本日の内容 回数 半導体工学 名城大学 理工学部 材料機能工学科 岩谷 素顕 項目 電子統計1 次元の制御と状態密度 真性半導体 2 電子統計2 不純物半導体 n型 p型 3 電気伝導 移動度 ホール効果 拡散係数 アインシュタイン関係式 4 ダイオード1 ポアソン方程式 バンドダイヤグラム 空乏層 空間電荷層 拡散電位 階段接合 キャリア寿命 5 ダイオード2 傾斜接合 接合容量 逆方向飽和電流 温度特性 電子雪崩 6 バイポーラトランジスタ1 エミッタ効率 ベース輸送効率 ベース接地電流増幅率 7 バイポーラトランジスタ2 エミッタ接地電流増幅率 アーリー効果 8 バイポーラトランジスタ3 周波数特性 9 サイリスタ ターンオン条件 GTO 10 金属と半導体の接触 ショットキー障壁 オーム性接触 リチャードソン定数 11 FET1 MESFET 静特性 高周波特性 12 FET2 MOSTFETのバンドダイアグラム 静特性 Nチャネル Pチャネ ル 13 FET3 エンハンスメント ディプレッション CMOS 14 IMPATT、PD、太陽電池 LED、LD 衝突イオン化、光吸収、量子効率、フィルファクター、タンデム セル 直接遷移、間接遷移、発光色とバンドギャップ、反転分 布、キャリア閉込、光閉込、ファブリ・ペロー共振器 2-2 2-1 まずは実際のデバイスから pn接合ダイ オードの特性について 内容 1 TTL 設問1:下記の回路でSi pn接合ダイオード間の電圧をオシロ スコープでモニタしたときの波形を図示しなさい。 Circuit1-Transient-6-Graph 0.0 200.00u 400.00u 600.00u 800.00u 1.00m Time (s) 1.20m 1.40m 1.60m 1.80m 5.00 p 4.00 n 3.00 2.00 時間 1.00 0.0 -1.00 -2.00 -3.00 -4.00 -5.00 Circuit1-Transient-4-Graph 0.0 (V) 5.00 200.00u +5V 400.00u 600.00u 800.00u 1.00m 1.20m Time (s) 1.40m 1.60m TIME -1.000 v(IVm1) 1.80m オシロスコープ オシロスコープ -1.000 v(IVm2) -1.000 D1 D(TIME) -1.000 D(v(IVm2)) -1.002 4.00 3.00 IVm1 時間 2.00 8.20n 1.00 0.0 0Si pn接合ダイオード V1振幅:5V -1.00 -2.00 -3.00 -4.00 -5.00 TIME 小型整流用ダイオード 2-3 I-V特性 -5V -1.000 v(IVm1) -1.000 D(TIME) -1.000 D(v(IVm1)) -1.000 2-4 赤色発光ダイオードのI-V特性 ダイオードの応用例 2.0V 立ち上がり電圧 2-5 2-6 R1 1K 緑色発光ダイオードのI-V特性 青色発光ダイオードのI-V特性 2.5V 立ち上がり電圧 2.8V 立ち上がり電圧 2-7 2-8 ダイオードの立ち上がり電圧は、何に よって決まるか? 太陽電池 正孔がたくさんある - Si系太陽電池の場合は0.6~0.7V - - - - 2-9 http://eco.nikkeibp.co.jp/em/ecolabo/47/02.shtml B,Al,Gaなど 2-10 + - + + - p型 + + + + Si 電子のエネルギー フェルミエネル ギーの位置は? + n型 真性半導体の考え方から 伝導帯下端Ec フェルミエネルギー Ef 電子や正孔がどれくらいたまるのか? 価電子帯上端Ev p型 2-11 n型 2-12 + + pn接合におけるエネルギーバンドダイヤグラム エネルギー的にどのよう に分布しているのか? + + + - - - - + - - - - Si 電子がたくさんある + P,As,Sbなど 電気伝導度の定義(自由電子が伝導に 寄与する場合) J E 状態密度 一次元結晶、二次元結晶、三次元結晶における電 子のエネルギーバンドの状態密度のエネルギー依存性の概 略を図示しなさい。 