名大病院輸血部・血液内科にお ける年代別血友病患者数 90 90 80 70 61 60 50 47 êlêî 50 40 34 29 30 22 20 10 0 4 80 7 70 60 50 40 îNë„ 2008年広友会 30 20 10 0 名大病院輸血部・血液内科にお ける年代別血友病患者数 30歳代にピークがありこれ以降の患者さん では肝炎の診療が大きなウェイトを占めて いる 内科・整形外科・歯科口腔外科による血友 病包括外来を月2回実施 小児の患者さんが増加傾向にあり2008年4 月より「小児血友病自己注射指導外来」を オープン 2008年広友会 血友病性関節症の滑膜 2008年広友会 血友病性関節症の進行 2008年広友会 慢性的な血友病性関節症 の現在においても血友病診 療の最大の課題である。 2008年広友会 出血時の補充療法とは 2008年広友会 欠乏した第VIII因子、第IX因子を輸注し、十分 な止血を行うこと オンデマンド投与とも呼ばれる 出血に際してできるだけ早期に輸注する必要が ある 出血の部位、程度、種類に応じた投与量・投与 法がある 補充する因子には半減期があることをよく理解 して行う必要がある。 凝固因子の半減期は短い ìäó^å„ÇÃååíÜëÊVIIIàˆéqó 120 ëÊVIIIàˆéqäàê´(%) 100 80 60 40 20 0 0 10 20 30 -20 éûä‘ 2008年広友会 40 50 投与間隔を短くすれば一定の水準 (トラフレベル)を保つことができる FVIII:C 100 (% ) 10 1 0.1 0 1 2 3 4 5 6 Time (days) 2008年広友会 投与間隔を短くすれば一定の水準 (トラフレベル)を保つことができる FVIII:C 100 (% ) 10 1 0.1 0 1 2 3 4 5 6 Time (days) 2008年広友会 投与間隔を短くすれば一定の水準 (トラフレベル)を保つことができる FVIII:C 100 (% ) 10 1 0.1 0 1 2 3 4 5 6 Time (days) 2008年広友会 持続輸注により一定の水準(トラフレベル)を 保つことができる(手術時など) FVIII:C 1000 (% ) 100 10 1 0.1 0 1 2 3 4 5 6 Time (days) 2008年広友会 製剤持続輸注の方法 因子活性を一定期間80-100%のトラフレベル に維持することを目的とする場合に行う 80-100%をピークレベルとして一回注射後、シ リンジポンプなどを用いてゆっくり持続的に輸 注する。 入院患者さんにしか使用できない インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン(案) 2008年広友会 補充療法の種類 1. 2. 出血時の補充療法: オンデマンド (Ondemand) 予備的補充療法 3. 定期補充療法 1. 2. 2008年広友会 テストや遠足の前に打っておく…など 一次定期注射:最初の関節出血が起こってす ぐ予防開始する-最低成人までは続ける 二次定期注射:ある程度関節障害が進んでか ら予防開始する-出血頻度、関節障害の進行を みながら検討する (日本血栓止血学会血友病標準化検討部会) 出血時の補充療法 2008年広友会 関節出血、筋肉内出血の補充療法 出血部位 補充療法 備考 1)関節内出血 *前兆、または初期の場合、目標とする 急性期は局所の安静保持 ピーク因子レベルを20-40%の範囲で選択 を心がける し、1回投与 *重症出血は40-80%の範囲で選択して1 回投与。症状に応じて目標ピーク因子レ ベルを20-80%の範囲で選択し、12から24 時間の間隔で出血症状消失まで追加投 与 2)筋肉内出血 関節内出血に準じて投与を行う。 急性期は局所の安静保持 を心がける 腸腰筋出血は原則として入 院加療 12時間毎のボーラス投与、 または関節手術に準じて持 続投与 インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン(案) 2008年広友会 重症関節出血 1. 初期の出血の自覚症状に気づかず、症状 が出現してから気づいた場合 2. 何らかの理由で速やかな補充療法が行わ れなかった場合 3. 