経済数学 (10/6) の略解 いずれも等差数列, 等比数列に馴染んでもらう問題でした. 問題 1.1–問題 1.3 は容 易ですので, 解答例は省略します. 数式番号の注意: (1.5) のように二つの番号がついているのは配布プリントの数式, (4) のように一つの番号がついているのは本プリントの数式に対応します. 問題 1.4 の解答例. まず, 数列 (1.4) が 1010 より大きくなる最初の項が 35 項目である ことを確認する. 数列 (1.4) を {an }∞ n=1 と書くことにすると, 一般項は an = 2n−1 で与えられたことに注意する. だから, この数列で初めて 1010 を越える項を求める には, 2n−1 > 1010 (1) を満たす最小の自然数 n を見つければよいことになる. 不等式 (1) で常用対数 log10 を取ると, log10 (2n−1 ) > log10 (1010 ). (2) まず, 常用対数の定義から log10 (1010 ) = 10. また, 対数法則 log10 (ab ) = b log a から, log10 (2n−1 ) = (n − 1) log10 2. 故に, 不等式 (2) は, (n − 1) log10 2 > 10, つまり, n> 10 +1 log10 2 となる. log10 2 = 0.3010 . . . を用いると, 10 + 1 = 34.2 . . . . log10 2 故に, 式 (1) を満たす最小の自然数は n = 35 となる. つまり, 数列 (1.4) で初めて 1010 より大きくなるのは 35 項目である. 次に等差数列 (1.2) で初めて 1010 を越えるのは 2500000001 項目であることを確認 する. 等差数列 (1.2) を {bn }∞ n=1 と書くことにすると, 一般項 bn は, bn = 4n − 3 と書くことができた. 故に, bn が 1010 を初めて越える項を見つけるためには, 4n − 3 > 1010 1 (3) を満たす最小の自然数 n を見つければよい. 不等式 (3) は容易に解けて, n > 2500000000.75 となる. これを満たす最小の自然数 n は n = 2500000001 である. 問題 1.5 の解答例. 定理 1.1 で a = 1, r = 2 とすれば容易に求まる. 答えは 2n − 1. 問題 1.6 の解答例. r = 1 の場合を考える. この場合, a = ar = ar2 = · · · = arn−1 と なるので, a + ar + ar2 + · · · + arn−1 = a | + a + a{z+ · · · + a} = na n個 となる. 問題 1.7 の解答例. 問題 1.7 の上に書いてある公式を用いる. つまり, c 円を年利 r の 複利計算で預けたとき, n 年後には c(1 + r)n 円になることに注意する. c = 10000, r = 0.05, n = 5 を当てはめると, 10000 × 1.055 となる. これを電卓で計算すると, 12762.8 . . .. 小数点以下を切り捨てるので, 答えは 12762 円となる. 問題 1.8 は他の問題がすべてできるようになってから取り組んでください. こちら が望んでいる解答例を下に記します. 問題 1.8 の解答例. c 円を年利 r の複利計算で n 年預けた結果, c(1 + r)n 円になる (4) という事実を n に関する数学的帰納法で証明する. n = 1 のとき, 1 年目は c 円に対して利息がつく. 利率は r だったので, 1 年目の利 息は cr 円になる. よって, c 円を 1 年預けると c + cr = c(1 + r) 円になる. よって, n = 1 のときは (4) は正しい. n = k のとき, (4) は正しかったとする. つまり, 最初 c 円を預けたとすると, k 年目 には c(1 + r)k 円になっていたとする. すると, (k + 1) 年目につく利息は c(1 + r)k 円 に対し計算される. つまり, (k + 1) 年目につく利息は, {c(1 + r)k } × r 円になる. 故 に, c 円を (k + 1) 年預けると, c(1 + r)k + {c(1 + r)k } × r = c(1 + r)k × (1 + r) = c(1 + r)k+1 2 円になる. つまり, n = k のとき (4) が正しいと仮定すると, n = k + 1 のときも (4) は正しいことが分かった. よって, 数学的帰納法により, すべての自然数 n に対し (4) が正しいことが分かっ た. 初項 a1 = a, 公比 p の等比数列 {an }∞ n=1 は, a1 = a, an+1 = pan という漸化式で特徴づけられます. 実際, 少し考えれば分かるように, an+1 = pan は 前の項 an に p をかけることで次の項 an+1 を作る, ということを意味しています. こ れを知っていると, 次のような解答も出来ます.1 問題 1.8 の別解. c 円を年利 r の複利で預けたとき, n 年目に cn 円になっていたとす る. プリントにあるように, c1 = c(1 + r) である. また, (n + 1) 年目は cn 円に利率 r の利子が付くので, (n + 1) 年目の利子は rcn 円である. 故に, cn+1 = cn + rcn = (1 + r)cn . 故に, {cn }∞ n=1 は初項 c(1 + r), 公比 1 + r の等比数列なので, cn = c(1 + r) × (1 + r)n−1 = c(1 + r)n . 1 少し考えれば分かりますが, 漸化式による解答と帰納法による解答は, 本質的に同じことをやって います. ただ, 問題 1.8 のような証明問題ではなく, c(1 + r)n という答えを計算から導出できるという 意味では, 漸化式による解答の方が優秀かもしれません. 3
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