自由応募分科会 3 「東南アジアの政治的安定―理論と実証―」 中村正志(アジア経済研究所) 本分科会では、社会経済的発展・変化が著しい東南アジアを対象に、政治の安定性が保 たれたり損なわれたりするメカニズムを探求する。 東南アジア各国では、経済成長や国際環境の変化などを受けて、過去 20 年ほどのあいだ に新種の政党、政治家や市民社会組織が新たな政治アクターとして台頭した。かれらと旧 来型統治エリートとのインタラクションの結果、民主化や新国家の誕生、あるいは暴力を ともなう紛争、権威主義への揺り戻しなど、さまざまな政治的変化が生じた。一方で、旧 来の支配政党が政治制度のメンテナンスを施しながら独裁的権力を維持する事例もある。 本分科会の報告は、おもに政治体制レベルでの安定性を考察対象として、それが維持さ れたり損なわれたりするのはなぜかをあきらかにする。ひとつはタイを事例に、民主化か ら 10 年ほど経過した時点で民主主義体制が不安定化しがちなのはなぜか、そのメカニズム に迫る。もうひとつは、東ティモールを事例に、紛争後社会で政治的競争の非暴力化が達 成される条件を探る。さらに、ラオスを対象とする報告では、いまも現存する党国家体制 が、社会経済的な変化にともなう新たな政策課題にいかにして対応し、その安定性を維持 してきたのかをあきらかにする。 いずれの報告も、理論的枠組みを明示したうえで綿密な事例研究をおこなう。これによ り、各事例に関して、出来事の時系列の叙述(post hoc description)にとどまらない、 論 理の明瞭な因果的説明を提供する。同時に、各事例が内包する、他事例を理解するうえで も有意義な含意があきらかにされるであろう。
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