別冊日経サイエンス 地球大異変 巨大地震や超大型台風の脅威

別冊日経サイエンス
地球大異変
巨大地震や超大型台風の脅威
『関東平野の地下に潜む断層群』
高橋雅紀
小山研究室 4年
佐野 友絵
①2004年中越地震における関東地方の不思議な揺れ
②関東平野の基盤の構造と形状、深さ
③日本海の拡大と移動する日本列島
④震える超高層ビル
↓本震から約30分後のM6.3の余震の震度分布
※普通、震源から離れると
震度はだんだん小さくなる
震度が大きくなる帯状地域
◆関東平野の基盤の構造と形状・深さについて、より明
らかにするために3つのモデルがある
①ボーリングに基づくモデル
②重力測定に基づくモデル
③地震計によるモデル
①ボーリングに基づくモデル
◆地表から深い穴を掘っていって固い岩
にぶつかれば、そこまでの距離が基盤の
深さであるとみなす。
調査で到達できた最も深い基盤は3500mだったため、
それ以上深いところは現実的に難しい。
②重力測定に基づくモデル
◆一般に地下に軽いものがたくさんあれば、重力は小さく
なる。堆積層は基盤を構成する岩石より軽いので、堆積層
が厚いほど重力は小さくなる。その値の大小から基盤の深
さを計算する。
③地震計によるモデル
◆地震計で観測される地震波の測定データから、基盤の
深度を推定する。
どちらも基盤が深くなるほど推定が粗くなるので
実際の基盤に絨毯を被せたようにしか認識でき
ない。
ボーリング調査によるモデル
重力測定に基づくモデル
地震波観測から得たモデル
◆いづれも大まかに見ると、関東平野の西から東京湾
にかけて深い凹みが見られる。
関東平野の地下にある岩盤は大きく凹んでいる
⇒その上に分厚い堆積層が存在する
凹みの形状によって、地震の
揺れがかなり変わる可能性が
ある。
3つのモデルよりもさらに詳しく調べられる探査技術(範囲が限ら
れる)を使い凹みの形状を調べる。
◆特殊な車両を使って地面を揺らして、人工的な地震を起
こし、地層の境界面や基盤などから反射してくる地震波を
計画的に配置した地震計群でとらえ、地下の断面像を得
る方法。
得られた断面像の代表例(埼玉県朝霞~鴻巣)
◆明確な反射面は見える場所については、前に挙げた
3つのモデルとも一致する。
◆断面像を更に詳しく読み取るために関東平野周辺に
視点を置き、基盤をみる
◆周辺に山が多いのは、もともと関東平野と同じように地
下深いところにあった、古い地層や基盤が隆起し、侵食さ
れ、現在のように地表に露出しているからである。
関東平野の底を直接見なくても、周辺の山や丘
陵部を調べれば、間接的に探ることができる。
厚い堆積層を取り去ると・・・
◆数千mの断崖をもつ巨大な山や谷の連なり
◆谷の底には堅い岩盤の更に深部まで達する
断層が存在する
もしこの断層が動けば・・・
◆つまり、深い凹みに柔らかい
ゼリーが入ったようなもの
堆積層
岩盤(巨大な山や谷)
◆全体を揺らすとゼリー
の上は周囲よりも揺れ
が大きく、長く続く。
約1650万年前、地層が現れる。(大阪平野
が400~500万年前からの堆積なので3倍以
上も古い。)
 1650万年~1500万年前までの150万年間で
場所によっては非常に厚い地層が形成された。
 それ以降の地層はどこでも同じ厚さである

◆この150万年間は、地質学的にも地球物理学的にも
明らかになっている大変化が起きていた時期。
大変化とは
◆大昔、日本列島はユーラシア大陸の東のへりにくっついていた。
ーー古地磁気学ーー
岩石が冷えて固まる際、岩石はその時の地球磁場
が示す方向を記憶する。各地の様々な年代の岩石
について、その岩石が示す北の方向と、現在の北
の方向がどれだけずれているかを調べることによっ
て、日本列島がどのように移動したかわかる。
ユーラシア大陸の東の端に
ついていた日本列島は、海
の拡大につれて、全体とし
て南東に移動。
 東北日本と西南日本は観音
開きの2枚扉のように↺ฺ・↻
のような回転運動もした。

東北日本と西南日本の間に位
置する関東地方は、両側から
引っ張られ、基盤に多数の割れ
目が入って多数のブロックに分
断。
 基盤のブロックは割れ目に沿っ
て落ち込む。
 150万年の間にこのブロックに
クラーベンやハーフクラーベン
が形成。
 クラーベン・ハーフクラーベンが
埋められたあと、プレートの変
化に伴って、2度堆積層が形成。

◆ブロックの両端が正断層となって
垂直下方に落ち込んで形成される。
◆底が水平なので、堆積は均一に
進む。
◆片側の正断層に沿って、斜めに
落ち込んで形成される。
◆堆積層の断面が扇形になるので、
正断層に近くなればなるほど、堆積
層の厚さは増す。
産業技術総合研究所HPより
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/
pr2005/pr20050426/pr20050426.html
従来の解釈
新しい解釈
クラーベンハーフクラーベン形
成後の新しい堆積層との境界
富士山がすっぽり入る大き
さのハーフクラーベン
朝霞側にある正断層に
沿って基盤が落ち込ん
だハーフクラーベン
◆新しいモデルによる周期毎のシミュレーション
 一般の家屋が
影響を受ける
のは周期1秒
以下の揺れ。
 超高層ビルは
周期4秒の揺
れと共振し、大
きく、長く揺れ
続ける。
関東平野の形成史を考えると、朝霞‐鴻巣間
に見られたようなハーフクラーベンが、厚い
堆積層の下に多数眠っている可能性が高い。
 関東平野の基盤の形状を知ることは、地震
防災上、とても重要なことである。
 特に、超高層ビルでは、今すぐにでも基盤の
形状を調査すべきである。
