第5章 伝送理論と伝送技術 5.1 電気通信設備の概要 5.2 アナログ伝送方式 5.3 ディジタル伝送方式 5.4 データ伝送方式 5.5 伝送線路 5.6 漏話・雑音など 5.1 電気通信設備の概要 5.1.1 5.1.2 5.1.3 5.1.4 5.1.5 率 5.1.6 5.1.7 電気通信設備の分類 電気通信システムの設備構成 電気通信設備の基本構成要素 伝送路に要求される特性・機能 冗長度の考え方と平均ビット誤り 信号電力 変調速度と伝送速度 5.1.1 電気通信設備の分類 サービスの対象 公衆通信 企業通信 情報種別 電話網 音 声 データ (文字・図形) 画 (文字・図形) 像 (動画) データ通信システム 画 像 通 信 シ ス テ ム ビデオテックスシステム ファクシミリ通信システム テレビ会議システム 企 業 通 信 シ ス テ ム 基本的用語 電気通信(電気通信事業法) 「有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響または映 像を送り,伝えまたは受けることをいう」 有線電気通信 「送信の場所と受信の場所との間の線条その他の導体を利用 して,電磁的方式により,符号,音響または映像を送り,伝え または受けることをいう」 5.1.2 電気通信システムの設備構成 通信衛星 衛星通信 干渉 干渉 マイクロ波 通 信 電話線 伝送設備 交換設備 支柱 予備伝送路 端末設備 電話 ファクシミリ パソコンなど 通信用 電源設備 伝送路 平衡対ケーブル 同軸ケーブル 光ファイバケーブル 通信用 電源設備 5.1.3 電気通信設備の基本構成要素 ①端末設備 ●情報を電気信号または光信号に変換して通信回線に送出する送信機 ●伝送路から受けた信号を元の情報に復元する受信機 ②伝送路設備 ●電気信号または光信号により情報伝達を行う設備。 ●無線通信路,線路,中継器等を含む。 ③交換設備 ●多数の端末設備からの接続要求に応じて着信端末までの 接続経路を設定する機能を有する設備。 端末の定義(電気通信事業法) 「電気通信回線設備の一端に接続される電気通信設備」 線路の定義(有線電気通信設備令) 「送信の場所と受信の場所との間に設置されている電線及びこれに係る中継器その 他の機器(これらを支持し,又は保護するための工作物を含む)」 5.1.4 伝送路に要求される特性・機能 ① ② ③ ④ ⑤ 低損失 広帯域 漏話が少ないこと 低雑音 高信頼性 5.1.5 冗長度の考え方と平均ビット誤り率 (1)等確率の場合の情報エントロピー k :文字の種類数 n :文字数 (等確率の場合) 情報量 log2 k n n log2 k 情報エントロピー=平均情報量 H max n log 2 k log 2 k n (2)等確率でないときの情報エントロピー k :文字の種類数 n :文字数 pi :文字 i の出現確率 (等確率でない場合) 情報エントロピー k 1 1 1 H pi log2 pi H max log2 log2 log2 k k k i 1 i 1 k k (3)相対エントロピーと冗長度 相対エントロピー 冗長度=1-相対エントロピー H H max H 1 H max (4)平均ビット誤り率 時間 t 伝送速度 v 誤りビット E 平均ビット誤り率= E vt [例] 伝送速度2,400bits/sの回線で符号誤りを 50分間測定して36bitsが誤っていた。 36 5 10 6 ( 5 10 4 %) 平均ビット誤り率= 2400 60 50 5.1.6 信号電力 (1)損失 損失(減衰量)Lの表現 Pout L 10 log10 Pin [dB] 入力 信号電力 P in 回線網 Pout 出力 信号電力 基準電力を1mWとして比較した場合を絶対レベル[dBm]という。 Pout [mW] Lm 10 log10 [dBm] 1 [mW] [例] Pout 1 [mW] のとき損失の絶対レベル Lm 0 [dBm] 絶対レベル0の損失のときの電流・電圧 損失の絶対レベルが0のとき Pout 1 [mW] 通信回線では600Ωが標準インピーダンスであるため 2 V P I 2Z , P Z 3 P 1 10 I2 1.67 106 Z 600 V 2 PZ 1103 600 0.6 から I out P Z 1.67 106 1.29 [mA] Vout PZ 0.6 0.775[V] 損失とインピーダンス 電流・電圧によって損失を表現 Pout I ou2 t Z out L 10log10 10log10 2 Pin I in Zin 2 P V out out Z out