7・原始人からひとへ

7・原始人からひとへ
2011.06.07. 青山・文化人類学
7・原始人からひとへ
2011/06/07 - [2]
化石人類学
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「原始人」つまり現在のヒトに先立ってサルから進化し
てきた動物群の研究は、広義の人類学のひとつである化
石人類学ないし生物人類学が担ってきた
化石人類学は、ダーウィンの進化論(1859年)と密接に関
わり合いながら発達してきた=19世紀中葉以降の科学主
義的人間観に基づく(←→キリスト教的人間観)
類人猿(チンパンジー・ゴリラ・オランウータン・ボノボ)とヒトの
違いとは?
つまるところ、〈ひと〉とはなにか?
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ここでは「ヒト」を動物の一種としての人間、「ひと」を動物と
は一線を画す特異な生物としての人間、をあらわすこととする
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なぜ原始人が描けるのか(1)
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科学主義的=進化主義的人間観に基づけば、
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ヤノマミ(未開人)……文明人であるヨーロッパ人から、キリス
ト教信仰や合理性などの「叡智」を引き算した存在
ヤノマミ(未開人)=「ヨーロッパ人」-「叡智」
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原始人……現代に生きるヒトから、進化の過程で身につけてきた
「知識・技術・能力」を引き算した存在
原始人=「現代人」-「知識・技術・能力」
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「叡智」と「知識・技術・能力」を等価に、「ヨーロッパ人」と
「現代人」を等価にみなせば、目前の未開人は、原始人と等しい
ものとなる
未開人をモチーフとして、もはやこの世に存在しない原
始人の図を描くことになる
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なぜ原始人が描けるのか(2)
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「原始人」のイメージが、ヤノマミのような人々のイメ
ージから派生した(ヤノマミが先)
人間はゼロから創造するのは非常に難しいと考えると、
ヤノマミを参考に原始人を想像したと考えるのが自然
原始人≒ヤノマミ、なのではなく、ヤノマミ→原始人
モデルなのだから、似ているように見えるのは当然
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しかもその「モデル」としての位置づけは、西洋の自文化中心主
義によるところが大きい
では、ヤノマミとは本当はどういう人々なのか?
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それを考えるために、化石人類史を少し詳しく眺めてみる
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化石人類史概観
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人類史のスケールを実感するために「年」を「円」に置
き換えてみる
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人類の登場は500万年前=500万円…4年分の学費相当
言語の獲得は200~250万年前……国産中/高級車1台分
Homo sapiens の登場は約20万年前……大卒初任給相当
文化や人種の登場は5~6万年前(?)……1ヶ月バイト料相当?
(縄文時代のはじまりは15,000年前)……新幹線東京-大阪
文明の登場は7,000~8,000年前……1日フルに働くバイト料
日本の有史は1,500~2,000年……ちょっと贅沢な外食?
明治維新は140年前……ポテトチップス1袋
みなさんの年齢は20歳前後……チロル1個
これらの年代は、近年(ここ30年ほど)の研究で劇的に変
動しているし、これからも変動すると思われる
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ヒトの誕生
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「ヒトの祖先」と「オランウータンやゴリラ、チンパン
ジーそれぞれの祖先」とが進化の系統樹上分岐した時期
については、まだ確定をみないが、少なくとも500万年
前までは遡れると現在は考えられている
このヒトの祖先=化石人類は2つに分けられる
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Australopithecus属……より古い形質を示す
Homo属……現生人類にまで連なる、より新しい形質をもつ
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二足歩行をめぐって
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言語能力
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中括1
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500万年前:直立二足歩行の獲得=骨盤-大腿骨の角度か
ら推定、「手」の使用→道具の使用へ
250~200万年前:言語の獲得=頭蓋骨・下顎骨の変化
から推定、コミュニケーションの拡大→集団生活と「知
恵」の継承
この2要素により、環境適応能力を飛躍的に高め、アフ
リカ大陸からアジア・ヨーロッパへ拡散……冬の寒さへ
の対応→130万年前:「火」の操作技術の獲得=住居趾
の炭化物から推定、①寒冷地へ進出②害敵からの防御③
さらなる脳の発達
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人類のアジア・ヨーロッパ進出
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化石人類年表
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ホモ・サピエンスの登場
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H. neandelthalensis の棲息は概ね30~3.5万年前、H.