3次元結晶の状態密度: J: 電流密度、σ:電気伝導率、E:電界 en Z 3D ( E ) 2次元結晶の状態密度: Z2D (E) 1 m 2 Z1 D ( E ) 2m 1 E e: 電子の素電荷、n:自由電子濃度、μ:移動度 n Z ( E ) f ( E )dE 1次元結晶の状態密度: Z (E );状態密度 2-13 f (E ) ;分布関数 8 2 1.5 m E h3 m:質量、h: プランク定数、:ディラック定数、E:エネルギー 2-14 解答例 Z(E) 1次元 3次元 2次元 E 2-16 2-15 分布関数(電子の性質) 1.電子はパウリの排他律に従う→同一量子状態には1つの粒 子のみ→それぞれの粒子は同一量子状態を占有してはいけな い。 例えば、あるエネルギーにおいて、粒子数2、状態数が3のとき、 ○|○| ○| |○ |○|○ フェルミ・ディラックの分布関数 ある温度において、電子がどのように結晶中のエネルギー状 態(定在波の状態)を占有するか? フェルミ・ディラックの分布関数 これだけの可能性がある。 2.粒子同士の区別がない。 A|B| = B|A| 2-17 マメ知識: 金属の場合はマクセル・ボルツマン分布関数 これらは区別しない。 2-18 演習:横軸E、縦軸f(E)として以下の式の概略図を 書きなさい(Tの変化を入れて書くこと) フェルミ・ディラックの分布関数 電子の存在確率: f FD ( E ) 1 E Ef exp k BT f FD ( E ) 1 1 E Ef exp k BT 1 Ef:フェルミエネルギー kB:ボルツマン定数 T:絶対温度 フェルミエネルギーEf:フェルミ・ディラックの分布関数が1/2にな るエネルギー 2-19 2-20 演習; 以下のバンド図のような半導体がある場合、伝導帯 電子と価電子帯正孔のどちらが有効質量は重いか?また 理由を答えなさい。 キャリアの有効質量:m* 有効質量:結晶内の電子の運動をきめる見かけの質量。 有効質量は以下の式で表される。 エネルギーE E 2 k 2m m 2 E k 2 * 2 をkで2回微分すると 2 m* 伝導帯 したがって、極率の小さい価電子帯正 孔の方が極率の大きい伝導帯電子の 方がより有効質量は重い 波数k 有効質量mは、E-k関係の曲率で決まる。 (但し,k=0付近のみ) 2-21 2 2E k 2 価電子帯 2-22 演習; 伝導帯電子と価電子帯正孔の状態密度の概略を横 軸Z(E)、縦軸Eで書きなさい。ただし、伝導帯の基準はEgを 始点に、価電子帯は0を始点に正孔なのでプラスマイナス は反転しているとして書きなさい。 8 2 *1.5 m E ヒント: Z 3 D ( E ) h3 エネルギーE 伝導帯 0Kの時のバンド図 エネルギーE 電子がいないため動かない 伝導帯 禁制帯 バンドギャップ Eg Eg N個のシリコンからなる 無添加シリコン結晶の場合 T=0 [K] 真性半導体では 電子はゼロ個 波数k 電子は合計4N個 波数k 価電子帯 2-23 価電子帯 2-24 (3s)2(3p)2→ sp3混成:4個 伝導帯の電子濃度 価電子帯の正孔濃度 E E 伝導帯 n E h h 熱的励起 光励起 etc. c 伝導帯の電子濃度 価電子帯の正孔濃度 真性半導体の場合 E E E=0 伝導帯 3次元結晶の場合、 定在波の密度は E に比例 Ef Eg k p 電子(正孔)の定在 波の密度 k E=0 価電子帯 電子が存在 Ze(E-Eg) 真性半導体の場合 伝導帯電子密度n =価電子帯正孔密度p 2-26 エネルギーE me: 電子の有効質量 kB:ボルツマン定数 伝導帯の総電子数 真性半導体における電子と正孔のエネルギー状態密度 エネルギーE n Z ( E ) f ( E )dE E エネルギーE Eg 伝導帯 伝導帯 E=Eg T上昇 T=0 波数k 2-27 価電子帯の総正孔数 E 伝導帯 1.5 k E 0 k 価電子帯 Ef 2mh k BT k BT 2 e h2 Nv e Eg E f k BT Eg E f k BT 伝導帯 真性半導体の場合 伝導帯電子密度n 熱的励起 =価電子帯正孔密度p n=p=niと置くと 光励起 etc. n 0 1.5 E=0 Nc e dE 1 真性キャリア密度ni 正孔の存在確率 8 2 3 1 mh 2 E 1 E EF dE h3 e k BT 1 禁制帯幅Eg e 2-28 p Z ( E ) 1 f ( E )dE 1 E EF k BT Nc:伝導帯の実効状態密度 分布関数 f(E) E=Eg 8 2 3 me 2 E E g h3 2me k BT 2 e 2 h 価電子帯 状態密度関数 Z(E) Eg 禁制帯幅Eg E=0 価電子帯 E h h c E=0 Ef k BT 価電子帯 Nv:価電子帯の実効状態密度 2-29 