または L 10log 10 log 10 10 Pin Vin2 Zin Zout Zin のとき I out Vout L 20 log10 20 log10 I in Vin 計算例(1) 1回線あたりの平均電力がー20dBmのときの1,000回線の電力 10 log10 P1 20 log10 P1 2 P1 102 Ptotal P1 1,000 10 したがって 10log10 Ptotal 10log10 10 101 10 計算例(2) -3dBmと0dBmの信号を合成する際の電力和 10 log10 P1 3 log10 P1 0.3 P1 100.3 0.5 [mW] 10 log10 P2 0 log10 P2 0 P2 100 1.0 [mW] 3 P1 P2 0.5 1 1.5 2 3 10 log10 10 log10 3 10 log10 2 4.77 3.01 1.76 [dBm ] 2 (2)信号対雑音比(SN比) 信号のエネルギーと雑音のエネルギーをデシベル表示したもの。 対数表記なので,SN比の計算は単純になる。 PS SN比 10 log10 PN [dB] [例]信号レベルがー15[dBm]で到着する雑音が ー45[dBm]のとき,SN比は次のように単純計算できる。 SN比 15 (45) 30 [dBm] [例2]信号レベルがー15[dBm]で到着する回線端のSN比が ー45dBmのとき,雑音レベルは次のように単純計算できる。 [dBm] SN比 15 45 60 5.1.7 変調速度とデータ伝送速度 (1)データ伝送速度と通信容量 伝送速度=単位時間あたりに伝送される情報量(ビット/秒) 信号速度ともいう。 伝送速度の最大値=通信容量 S : データ伝送速度 m 1 S log2 ni [bits/s] i 1 T i m : 並列伝送の場合の伝送路の数 Ti : i 番目伝送路のパルス幅 ni : i 番目伝送路の1パルスの状態数 計算例(1) 直列伝送のとき S : データ伝送速度 m 5ms 1 : 1 T : 5ms 0 1 0 n : 0と1で1パルスの状態数=2 1 1 S log 2 2 1 200 [bits/s ] 3 T 5 10 計算例(2) 最高周波数4kHzとしたとき, 各標本値8ビットのPCMで伝送する場合, 伝送路が必要とする信号伝送速度 (標本化周波数は最高周波数の2倍) 標本化周波数 4 2 8 [kHz] これを8ビットで転送するので 信号伝送速度 8 8 54 [k bits/s] (3)帯域圧縮 通信路を介して送受信されるデータを圧縮して必要な帯域を減らしたり, 画像や音声の品質を落としてビットレートを下げること。 ①多値符号化 1符号長で3値以上に対応させ,1符号長で2ビット以上の情報を伝送。 ②音声用の圧縮 ・適応型PCM(APCM:Adaptive Pulse Code Modulation) ・適応型差分PCM(ADPCM:Adaptive Differential Pulse Code Modulation) ・ベクトル和・励振線形予測(VSELP:Vector Sum Excited Linear Prediction) ・PSI-CELP(Pitch Synchronous Innovation Code Excited Linear Prediction) ③画像の圧縮 ・JPEG(Joint Photographic Experts Group) ④動画の圧縮 ・MPEG(Moving Picture Experts Group) (3)変調速度 変調 :アナログ信号の振幅,周波数,位相を変化させること 変調速度:変調が1秒間に何回行われるか 1 S T [baud:ボー] B : 変調速度 T : 変化点から変化点までの時間 [注意] 1変調で2つの状態(0か1)を表す場合,伝送速度と変調速度は一致する。 1変調で2つ以上状態,たとえば8個の状態を表すことができる場合, 8個の状態は3ビットで表現できるから 変調速度×3=伝送速度 となる。 計算例(1) 2値符号の情報を周期10msのパルスに乗せて 伝送するときの変調速度 10ms 1 0 1 0 1 1 S log 2 2 1 100 [boud ] 3 T 10 10 計算例(2) 1符号で8つの状態が存在する方式 (例えば8相位相変調方式:後述)で, 4800 bits/sを伝送するときの変調速度 8 23 3 [bits] 4800 B 3 B 4800 3 1600[baud]
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