10・文化と文明

10・文化と文明
2011.11.30. 帝京・文化人類学Ⅱ
10・文化と文明
2011/11/30 - [2]
[再]化石人類史概観
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人類史のスケールを実感するために「年」を「円」に置
き換えてみる
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人類の登場は500万年前=500万円…4年分の学費相当
言語の獲得は200~250万年前……国産中/高級車1台分
Homo sapiens の登場は約20万年前……大卒初任給相当
文化や人種の登場は5~6万年前(?)……1ヶ月バイト料相当?
(縄文時代のはじまりは15,000年前)……新幹線東京-大阪
文明の登場は7,000~8,000年前……1日フルに働くバイト料
日本の有史は1,500~2,000年……ちょっと贅沢な外食?
明治維新は140年前……ポテトチップス1袋
みなさんの年齢は20歳前後……チロル1個
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前回のまとめ
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500万年前:直立二足歩行の獲得=骨盤-大腿骨の角度か
ら推定、「手」の使用→道具の使用へ
250~200万年前:言語の獲得=頭蓋骨・下顎骨の変化
から推定、コミュニケーションの拡大→集団生活と「知
恵」の継承
この2要素により、環境適応能力を飛躍的に高め、アフ
リカ大陸からアジア・ヨーロッパへ拡散……冬の寒さへ
の対応→130万年前:「火」の操作技術の獲得=住居趾
の炭化物から推定、①寒冷地へ進出②害敵からの防御③
さらなる脳の発達
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人類のアジア・ヨーロッパ進出
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化石人類年表
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ホモ・サピエンスの登場
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H. neandelthalensis の棲息は概ね30~3.5万年前、H.
sapiensの登場は、アフリカで15~25万年前、アジアで
は7~10万年前、ヨーロッパでは5万年前ごろと推定され
ている
人種は、 H. sapiensのサブカテゴリである=どんなに遡
っても20万年前、おそらく5万年程度前に生じたと考え
られている(相対的には小さなグループ差)
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「文化」と「人種」の登場
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なにをもって「文化」とするか
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「文化的差異」の萌芽
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言語? ……言語自体の登場は250~200万年前
石器? ……人工的な石器の登場は250万年前
いずれも大事なトピックではあるが、①学習・②体系・③共有、
という「文化」の特徴から眺めると弱い
6万年前の H.neandelthalensis による「埋葬」と「障碍者への援
助」(シャニダール遺跡、ただし異論もあり)
社会集団の構成・維持と結びついた「文化」の登場
いわゆる「人種」=形質的差異に基づくヒトの下位集団
の登場は、Homo sapiens の登場以降
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おそらく5万年ほど前には、形質的な(当然ながら皮膚の色ではない)人種
的差異は形作られていたようである
大きくnegroid / caucasoid / mongoloid に分かれ、mongoloid
はさらにいくつかの下位集団に分けることもできる
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人種の近縁関係
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人類の拡大
上:更新世
約50000年前
下:後氷期
約1000年前
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モンゴロイドの拡散
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寒冷適応と海洋進出
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シベリア(約30000~40000年前)からベーリング海峡をわた
って(約15000年前)、北アメリカ(約12000年前)・南アメリ
カ(約11000年前)・グリーンランド(約3000年前)へ、また、
東南アジアから太平洋の島嶼部(約5000~1000年前)へとわ
たっていったのは、モンゴロイドである
モンゴロイドが、人類の分布拡大史上に果たしたおそら
くもっとも大きな功績は、「寒冷適応」と「海洋進出」
である
「寒冷適応」によりシベリアから(当時地続きの)ベー
リング海峡経由で南北アメリカ大陸への進出が可能とな
り、また「海洋進出」によりアジア海洋部~オセアニア
への進出が可能となった
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ここまでのまとめ
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約30万年前: H. neandelthalensis の登場
約20万年前: H. sapiens の登場……多系進化か単一進
化かは今のところ未解決
6万年前:文化的差異の登場= H. neandelthalensis に
よる埋葬と障碍者への援助
5万年前?:人種の登場= H. sapiens の下位集団
4~1.5万年前:モンゴロイドの拡散(1)……寒冷適応
3.5万年前: H. neandelthalensis の絶滅
1~0.1万年前:モンゴロイドの拡散(2)……海洋進出
7000~8000年前:文明の登場=有史への突入
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「文明」の登場前夜
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人類がほぼ全世界に拡散したあと、なにが起きたのだろ
うか?
7,000~8,000年前まで遡ると、一定領域の環境が支え
うるヒトの数の上限である、10~300人程度のコミュニ
ティが散在する、共通した状態であったと考えられる
……「ムラ」的状況
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周囲の環境から得られる食糧で支えうる人数
対面状況が保持しうるコミュニティの限界人数
自分の行為の結果を直接に気にする必要性のある人数
いわゆる「縄文のムラ」的なものが世界中に散らばって
いたと考えてよい
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さまざまな環境に応じて、さまざまな食糧を森や林、海や河、草
原や砂漠から得て暮らしてゆく力は、どの集団も持っていた
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「文明」の登場
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環境に規定される「上限」に対して、人間は、人智をも
って働きかけてそれを拡大しようとし始める
そのきっかけとなったのが、
1.
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3.
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栽培農業……自分たちで食糧を計画的に作る
物資の蓄積……その日暮らしでなく、安定的に暮らす
王権……複雑化した社会を統御する
対面状況を超える規模のコミュニティの登場……「マ
チ」的・都市的状況
いわゆる4大文明の登場につながっていくのが、こうし
た「マチ」的・都市的状況の出現
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生業~文明のモデル図
王権・行政
職人による手工業
交易・商業
採
集
・
狩
猟
牧
畜
農
耕
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ヤノマモとわたしたちの差
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王権の登場~文明の登場によって、コミュニティが維持
し得る人口は飛躍的に増大した
このことにより、
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過去からの文化の「蓄積」量が等比級数的に増した
コミュニティ自体が、人為的な(疑似)環境として機能するよう
になった
上記2点の結果として、環境への適応の幅が広がるとともに、社
会が複雑化した
各地に登場した文明は、周辺コミュニティを呑み込みな
がら、さらに複雑化した

cf. 中華文明の周辺としての日本列島
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文化と文明
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文化とは:
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それぞれの環境に適応しながら、(ムラ的)社会を支えてくれる
ルールや技術・知識
人類のどのコミュニティにも普遍的に存在する
「文化」を共有する人間集団の単位が「民族」……どの程度似て
いれば「文化を共有している」か、逆にどの程度違えば「文化を
共有していない」かは、一概には決まらない(民族ごとの「主観
的」な感覚が影響するため)
文明とは:
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採集狩猟/牧畜/農耕//商業交易/手工業//王権 の6要素のセット
により「マチ」的・都市的社会を築くようになったシステム
地球上のいくつかの地域に偏在して発生し、周辺文化を呑み込み
ながらより大きなシステムとなっていった
その一つである現代物質文明にわれわれは属している