分布関数 状態密度 価電子帯の頂をE=0とする 2-25 正孔が存在 Zh(-E) 価電子帯 f(E) 2-30 k p 演習 n Nc e 真性半導体において Eg E f p Nv e k BT 1 .5 2me k BT N c 2 2 h E f EV k BT 1 .5 2mh k BT N v 2 h2 およびn=pという関係からEfを導きなさい 2-31 2-32 解答例 真性キャリア密度ni 1.5 2me k BT n 2 e 2 h およびn=pより Eg E f k BT 1.5 me e 2E f e k BT 2E f k BT 2-33 Ef 1.5 Ef 2mh k BT k BT p 2 e h2 Eg E f 1.5 k BT mh e 1.5 Eg Ef mh e k BT 1.5 me また、n=pより Ef m Eg 3 ln h 2 me k BT Eg 2 m Eg 3 m 3 k BT ln h k BT ln e 4 me 2 4 mh Eg 2 k BT niを真性キャリア密度と呼ぶ。 k BT m 3 k BT ln e 2 4 mh Eg me: 電子の有効質量 mh: 正孔の有効質量 kB: ボルツマン定数 2-34 真性半導体のフェルミ準位 演習 下の表の空欄を埋めなさい。 3 m 3 Ef k BT ln e 2 4 mh Eg 3 2k BT 2 2k T ni 2 me mh 4 e B 2 h Eg 半導体材料 Si Ge GaAs GaN 電子の有効質量 me/m0 0.26 0.12 0.065 0.2 正孔の有効質量 mh/m0 0.52 0.35 0.45 1.1 項目 低温: バンドギャップエネルギーの中間のエネルギーを取る 温度上昇にしたがって、第2項の式にしたがって変化する Eg[eV] ni[cm-3]@300[K] 2-35 ni N c N v e n=p=niと置くと 2-36 1.11 2.63×109 0.66 1.43 3.42 6.66×1012 1.73×106 1.51×10-10 演習:Siの原子密度はどの程度か? 不純物半導体の考え方 n型・p型半導体の考え方 格子定数=5.430 Å 単位格子中に原子は8個 Siの原子密度 2-37 8 5.43 10 8 3 5.0 10 22 [cm 3 ] 2-38 どういう原子が不純物半導体に適切か? Siの場合 半導体における不純物:濃度はどれくらいか? 正イオン密度 負イオン密度 n型 p型 1018 20[ ppm] 5 10 22 ベース:B エミッタ:E ~1018cm-3 コレクタ:C ~1016cm-3 npn Tr 1015 20[ ppb] 5 10 22 Siの原子密度 : 5.0 10 22 [cm 3 ] 2-39 ~1015cm-3 2-40 n型半導体(npn-TrにおけるE、C) n型半導体 自由電子(自由に動く) (負電荷) - Si 一つ余った 電子 14族のシリコンの中に15族の元素 燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb) などが少量混じっている。 Si Si P Si Si 共有結合 燐(P)の最外殻電子 2-41 (3s)2(3p)3 →5個 Si P+ Si Si Si Si Si 2-42 強い 共有結合 P+ Si 固定電荷(動かない) (正イオン) エネルギーバンドにおけるドナーのエネルギー ドナーから供給される自由電子の エネルギー固有値 Si Si ー もし、P原子から離れると 伝導帯電子となる。 - 一価のプラス イオン 伝導帯電子 Si Si P+ P+と、伝導帯に励起された電子 P Si Si イオン化した場合、 水素原子と類似 活性化と呼ぶ. Si Si 価電子帯電子 シュレーディンガー方程式を使って、エネルギーを求める。 