イメージ調査の手法を用いた 防災用語に関する住民の意識 http://www.maturi-jp.com/free/ 小山研究室4 年 307160 14 栗田 春香 1.研究目的① 防災用語 ・専門用語などの難解なものが多い ・住民にとって分かりにくい ・危機的状況が伝わりにくい 自然災害の適切な発信・認識 住民が防災用語をどの程度認識しているか、 どのようなイメージを抱いているか知る必要がある 学生・静岡県に在住する一般市民を対象とした 統計的検定の実施 防災用語のうち、とくに情報名称に対する リスクイメージを調査し、用語の改善を目指す 1.研究目的② 過去に行われてきた専攻研究 新しい情報提供の 仕組みの妥当性 言葉の リスクイメージ 認知度の程度による 言葉の印象の大きな差 (国吉,2010) (久家,2010) (柴田,2008)(谷村,2008) 回答者の母集団の偏り (学生,防災関連関係者) 統計的検定が不十分 本研究 学生だけでなく、静岡県に在住する 一般市民を対象とし、統計学的な検討を行う 2.研究方法① 研究方法 研究の流れ イメージ調査の手法を用い たアンケートの実 施 Microsoft Excel t検定:2群間の平均を比較 分散分析:3群以上の 平均を比較 統計解析ソフトSPSS t検定・分散分析によって 平均値間の有意差を検討 平均値の算出 データの分析・ま とめ ネットリサーチサービス を利用して調査 調査対象:大学生や一般市民 2.研究方法② アンケート調査の詳細 学生 静岡大学【静岡キャンパス】1年生(教育学部・人文学部・農学部、 理学部)を対象とし、2010年度前期の新入生セミナーの授業で 防災用語に関するアンケートを実施した。 使用した用語 実施日 学部・学科 6月17 日 教育学部 理学部 6月24 日 教育学部 7月1日 農学部 人文学部 7月8日 人文学部 実施人数 大雨注意報、大雨警報、 266人 洪水注意報、洪水警報、 (男:153人 女: 津波注意報、津波警報、 113人) 地震注意報、地震警報、 260人 緊急地震速報、 (男:125人 女: 135人) 東海地震の観測情報、 注意情報、予知情報、 273人 (男:121人 女: 警戒宣言、富士山噴火の 152人) 噴火警報、噴火周辺情報、 合計 991人 192人 噴火警戒レベル3~5 (男:117人 女: 男:516人 女:475人 (キーワード有・無) 75人) 2.研究方法③ ネットリサーチサー ビス ネットリサーチサービスとは? インターネット関連サービスで、インターネット を 介してアンケートに回答するもの ①調査所要時間が短い ②容易に多数の回答が得られ る 特徴 ③年齢層が限定(60,70代が少ない) ④回答者の偏りがある ⑤回答者の属性の選択が可能 ~~~ アンケートに回答 回答者 リサーチ依頼 ポイント贈呈 ネットリサーチ 回答結果報告 サービス 商品交換 利用者 2.研究方法④ ネットリサーチサー ビス ネットリサーチサービス調査の詳細 一般市民 2010年12月10日~14日に、静岡県に在住する一般市民に対し、 gooネットリサーチサービスを利用し、防災用語に関するアンケートを実施 した。 年代 人数 20代 114 30代 114 40代 114 50代 114 60代 60 70代 21 使用した用語 大雨注意報、大雨警報、洪水注意報、 洪水警報、津波注意報、津波警報、 地震注意報、地震警報、緊急地震速報、 東海地震の観測情報、注意情報、予知情 報、警戒宣言、調査情報、関連情報 富士山噴火の噴火警報、噴火周辺情報、 噴火警戒レベル3~5(キーワード有) 男女と各年代をほぼ同数と なるよう調査枠を設定1or2? 合計 537人 男:285人 女:252人 3.研究対象とした災害情報① 大雨・津波・洪水・地震・東海地震に使用される用語 と意味 大雨 津波 洪水 注意報 災害が起こる恐れがあるときに注意を呼びかける予 報 重大な災害が起こる恐れのあるときに警戒を呼びかける予 報 地震波が2点以上の地震観測点で観測され、最大 地震 緊急地震速報 震度が5弱以上と予測された場合に発令される 東 海 地 震 警報 観測情報 注意情報 予知情報 東海地震の前兆現象と判断できない場合 に発令され、住民は平常通りに行動する 東海地震の前兆現象の可能性が高い場合に 発令、同時に政府から防災の呼びかけが行われ る 東海地震発生の恐れがある場合に発令し、内閣総理大 警戒宣言 臣から警戒宣言が発表、本格的な防災体制が敷かれる 引用:気象庁Webの資料より作成 3.研究対象とした災害情報② 噴火警戒レベルの導入火山に使用される用語 レベルごとによ る キーワード の設定 引用:気象庁Webの資料より 4.アンケート内容① 研究対象とした災害用語と設問内容 設問:ある日あなたの住む町に気象庁から次の情報が発表されたとします。 その情報の想起確率,想起規模,切迫感のあなたの印象を書いて下さい。 ①どれくらいの確率で 発生するのか: 使用した語句 ①どれくらいの確率で 想起確率 大雨注意報、大雨警報 発生するのか:想 ②どれくらいの規模なのか:想起 起確率 洪水注意報、洪水警報 規模 ②切迫段階を5段階から選択 津波注意報、津波警報 1.全然切迫していな 地震注意報、地震警報、 い 緊急地震速報、東海地震の 2.それほど切迫して いない 調査情報、関連情報 3.どちらともいえな 注意情報、観測情報、 い 予知情報、警戒宣言、 4.