貸出市場 金融経済論(小川英治) 1 市場型取引vs.相対型取引 (1) (2) 金融取引 市場型取引=貸借取引の規格化を通じて債務 不履行リスクに関する情報収集・分析費用を節 約することによって、不特定多数の市場参加者 によって競り合いを通して取引条件が決定され る取引 相対(あいたい)型取引=借り手の異質性が高 いために貸借取引の規格化が困難な場合に は、ある特定の貸し手とある特定の借り手が1 対1で取引条件を決定する取引 金融経済論(小川英治) 2 貸出市場は相対型取引 (1) (2) 貸出市場は、相対型取引を行う市場であ る。 貸出市場における借り手の異質性が高 い。 借り手と金融機関と間に借り手に関する 情報の非対称性が存在する。 金融経済論(小川英治) 3 情報の非対称性と金融機関 (1) (2) (3) 金融機関は、情報劣位者にあるために、 貸出の前に、借り手の信用度を審査する。 貸出の後に、借り手の機会主義的行動を抑制 するために、借り手の行動を監視する。 1回限りの取引関係ではなく、長期的に継続す る取引関係(長期顧客関係)を築くことによって、 借り手の機会主義的行動を抑制する。 ⇒借り手にとって、長期顧客関係は、将来の 安定した資金供給の確保を意味する。 金融経済論(小川英治) 4 メインバンク制 貸出市場では、金融機関サイドからも(他 に資金調達手段を持たない)借り手サイド からも長期顧客関係を形成し、継続する理 由がある。 ⇒貸出市場は顧客市場の特徴をもつ。 メインバンク制=安定的な資金供給を受け られる。リスクの共同負担(リスク・シェアリ ング)の機能を有する。 金融経済論(小川英治) 5 大企業のメインバンク離れ 近年、大企業を中心に、メインバンク離れ を進めている。 (理由)大企業は、銀行以外の資金調達手段 (CPや社債等)を持つようになった。 金融経済論(小川英治) 6 非対称情報下での信用割当 借り手の異質性と情報の非対称性から、 貸出金利には、需給調節機能以外に、借 り手の質(信用力)を間接的に表す「シグナ ルとしての機能」を有する。 貸出金利の「シグナルとしての機能」=高 い貸出金利で借りられる借り手はハイリス ク・ハイリターンの借り手であり、高金利に よって低リスクの借り手が排除される。 金融経済論(小川英治) 7 金利のシグナル効果 逆選択効果adverse selection effect 金利の上昇⇒ハイリスク・ハイリターンの 借り手のみが借りる⇒借り手全体がハイ リスク・ハイリターンとなる 誘因効果incentive effect 金利の上昇⇒各借り手がハイリスク・ハイ リターンの投資プロジェクトに投資する⇒ 借り手全体がハイリスク・ハイリターンとな る 金融経済論(小川英治) 8 図:非対称的情報下での信用割当 iL LS A iLA C iL B 金融経済論(小川英治) LA L LD L 9 非対称的情報下での信用割当 貸出金利の上昇により借り手が機会主義的行動 をとることによって期待貸出収益率が低下する。 銀行が期待貸出収益率が最高となるように貸出 供給量を決めれば、銀行の貸出供給曲線上の 点Bで、貸出金利と貸出量が決定される。 このとき、貸出の超過需要が存在し、信用割当 が行われる。これが、銀行の「貸し渋り」を表す。 金融経済論(小川英治) 10
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