2-43 2-44 電子のエネルギー固有値の求め方の 復習 シュレーディンガー方程式 Hˆ Eˆ z 真空中とSi中の違い:有効質量補正 水素原子の場合の電子のエネルギー固有値 0 me 4 1 1 En 13.56 2 [eV ] n : 主量子数 2 2 n 8 0 h 2 n 電子 真空中の水素の場合 2 2 e2 ] Hˆ [ 2m 0 4 0 r y 陽子 h 2 : ディラック定数 m0 : 電子の静止質量 e : 素電荷 0 : 真空の誘電率 x シリコン 2-45 P+ 誘電率=0r シリコン中のドナーの場合 この電子は伝導帯電子として振舞う → 伝導帯電子の有効質量m=me ドナー:例えば燐(P) 2-46 真空中とSi中の違い:誘電率補正 ドナー準位 ED 13.56 n=1として me 1 m0 r 有効質量による補正 バンド構造におけるドナー準位 エネルギーE 2 [eV ] 誘電率による補正 例 me=0.25m0、r=12のとき E1=-13.56×0.25×(1/12)2=-0.0235[eV]~-0.024[eV] 伝導帯 ドナーの活性化エネルギー ED Pの電子にとって自由電子の状態 バンドギャップ Eg Pの電子にとって、通常の束縛状態 波数k 価電子帯 この式の場合のエネルギーの基準は伝導帯下端 2-47 - 2-48 シリコン:Pの場合 Eg=1.11eV ED=0.024eV p型半導体(npn-TrにおけるB) 最外殻が(2s)2(2p)1なので、 電子がひとつ不足 Si Si アクセプタ不純物 Si B Si Si 価電子帯電子 2-49 14族のシリコンに13族のホウ素B、ア ルミニウムAl、ガリウムGa、インジウム Inなどが添加される. Bー 誘電率=0r + B Bー 負イオンになる 2-50 バンド構造におけるアクセプタ準位 エネルギーE シリコン中の正孔の場合 緑が電子とすると 伝導帯 価電子帯正孔として振舞う → 価電子帯正孔の有効質量m=mh m 1 E A 13.56 h m0 r 2 [eV ] エネルギーの基準 符号にも注意 誘電率補正 は価電子帯最上端 有効質量補正 2-51 バンドギャップ Eg 波数k 価電子帯 アクセプタの活性化エネルギー ∆EA 2-52 高濃度不純物半導体になると Activation energy is known to follow this formula: Hydrogen-like effective mass Coulomb interaction E A or D (N A or D ) E A or D (0) f q (N 4 πε 1 3 f: geometric factor A or D ) Activation E depends with the one third power of the impurity concentration G.L. Pearson, J. Bardeen, Phys. Rev. 79 (1949) 1013 (in Si) P. Debye, E.M. Conwell, Phys. Rev. 93 (1954) 693 (in Ge) G.E. Stillman et al., GaInAsP Alloys Semi., Wiley, New York, 1982 (in GaAs) W. Gӧtz et al., Mater. Sci. Eng., B59, 211(1999). (in p-GaN) P. Kozodoy et al, J. Appl. Phys., 87, 1832 (2000). (in p-GaN) K. Nagamatsu et al, Physica Status Solidi 6 (2009) S437. (in p-AlGaN) Activation energy [meV] 例; p型GaN ⇒活性化エネルギーはクーロン相互作用によって変化する 2 電子を受容(accept)するのでアク セプタ(acceptor)と呼ばれる. Si Si アクセプタ準位のエネルギー固有値 シリコン もし、価電子帯正孔 として飛び出すと、 Si Hydrogen-like effective mass acceptor EA(0)=0.202[eV] E A NA E A 0 f NA 1018cm-3 1019cm-3 1 q2 NA 3 4ππ 1020cm-3 NA1/3 ×105 [cm-1] (Data review series No.23, An INSPEC publication, J. W. Orton and C. T. Foxon, 1999) ⇒EA decreases with increase of Mg concentration, and ⇒EA depends with the 1/3 power of the concentration of Mg. 本講義のまとめ •ドナーとアクセプタ •誘電率補正 •有効質量補正 •ドナー準位 •アクセプタ準位 2-55
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