エネルギ変換工学

エネルギ変換工学 第11回講義資料
燃料電池、太陽光発電の原理
の現状と問題点の調査
2S12番 谷藤隆彦
2S08番 澤田紘志
監修 木下祥次
燃料電池(fuel cell)とは
電気化学反応によって電力を取り出す装
置(化学電池)のひとつ
化学電池:エネルギーを化学反応によって直接直流
電力に変換する電池(電力機器)
物理電池:光のエネルギーや熱エネルギーなどの物
理作用を利用した電池→太陽電池など
生物電池:生物活動の結果得られる化学エネル
ギーを利用した電池 →酸素電池、微生物電池 など
電池の種類
化学電池の発電原理
亜鉛を希硫酸(または食
塩水)に入れる
→亜鉛がマイナスの性
質を持つ電子を残して溶
けだし、亜鉛板はマイナ
ス電気を帯電
→銅板はほとんど溶け
ずにプラスとなる
→銅から亜鉛に電流が
流れる
イタリアのボルタが発明:「ボルタ電池」
燃料電池の発電原理
水の電気分解:水に外部から電気を通して水素と酸素に分解
燃料電池:水素と酸素を電気化学反応させて電気を作る
イギリスのグローブ卿が発明:「燃料電池」
燃料電池の発電原理
電解質:電気を通すために水に加えるもの
純水は非常に電気を通しにくいので、実験では通常、水に水酸化ナトリウムなどを加える
燃料電池の種類
実用化されている燃料電池のシステム
リン酸形燃料電池
・ビルなどに設置し、都市ガスを原料にして運転さ
れる発電装置で、外見は物置ほどの箱型パッ
ケージタイプ
・床や地面に据え付けて、都市ガスの配管を結び
付け、発生する電気の配線と熱(温水や蒸気)の
配管を引出せば運転可能
燃料電池の特徴
・長く使える(乾電池のように使い捨てではない)
→都市ガスから取り出した水素と空気中の酸素を電気
化学反応させて電気を作るので、水素(都市ガス)と酸素
(空気)を送り続ければいつまでも発電することができる
・都市ガスの新しい利用法
→燃料として都市ガスを利用するが、今までの都市ガス
の使い方とはまったく異なり、ガスを燃やすのではなく電
気化学反応で電気エネルギーを作るため、燃やすことに
よるCO2の発生がない
燃料電池の特徴
・発電の効率が高い
→電気化学反応によって燃料の持つ化学エネルギー
を直接、電気エネルギーに変換するため、 今までの発
電のようにエネルギーの形を何度も変えることによって
発生する損失が少なくて済む
燃料電池の特徴
・排熱も利用できる
→燃料電池は、水素と酸素が反応する時に出る熱でお
湯をわかすこともできる 使用する都市ガスのエネル
ギーの約40%が電気に、約40%が温水や蒸気に、合計
すると約80%が有効に利用でき、省エネルギーの点で
優れた装置
燃料電池の特徴
・環境にやさしい
→水素と酸素が反応して発電した結果、生まれる物質は
水のみ
水素を作る際に二酸化炭素が発生するが、総合効率
が高く、同じ電気・熱を使った場合の発生量より少ない
(火力発電所からの電力供給とガス給湯器を使う場合と
比べ、二酸化炭素排出量は44.2%削減 (2005年時点))
・低騒音、低振動
→燃料電池には、エンジンやタービンがないので、騒音
や振動が発生しない
今後の課題
・水素生成の問題
(技術がまだ不十分、まだまだ非効率的な生成、
搬送時の危険性、ボンベの強度確保、など)
・水素供給整備の新設→高コスト
・実用化された家庭向けの燃料電池はいずれも
発電装置とお湯をためるタンクを戸外に設置す
る必要がある→マンションへの設置は難しい
・水素爆発の危険性
例題
都市ガスを利用した家庭用燃料電池システムは、従来の
火力発電などに比べCO2の削減効果が40%あると仮定し
た場合、CO2 を月平均400kg排出する家庭に燃料電池を
設置した場合、CO2は年間何kg削減できるか求めよ。
また、2リットルペットボトル何本分に相当するか求めよ。
(ただし、CO2 1kg当たり509リットル)
例題
都市ガスを利用した家庭用燃料電池システムは、従来の
火力発電などに比べCO2の削減効果が40%あると仮定し
た場合、CO2 を月平均400kg排出する家庭に燃料電池を
設置した場合、CO2は年間何kg削減できるか求めよ。
答え) 400×12×0.4=1920kg
また、2リットルペットボトル何本分に相当するか求めよ。
(ただし、CO2 1kg当たり509リットル)
答え) 1920×509÷2=488640本
参考文献
ウィキペディア:燃料電池
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E6%96%99%E9%9B%BB%E6
%B1%A0
SANYO 物理電池とこれからの電池
http://www.sanyo.co.jp/cs/academy/buturi/buturi.html
電池の豆知識
http://material.miyazaki-c.ed.jp/ipa/dentinomametisiki/index.htm
日本ガス協会
http://www.gas.or.jp/fuelcell/contents/01_1.html
http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/netukagaku2.html
太陽光発電
太陽光発電の現状
太陽光発電の現状と今後の見通し
一般的な単結晶シリコン太陽電池
・p型半導体とn型半導体を接合
・電子と正孔が再結合して
空乏層を生成
・フェルミ準位が一致。
エネルギー段差が生じる
F  eE
F  eE
光が照射されると、光のエネル
ギーによって価電子帯の電子
が伝導帯に遷移し、内蔵電場に
よって力が加わり電子が流れ、
電流となる
問題
波長λ=800[nm]の光のエネルギーは何[eV]か?
E  h