sapiensの登場は、アフリカで15~25万年前、アジアで
は7~10万年前、ヨーロッパでは5万年前ごろと推定され
ている
人種は、 H. sapiensのサブカテゴリである=どんなに遡
っても20万年前、おそらく5万年程度前に生じたと考え
られている(相対的には小さなグループ差)
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「文化」の登場
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なにをもって「文化」とするか
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言語? ……言語自体の登場は250~200万年前
石器? ……人工的な石器の登場は250万年前
いずれも大事なトピックではあるが、①学習・②体系・③共有、
という「文化」の特徴から眺めると弱い
「文化的差異」の萌芽
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6万年前の H.neandelthalensis による「埋葬」と「障碍者への援
助」(シャニダール遺跡、ただし異論もあり)
社会集団の構成・維持と結びついた「文化」の登場
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「人種」の登場
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いわゆる「人種」=形質的差異に基づくヒトの下位集団
の登場は、Homo sapiens の登場以降
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ただし、それが sapiens に先立つ各地の集団の形質的要素を引き
継ぐのか否かについては、多系進化説と単一進化説の問題を解か
なくてはならない
おそらく5万年ほど前には、形質的な(当然ながら皮膚の色ではない)人種
的差異は形作られていたようである
大きくnegroid / caucasoid / mongoloid に分かれ、mongoloid
はさらにいくつかの下位集団に分けることもできる
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人種の近縁関係
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人類の拡大
上:更新世
約50000年前
下:後氷期
約1000年前
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モンゴロイドの拡散
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寒冷適応と海洋進出
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シベリア(約30000~40000年前)からベーリング海峡をわた
って(約15000年前)、北アメリカ(約12000年前)・南アメリ
カ(約11000年前)・グリーンランド(約3000年前)へ、また、
東南アジアから太平洋の島嶼部(約5000~1000年前)へとわ
たっていったのは、モンゴロイドである
モンゴロイドが、人類の分布拡大史上に果たしたおそら
くもっとも大きな功績は、「寒冷適応」と「海洋進出」
である
「寒冷適応」によりシベリアから(当時地続きの)ベー
リング海峡経由で南北アメリカ大陸への進出が可能とな
り、また「海洋進出」によりアジア海洋部~オセアニア
への進出が可能となった
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中括2
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約30万年前: H. neandelthalensis の登場
約20万年前: H. sapiens の登場……多系進化か単一進
化かは今のところ未解決
6万年前:文化的差異の登場= H. neandelthalensis に
よる埋葬と障碍者への援助
5万年前?:人種の登場= H. sapiens の下位集団
4~1.5万年前:モンゴロイドの拡散(1)……寒冷適応
3.5万年前: H. neandelthalensis の絶滅
1~0.1万年前:モンゴロイドの拡散(2)……海洋進出
7000~8000年前:文明の登場=有史への突入
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ヤノマモとはどんなひとびとか?
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ここまでみてきたように、有史への突入=四大文明の登
場(6000~7000年前)以前に、ほとんど全世界にヒト
は進出した。
なかでもモンゴロイドは、環境適応を行ないながら、寒
冷地・海洋部へ進出していった。南米にすむヤノマモは
いわば「ヒトの進化の最終形態」ともいえる。
少なくとも、人間的能力において、ヤノマモとわたした
ちとの間に明白な集団的差異(個人的差異ではない)は
存在しない
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再度、化石人類史概観
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人類史のスケールを実感するために「年」を「円」に置
き換えてみる
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人類の登場は500万年前=500万円…4年分の学費相当
言語の獲得は200~250万年前……国産中/高級車1台分
Homo sapiens の登場は約20万年前……大卒初任給相当
文化や人種の登場は5~6万年前(?)……1ヶ月バイト料相当?
(縄文時代のはじまりは15,000年前)……新幹線東京-大阪
文明の登場は7,000~8,000年前……1日フルに働くバイト料
日本の有史は1,500~2,000年……ちょっと贅沢な外食?
明治維新は140年前……ポテトチップス1袋
みなさんの年齢は20歳前後……チロル1個