大地の躍動を見る 第5章 宇宙から地殻の動きを知る 小山研究室 3041-6016 塩田圭佑 宇宙技術のない時代の地殻変動調査 • 三角測量の時代 測地学とは 地球の形、大きさ、重力を決定する学問のこと。 測量というのはある場所の位置(緯度、経度、高度)を決定 する技術。 三角測量の原理 見通しのよい場所(山頂など)に「三角点」をいくつか置き位 置の分かる点A,Bから未知の地点Cの方向(角度)を知 ると三角形の一辺と両側の三角形ABCが決定されCの位 置ができる。 関東地震では関東地方の地盤が数メートルも動い ていることや、相模湾の中央を通る一本の破線を境 にして地盤運動のようすががらりとかわっていること が分かる。 関東地震を起こした断層は相模湾の海底にあった。 問題点 観測点は遠くまで見通しがきくように高い山に設置さ れていることが多く、機材を運ぶのが大変である。 観測点の天候が悪くて遠くの目標が見通せない時に は何日もそこで待機していなくてはならない。 関東地震後におこなわれた測量は完了するのに2年 もかかった。 宇宙技術を用いた測量 • GPSを用いて地殻の動きを知る 1990年以降「GPS」(全地球測位システム)が地殻変動 観測の主要な測量手段となる。GPSとは高度2万キロの 上空を周回する24個ほどの人工衛星から発射される電 波を受信して位置決定を行う宇宙時代の測量技術。 数ミリメートル程度という高い精度で求められる。 電波は雲を通すので三角測量のように天候に左右されな くなった。 • GPS測量の手法 手順1 多数の衛星の位置をあらかじめ軌道計算で決定して おく。観測日時を決めると衛星A,B,Cなどの位置 (緯度、経度、高度)が計算で求められる。 • 手順2 ● 観測点で衛星Aから発射された電波を受信し、衛星まで の距離を割り出す。衛星から送信するときに時刻情報を 電波にのせてやり、その電波を地上で受信したときの時 刻と比較する。二つの時間は、電波が伝わってくるのに 要する時間(伝搬時間)だけくいちがってくる。この伝搬時 間と電波の伝わる速さとの掛け算をおこなえば衛星と受 信点の間の距離が得られる。 手順3 衛星Aを中心とし手順2で求めた距離を半径とする球面 を考える。これまでの手順をふまえて別の衛星BやCに ついて行うとさらに球面が二つ描ける。測定に誤りがな ければ受信点は三つの球面が交わる。 1994年10月4日マグニチュード 8.1の北海道東方沖地震 根室では数十センチメートルも地 盤が東向きに動いている。 日本付近のプレート運動のよう す。 ユーラシアプレートを基準にして 測った相対的な運動量は、年間 数センチメートルぐらいである。 1995年~1998年の3年間で得られたGPS観 測 合成開口レーダーで地形と地形変化を測る 「干渉合成開口レーダー」 1キロメートル以下の間隔で細かく地盤の動き を知る技術で人工衛星や航空機を使って開 発された。 上空を飛ぶ衛星や航空機から地表に向かって電波を発射 しそしてその電波が地上にあたってエコー(反射)が衛星 に戻ってくるまでの時間を測る。 往復時間×電波の進む速度÷2 が衛星から地上の反射点までの距離をあたえてくれる。 衛星から地上の点を見たときの方向を「視線方向」 この向きに測った長さを「視線距離」という • 干渉合成開口レーダーには地上に特別な受 信機を置かなくても、数十ないし100メートル おきの地殻変動が分かる。 • 地震が起こる前の地表面のデータが必ず保 存されているので地表後の観測を比較して、 地震変動を割り出すことができる。 • 地震や火山噴火で生じる地球の表情の微妙 な変化をつかむことができる。 海面の凹凸を測る • 間接的に海底地殻変動を測る 人工衛星海面高度計測(アルティメトリー)手法 人工衛星からマイクロ波という電波を、衛星直下 の海面に向かって照射する。電波は海面で反射 して衛星に戻ってくるので、電波の往復時間を測 る手法。この往復時間に電波の伝わる速さを掛 けると衛星と海面のあいだの往復距離がわか る。 地上の衛星追跡観測と軌道計 算で、衛星の高度、つまり基準 面あるいは地球中心から衛星 までの距離をあらかじめ求め ておく。こうして計算で求めた 距離Aから、さきほど計算した 衛星から海面までの距離Bを 差し引くと、地球中心から海面 までの距離X、すなわち海面高 度が分かる。 まとめ GPS、合成開口レーダー、人口海面光度計 などの測定手段は宇宙技術であるがこの技 術が近い将来、海溝沿いの巨大地震の発生 メカニズムの研究に大きく貢献するものと期 待されている。 そのほかにもレーザーや宇宙の果ての電波 源を用いた地球計測など、最先端技術を応 用した地震や火山の研究が進められている。
© Copyright 2024 ExpyDoc