  c/


E  6.6261034  3.0 108 / 400109 / 1.6021019  1.551[eV ]
太陽電池の変換効率
単結晶シリコン太陽電池
最大で
25%
住宅用太陽電池に関しては15%程度
変換効率低下の原因
① 長波長光の透過による損失 約44%
② 短波長光の吸収時のエネルギー損失 約11%
光
②
Eg
①
伝導帯
表面での光の反射、
電極での損失
禁制帯
変換効率の最大
理論値は
30%程度
価電子帯
太陽光発電を普及させるためには・・・
①太陽光パネルのコストを抑える
②変換効率を高くする
ということで・・・
太陽光パネルの低コストを実現するためにはどうすればいい
か?
変換効率を高くするにはどうすればいいか?
コストを低くするための太陽電池
・有機薄膜太陽電池
・CdTe太陽電池
有機薄膜太陽電池
有機半導体を用いた太陽電池
有機材料:炭素原子を構造の基本骨格にもつ化合物
軽量化、大面積化、フレキシブルな太陽電池が可能
有機材料を使えばコストも大幅に安く済む。
問題点
デバイス特性が無機半導体に比べて低い
デバイス特性が低い原因
空間電荷層の厚さ
シリコン太陽電池:ミクロンオーダー
有機半導体の太陽電池:ナノオーダー
空間電荷層の厚さ=内蔵電場の大きさ
原因その① 内蔵電場の大きさEが小さい
原因その②
電流密度 J  qpE
物質によって決まる固有の値
のキャリア移動度μが小さい
で定義されるので、μとEが小さければJ
は小さくなる
特性改善方法
原因①の改善:空間電荷層(i層)の厚さを大きくする
内蔵電場が大きくなり電子の流れが増加
特性改善方法
原因②の改善:キャリア移動度を大きくする
太陽電池に最適な材料を見つけるしかない
P型:導電性ポリマー
N型:サッカーボール型の構造を持つ分子として有
名な、フラーレンが最適であることが最近わかった
まだまだ改良の余地がある
CdTe太陽電池(化合物太陽電池)
カドミウムテルル(CdTe)をp型半導体に、硫化カドミウム(CdS)を
n型半導体に用いた太陽電池。
今までは・・・
p型物質として用いられている銅の化合物が不安定であること
から、劣化の問題が挙げられていた。
毒性があるため、危険とされていた。
銅の化合物を用いないCdS-CdTeの接合が開発された
・元素自体のコストもほとんどかからない。
・厚さが薄くても光を吸収できるため、薄くて変換効率も高い
優れもの
・常温常圧で精製可能
変換効率を高くするための太陽電池
・量子ドット太陽電池
量子ドット太陽電池
半導体の量子ドットを利用した太陽電池
一般的な半導体
量子ドット半導体
伝導帯
禁制帯
価電子帯
伝導帯
禁制帯
価電子帯
・出来上がった材料から微細加工する
・材料の結晶成長時に形成する
量子ドット太陽電池
伝導帯
ギ電
ー子
の
エ
ネ
ル
禁制帯
価電子帯
量子力学より・・・
この空間に電子を閉じ込めると、
電子は離散的なエネルギー準位
をとる
伝導帯と価電子帯にミニバンドが構
成される
価電子帯から伝導帯への遷移パターンが多くなる
光の吸収できる波長が増え、光の損失が減少する
参考文献
• ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%9
B%BB%E6%B1%A0#.E5.8C.96.E5.90.88.E7.89.A9.E7.B3.BB
• トコトンやさしい太陽電池の本
千野俊猛 日刊工業新聞社 2007
• 太陽エネルギー技術
佐藤政次 オーム社 2007
• 日本結晶成長学会誌 Vol.33 No.2
自己組織化量子ドット超格子と高効率太陽電池への応用 岡田至崇