スーパーボルケーノ 超巨大噴火の脅威

スーパーボルケーノ
超巨大噴火の脅威
著 I.N.ビンデマン(オレゴン大学)
総合科学4年 小山研究室
塩田圭佑
超巨大噴火とは
小天体の地球衝突に匹敵するほど破壊的で
発生頻度は10倍以上
 高温の火砕流によって周辺地域の自然環境
が瞬時に破壊される
 大量に噴出する火山ガスのため、長期にわ
たって地球規模での気候変動が起こる

イエローストーン国立公園(ワイオミング州)、
ロングバレー(カリフォルニア州)、インドネシ
ア・スマトラ島のトバ、ニュージーランド北東の
タウポ
北米を何度も襲った超巨大噴火
超巨大噴火のサイクル
巨大噴火を起こす巨大マグマ溜りは大量のマグ
マの供給によって生み出される。そのメカニズム
には2つある。
1つはマントル底部から上昇してくる高温の岩石
の塊(ホットプルーム)による地殻底部の加熱。
もう一方はプレート境界域で一方のプレートの下
に他方のプレートが沈み込む際、大量のマグマ
が発生する。
1.沈み込む海洋プレートの直上でマントルの
部分溶解が起き、マグマが生産される。
2.浅部マグマ溜りが成長するにつれて、その上の
地表は膨らみ、亀裂ができる。亀裂が成長して地
表に達し、その割れ目を伝ってマグマが地表に達
すると爆発的に噴出する。
3.マグマ溜りの成長によって大きな歪みを受けて
いた岩盤は砕け、巨大マグマ溜りの直径に相当
する巨大な火口を形成する。噴火によるマグマの
放出によって火山灰と火山ガス、火砕流が発生し
周囲数十キロにわたってあらゆるものを破壊し焼
きつくし灰で埋める。
4.超巨大噴火が終わるとカルデラという巨大な陥没
地形ができる。その後マグマ溜りが成長するとカル
デラ中央にドームが形成される。マントルから新た
なマグマの供給を受け再び巨大マグマ溜りが生ま
れるまでの数十万年の間、マグマ溜りから溶岩が
ゆっくり上昇し噴火を繰り返す。
微結晶が語る噴火の痕跡
イエローストーンで噴出した溶岩や火山灰に含
まれる結晶の組成を調べることでマグマ形成に
関して新たなことが分かった。
旧来 全岩分析…こぶし大の岩石を丸ごと測定し
て化学組成を調べる手法
近年 微小結晶分析…化学技術の発展によって
何千もの結晶が集まってで
きた岩石を高精度で分析で
きる手法


この10年地球化学者が特に注目してきたの
はジルコン(ZrSiO4)という火山性鉱物の微小
結晶で温度や圧力の変化に強く様々な変遷
があっても、もともとの組成を維持し続ける鉱
物である。著者はこのジルコンの特性を使っ
て地殻の初期の進化を調べた結果、イエロー
ストーンなどが超巨大噴火の新たな活動サイ
クルに入れば、破壊的な噴火が起きる数週
間前~数百年前から先駆けとなる小規模な
噴火が始まるということが分かった。
爆発的に噴出したマグマ

超巨大噴火が地球環境に及ぼす影響についても
微小結晶の分析結果は新たな驚きをもたらした。
ネブラスカ州西部では灰色の岩石から
なる分厚い層が見られる。噴火場所は
未特定だが、2800万年前に超巨大
噴火が起き、火山灰が急速に堆積し
て形成された。この火山灰の分析から、
成層圏でのオゾン層破壊が超巨大噴
火によって起こりうることが分かってき
た。
1200万年前、アイダホ州で起きた超巨大噴火の際の降
灰によって埋もれ骨になった動物である。ガラス粉末のよ
うな火山灰を吸い込み、それが肺に溜まっていった。肺を
かぶったエサを食べたため歯は擦り減っていき、こうして
動物達は緩慢な死を迎えた。火山灰中の有毒化学物質
は動物達の飲み水を汚染していたかもしれない。こうした
ことは人間にもいえるのではないだろうか。
ネブラスカ州北東部
アッシュフォール・
フォッシルベッド州立
歴史公園(左写真)





極端に加熱されたガスと火山灰が超音速で噴出し、巨
大な泡のような塊となって対流圏を突き抜け、高度50k
mの成層圏上層にまで達する。
巨大なマグマ溜まりの天井となっていた岩盤が崩壊し、
マグマの中に落ち込む。
溶岩と火山灰の中間段階の状態にある噴出物の流れ
である火砕流が周囲数十kmにあるものすべてを焼き
尽くす。火砕流は時速400kmで温度は600~700℃
に達する。
噴火地点から半径数百kmの地域は数日から数週間
にわたって灰色の火山灰が雪のように降り積もる。
200km圏内では太陽光はほとんど遮られ、真昼で
あっても夕暮れ時くらいの明るさにしかならない。
火山の冬は数年間?

大噴火で生み出される硫酸は酸性の雨や雪となっ
て地上に降るので寒冷地の万年雪や万年氷を調
べればその痕跡を見つけ出せる。
1996年、グリーンランドと南極で摂取した氷床コア
の分析から7万4000年前のトバでの超巨大噴火
に伴う硫酸のピークが発見された。この噴火は地
球の平均気温を5~15℃下げた。寒冷化は深刻
であったことは疑いないが氷床コアは硫酸が噴火
後わずか6年で消えたことが確認されている。
火山の冬が従来考えられていたよりも短い
火山ガスがオゾン層を破壊

超巨大噴火で噴出した膨大な量の火山ガスとの反
応で、成層圏のオゾン層が大量に破壊された。こ
のことは、気候の寒冷化よりも長期に及ぶと考えら
れている。
1991年に起きたフィリピン、ルソン島のピナツボ山
の噴火は20世紀で最大級だったがそれによってオ
ゾン層が3~8%減少したことが明らかになってい
る。ピナツボ噴火の100倍も規模が大きい超巨大
噴火ではとんでもないことが起こるにちがいない。
まとめ

先史時代の噴火で積もった火山灰中の微小結晶
の研究で環境に及ぼす影響について明らかに
なった。
超巨大噴火は地球規模の寒冷現象をもたらすが
考えていたほどは長くは続かないことが明らかに
なった。一方で火山ガスから化学反応による深刻
なオゾン層破壊が起こる危険性が高いことも明ら
かになった。