かなり切迫してい る 富士山噴火の噴火警報、 他の用語と比較するため 5.非常に切迫してい 火口周辺警報、 にあえて架空の用語を使用 る 噴火警戒レベル3~5 (キーワード有) 4.アンケート内容② ネットリサーチのアンケート画面 質問する用語 想起確率、想起規模、 切迫段階などの 範囲を選択 5.アンケート集計結果① 大雨・洪水・ 津波 大雨・洪水・津波に関する想起確率と想起規模の平均値 45 学生 40 12.0 14 8 12 35 10想 起 さ 8 れ る 高 6 さ 30 想 起25 確 率20 6.8 15 4 10 5 一般市民 7 想 起 確 率 と 想 起 規 模 6 5 4 3 2 1 41.4 36.6 0 津波警報 津波注意報 2 0 確率 (%) 確率 0 大雨 大雨 警報 注意報 洪水 警報 洪水 注意報 量想起規模 津波 警報 津波 注意報 学生の津波に関する想起確率の平均値は、「注意報」より「警報」の 方が高い数値を示し、想起規模に関しては、2つの用語間に有意差が あった(5%水準)。一般市民では、共に「注意報」より「警報」の 方が高い数値を示し、それぞれ2つの用語間には、有意差があった (1%水準)。 5.アンケート集計結果② 地震 地震に関する切迫感の平均値 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 学生 平均値 緊急地震速報 地震警報 地震注意報 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 一般市民 平均値 緊急地震速報 地震警報 地震注意報 学生の地震に関する切迫感の平均値は、「緊急地震速報」が最 も高い数値を示し、「緊急地震速報」と「地震警報」、「緊急 地震速報」と「地震注意報」間に有意差があった(5%水 準)。一般市民では、全ての用語間に有意差があった(1%水 準)。 5.アンケート集計結果③ 東海地震 東海地震に関する切迫感の平均値 平 均 値 4 4 3.5 3.5 3 3 2.5 2.5 2 2 1.5 小 危険度 1 0.5 平均値 大 学生 小 危険度 大 1 一般市民 平均値 0.5 0 0 1 2 3 東海地震 東海地震 東海地震 観測情報 注意情報 予知情報 1.5 4 東海地震 警戒宣言 1 2 3 4 5 6 7 東海地震 東海地震 東海地震 東海地震 東海地震 東海地震東海地震 観測情報 注意情報 予知情報 警戒宣言 調査情報 関連情報 警報 学生の東海地震に関する切迫感の平均値は、用語間に危険度の大小があ るにも関わらず、平均値の差も、有意差もなかった。一般市民では、「東海地 震予知情報」と「東海地震警戒宣言」、「東海地震調査情報」と「東海地震関 連情報」を除く用語間にそれぞれ有意差があった(1%水準)。 5.アンケート集計結果④ 富士山噴火 富士山噴火に関する想起確率の平均値 50 学生 45 40 35 想30 起25 確20 率15 45.7 確率… 44.7 41.0 36.3 32.7 35.1 30.0 29.1 10 5 0 ( 噴 避レ ベ火 難ル )5警 戒 6 レ噴 ベ火 ル警 5 戒 ( 噴 避レ ベ火 難ル 準4警 備 戒 ) レ噴 ベ火 ル警 4 戒 ( 噴 入レ ベ火 山ル 規3警 制 戒 ) レ噴 ベ火 ル警 3 戒 噴 火 警 報 警火 報口 周 辺 5 4 3 2 1 0 一般市民 確率 ( 噴 避レ ベ火 難ル )5警 戒 ( 噴 避レ ベ火 難ル 準4警 備 戒 ) ( 噴 入レ ベ火 山ル 規3警 制 戒 ) 警火 報口 周 辺 噴 火 警 報 学生の富士山噴火の想起 確率では「富士山の噴火 警戒レベル5(キーワー ド有・無)」と「富士山 の火口周辺警報」「噴火 警報」、「富士山の噴火 レベル4(キーワード 有)」と「富士山の火口 周辺警報」 に有意差が あった(5%水準)。一 般市民では、「富士山の 噴火警戒レベル5(避 難)」と「噴火警報」を 除く用語にそれぞれ有意 差があった(1%水 準)。 7.まとめ① ・ 大雨 洪水 津波 大雨、洪水、津波に関する想起確率・想起規模に、そ れぞれ「警報」と「注意報」間に有意差があった (5%水準)。 地震 地震に関する切迫段階に、「緊急地震速報」と「地震 警報」と「地震注意報」間に有意差があり(1%水 準)、「緊急地震速報」が最も高い平均値を示した。 東海 地震 東海地震に関する切迫段階に、「東海地震調査情報」 と「東海地震関連情報」間に有意差はなかった。 富士 山 噴火 富士山噴火に関する想起確率に、「富士山の噴火警戒レベ ル5(キーワード有・無)」と「火口周辺警報」「噴火警 報」、「噴火警戒レベル4」と「火口周辺警報」間に有差 があった(5%水準)。 7.まとめ② ・ 今回の研究結果から判断すれば、以下の情報は、 次のように変更する必要があると考えられる。 東海地震 →一般市民では有意差は見られたが、学生には有意差がなかったため、 レベルを数値で示すような全ての人が理解できるような用語の工夫が必要であ る。 噴火警報 →架空の用語だが、リスクイメージが伝わりやすく、防災用語として適してい る。 なお、次の名称は、引き続き使用を継続しても良いと考えられ る。 気象、津波に関する「注意報」と「警報」 →広く知られている一般的な用語であり、 それぞれ望ましい想起規模・想起確率を示した。 緊急地震速報
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