スライド 1 - 静岡大学 桑原義彦 研究室

4.給電線と整合回路
給電線:送信機とアンテナ,アンテナと受信機を結ぶ伝送線路
4.1 各種伝送線路
平行2線式線路,同軸線路,マイクロストリップ線路,導波管
TEM線路:伝送方向に磁界も電界もない(Hz=Ez=0)。
平行2線式線路,同軸線路
TE(Ez=0,Hz≠0)/TM(Ez≠0,Hz=0)線路:TEモードまたはTMモードを導波,
導波管
ハイブリッド線路:TEモードとTMモードが混在
4.2 TEM線路
4.2.1 平行2線式線路
d:線路導体の直径
D:線路間距離
εs:線路の周りの媒質の比誘電率
(比透磁率μ0=1)
線路の単位長あたりのインダクタンス
単位長あたりの静電容量
線路の特性インピーダンス
(無損失線路:2.23式)
0
L
2D 1
2D

loge
loge
C

d  s 0
d
1 0
2 D 120 1
2 D 276
2D

log e

log e

log10
  s 0
d

s
d
d
s
Z0 

2 D  s 0


   LC   0 loge
   0 s  0 


d log 2 D
c/ s v
e
v
d
c
s
代表的な特性インピーダンスは300Ω
線路が空気中にあるとき伝播速度は光速
例題4.1 d=2mm, D=10mmの平行2線式線路の特性インピーダンス
Z0 
276
s
log10
2D 276
20

log10
 276
d
2
1
電磁界が線路の外側に分布→線路外電波と干渉
周波数が高くなるにつれ電波放射による電力損失が増す
4.2.2 同軸線路
芯線が誘電体を介して外
側導体で遮蔽されており
放射損を少なくできる。
基本的にTEMモードである
が,周波数が高くなるとTE
モードやTMモードが発生する。
d:中心導体の直径,D:外側導体の直径,εs:内部誘電体の比誘電率
(比透磁率μ0=1)
線路の単位長あたりのインダクタンスと静電容量
Z0 
0
L
D 1
D
120
D 60
D 138
D

log e
log e 
log e 
2.303 log10 
log10
C
2
d 2 s  0
d 2  s
d
d
d
s
s

D 2 s 0


   LC   0 loge
   0 s  0 

2
d log D
c/ s v
e
v
c
s
d
3C2V(Z0=75Ω):
テレビ受信用,誘電体はポリエチレン,外側導体は網目(可とう性)
セミリジッドケーブル(Z0=50Ω):
マイクロ波,ミリ波用,誘電体はテフロン,外側導体は銅管(低損失)
例題4.2:d=2mm, D=10mm,εs=2.2の同軸ケーブルの特性インピー
ダンス
138
D 138
10
Z0 
s
log10
d

2.2
log10
2
 65
4.2.3 マイクロストリップ線路
準TEMモード
εs:誘電体基板の
比誘電率
h:誘電体基板の厚さ
W:ストリップ線路の幅
t:ストリップ線路の厚さ
εf:誘電体基板の実効比誘電率(<εs)
伝送損失は導体損失が支配的
平面回路上にフィルタなどが構成され,電子部品も表面実装できるの
で広く用いられる
例題4.3 マイクロストリップ線路の特徴
TEM波に近い伝送モード
特性インピーダンスは線路幅が広く,厚さが薄く,比誘電率が大きい
ほど小さくなる
周波数が高いほど損失が大きい
小型で軽量な電子回路が構成できる。
4.3 給電線の整合
スミスチャート
•インピーダンス表示
0〜∞の抵抗成分と-∞〜∞のリアク
タンス成分
•50Ωを接続したときの反射係数



Z L  Z0

Z L  Z0

  e  j
周波数1GHzでのインピーダンスプロット
③1pF:
Z in 
1
j

  j159.15
9
12
jC 2  1  10  1  10
50Ωで規格化して-j3.183
⑤1nH:
Zin  jL  2 1109 1109  j6.28
50Ωで規格化してj0.126
⑦20Ω+3pF:
Z in  20 
1
j
 20 
 20  j53.05
3
jC
2  3  10
50Ωで規格化して0.4-j1.061
⑧の周波数500-900MHzでのプロット
500MHz
50  jL
j 2  5  108  8.2  109
Z in 
1
 1  j 0.515
50
50
700MHz
50  jL
j 2  7  108  8.2  109
Z in 
1
 1  j 0.721
50
50
等レジスタンス円に沿って移動
Y0  1 / Z 0
で正規化
スミスチャートを使ったインピーダンス整合
回路Xに直列接続
•抵抗R: Zina  R  Rin  jX in
等リアクタンス円上を移動
•インダクタL: Zina  Rin  j( X in  L)
等レジスタンス円上を時計回りに移動
•コンデンサC: Zina  Rin  j( X in 1/(C))
等レジスタンス円上を反時計回りに移動
回路Xに長さLの
伝送線路を直列接
続
線路の電気長
  2  L / 
中心からの距離を
一定に保ったまま
時計回りに2θ移動
回路Xに並列接続
抵抗R: Yin  1/ R  Gin  jBin
等サセプタンス円上を移動
インダクタL: Yin  Gin  j(Bin  1/(L))
等コンダクタンス円上を反時計回りに移動
コンデンサC: Yina  Gin  j( Bin  (C))
等コンダクタンス円上を時計回りに移動
インピーダンスマッチングの例
例1 並列コンデンサと直列コンデンサ
AからBの移動:等コンダクタンス円上を時計方向に移動。
並列にコンデンサを挿入。移動量は0.56なので
0.56Y0  C  C 
0.56Y0
 1.78[ pF ]
9
2  1  10
BからCへの移動:等レジスタンス円
を反時計方向に移動。
直列にコンデンサを挿入。
移動量は2.04なので
2.04 Z 0 
1
1
C 
 1.56[ pF ]
C
2.04  2  10 9  50
例2 並列コンデンサと直列インダクタ
AからBの移動:等コンダクタンス円上を時計方向に移動。
並列にコンデンサを挿入。移動量は1.36なので
1.36Y0
1.36Y0  C  C 
 4.33[ pF ]
2  1 10 9
BからCへの移動:等レジスタンス円
を時計方向に移動。
直列にインダクタを挿入。
移動量は2.04なので
2.04 Z 0  L  L 
2.04  50
 16.23[nH ]
9
2 10
例3 伝送線路と直列コンデンサ
AからBの移動:伝送線路を挿入

