家は、ケースDの株式を売って、ケースEの 株式を買う。 ケースDの市場価値 VDが低下し、ケースEの市 場価値 VEが上昇する。 最終的には、両方のケースの市場価値が均等 化する。 VE VD ⇒企業価値は、資本構成に影響されずに決まる。 金融経済論(小川英治) 23
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