89  35
 27 
2
BからCへの移動:等レジスタンス円を反時計方向に移動。
直列にコンデンサを挿入。移動量は2.87なので
2.87 Z 0 
1
1
C 
 1.11[ pF ]
9
C
2.87  50  2 10
4.3 給電線の整合
給電線の特性インピーダンスと負荷インピーダンスが異なるとき接続点
で反射が起こる。伝送効率の低下・信号ひずみ・絶縁破壊(大電力)
4.3.1 1/4波長整合回路によるインピーダンス整合
1-1’から負荷側を見たインピーダンス
負荷との接続点からdの位置での無損失
線路のインピーダンスは(2.38)式で表さ
れる。


Z (d )  Z 0
Z L  jZ 0 tan d

Z 0  j Z L tan d
d=λ/4のとき
d 
2  

 4 2


Z L  jZ 0 t an( / 2)
Z L / t an( / 2)  jZ 0
Z 02
 
Z in  Z    Z 0
 Z0
 


2
Z 0  j Z L t an( / 2)
Z 0 / t an( / 2)  j Z L Z L


Z 0  Z in Z L
とおくと給電線と負荷の整合を取ることができる。
例4.4 空気中にある平行2線式線路(導線の直径d=2mm,導体間隔
D=10mm)にR=145Ωを1/4波長整合回路を解して接続するときの整合
回路の特性インピーダンスを求める。
平行2線式線路の特性インピーダンス
2D 276
2 10
Z0 
log10

log10
 276
d
2
s
1
276
整合回路の特性インピーダンス

Z 0  Zin Z L  276145  200
4.3.2 集中定数回路による整合
特性インピーダンスZ0の給電線と純抵抗Rの負荷をLC回路により整合
平行2線式線路のZ0<Rにおける
条件式の誘導
Z in  j 2L 
Z 0  j 2L 
1
jC  1 / R
R
1  jCR
Z 0 1  jCR 
 j 2L1  jCR   R
 R  2 2 RCL  j 2L
実部と虚部が等しいとおく
Z 0  R  2 2 RCL
jCRZ 0  j 2L
CRZ 0
L
2
Z 0  R  2 2 RC
L
4.4
CRZ 0
 R   2 R 2C 2 Z 0
2
→
C
1
R
R  Z0
Z0
CRZ0 RZ0 1 R  Z 0
1


Z 0 R  Z 0 
2
2 R
Z0
2
平衡線路と不平衡線路の接続
平衡線路:一方の導体に正
方向の電流が流れると他方
の線路に同じ大きさの電流
が逆方向に流れる。
不平衡線路:中心導体と外
部導体の間を電磁界が伝播
する。外部導体の電位は0。
平衡線路と不平衡線路の接続(両者の特性インピーダンスは等しい)
同軸ケーブルの外部導体電流は平行2線式線路に電流I’を流す一方,
漏洩電流I”も流す。
平行2線式線路の不平衡電流,外部導体漏洩電流により不要放射が
発生。
バラン:漏洩電流I”を除去
バランが外部導体,同軸ケーブルの外部導体が内部導体の同軸線路
ができる。λ/4線路の終端が短絡されているので,接続点での入力イ
ンピーダンスは∞となりI”が流れない。

 2  
Z in    jZ 0 tan

4
  4
平行2線式線路には平衡電流が流れるようになる。
4.5 共用回路と電力分配器
4.5.1共用回路(diplexer)
1つのアンテナを2つ以上の周波数で共用するときに用いる。
f1は回路1を通過しアンテナに達するが回路2は阻止される。
f2は回路2を通過しアンテナに達するが回路1は阻止される。
LC直列共振回路:共振時インピーダンスは最小
LC並列共振回路:共振時インピーダンスは最大
例題4.7 f1=770kHz, f2=930kHz, C1=200pF, C2=220pFのときL1, L2,
Cp, Lpを求める。
回路1:f1=770kHzでの直列共振条件
jL1 

1
1 
  0
 j L1 
jC1
C1 

→  2 L1C1  1
=0.2136mH
f2=930kHzでの並列共振条件
Y  jC p 
1
 jC p 
jC1
0
2
1   C1 L1
→
Cp 
C1
0
2
1   C1 L1

1 

j L1 
C1 

C1
2001012
Cp  2

 4361012
2
 C1L1  1 2  930103   0.2136103  2001012  1
回路2:f2=930kHzでの直列共振
 2 L2C2  1 →
f1=770kHzでの並列共振
jC2
1
Y

0
2
jL p 1   C2 L2
→
jC2
1
 2
jL p  C2 L2  1
2
2


L
C


C2 L2 1
p 2
→
4.5.2 電力分配器
可逆性があり電力合成器としても動作する。
例題4.8 無損失8分配器に0dBmの信号を入力したとき,各ポートに
現れる信号電力。
10log10 1 / 8  9.03[dBm]