頻繁に出血を繰り返すtarget jointに出血が 連続して起こった場合 インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン(案) 2008年広友会 Target Jointとは? CDC(米国)による定義: 過去6ヶ月の間に4回以上出血した関節 これまでの一生で20回以上出血した関節 膝、肘、足関節が多い Target Jointへの出血が慢性血友病性関 節症の主な原因と考えられている 2008年広友会 凝固因子活性を何%に上げたいのか? 20-40% 関節出血の前兆 口腔内出血など 定期補充療法 40-80% Target jointの出血 80-100% 大出血 脳出血(頭部打撲) 2008年広友会 出血時の補充療法(オンデマンド)では初回投 与が重要である 重症血友病患者の出血は思い当たる原因 がないことが多い 止血させるために凝固因子量を一定以上の レベルへ上昇させる必要がある ある一定年齢以上なら痛みが出たり腫れた りする前の違和感を(前兆)を自覚すること があり、この時期に補充すれば1回のみの輸 注で止血できる しかしTarget jointに対してはこの限りではな い 2008年広友会 輸注量の計算法 経験的に次の式が便利です。すな わち、1 U/Kgの輸注で第VIII因子な ら2%、第IX因子なら1%上昇しま す。 第VIII因子の投与量(U)=上昇期待値 (%)×体重(Kg)÷2 第IX因子の投与量(U)=上昇期待値 (%)×体重(Kg) 2008年広友会 製剤バイアルの選択(第VIII因子の場合) 目標ピーク 20-40% 体重10Kg X (20-40) / 2 = 100 - 200単位 • 250単位 1本 体重15Kg X (20-40) /2 = 150 - 300単位 • • 40-80% 体重10Kg X (40-80) / 2 = 200 - 400単位 • 500単位1本? 1000単位1本? 体重15kgを超えたら時に1000を使用することも考えましょう 80-100% 体重10Kg X (80-100) / 2 = 400 - 500単位 • 500単位 1本? 体重15Kg X (80-100) /2 = 450 - 750単位 • 2008年広友会 250単位 1本? 500単位 1本? 体重15Kg X (40-80) /2 = 300 - 600 • • 250単位1本? 500単位1本? 体重15kgを超えたら小さい出血でも500単位を使用しましょう 1000単位1本? 出血時の補充療法のポイント 自分の体重からどれだけ補充すれ ば何%まで上昇するのか知る 各関節や筋肉の状況をよく理解し て十分な量を十分な回数補充する 必要な量を3つのバイアルの規格 から選択して組み合わせる 2008年広友会 出血時の補充療法の限界 在宅自己注射療法により出血時に速やかに 補充療法を行なえば、疼痛の軽減、通院の 煩わしさが改善される しかし実際にはすべての患者さんにおいて 慢性的な障害(関節症の発症/進展)を防 止する迄には至らず、学校・社会生活の質 は必ずしも十分改善していない 2008年広友会 定期補充療法の理論的根拠 中等症血友病患者さん(1-5%)は明らかに重 症の患者さん(<1%)よりも症状が軽い 重症型の患者さんの活性を最低1%以上に 保っておくことには意味がある 2008年広友会 Nilsson IM, Blomback M, Ahlberg A. Our experience in Sweden with prophylaxis on haemophilia. Bibl Haematol. 1970; 34: 111-24. 定期補充療法の考え方・利点1 血友病性関節症は関節出血の結果である 関節出血を予防し、血友病性関節症を防止 重症型を中等(軽)症化 2008年広友会 定期補充療法の考え方・利点2 頻回に出血を来す場合には定期 補充療法と同程度の量の製剤を 使用する場合がある。 頭蓋内出血のリスクをより軽減で きる 2008年広友会 定期補充療法の歴史と発展 1958 スウェーデンのNilsson博士らにより血友病A患者に 対して小規模な定期補充療法が開始される 1960s カナダ、オランダにおいても血友病Aに対して小規模 な定期補充療法が開始される 1972 スウェーデンのNilsson博士らは血友病B患者に対し ても小規模な定期補充療法を開始 1992 スウェーデンにおける25年間の定期補充療法の成績 が発表される 1994 全米血友病財団が至適な治療法であると勧告 2005 わが国で乳幼児に対する定期補充療法の研究開始 2006 Joint outcome study結果発表 2008年広友会 Malmö regimen(スウェーデンのやり方) 対象:血友病の重症型(第VIII因子または第 IX因子活性<1%) 開始時期:最初の出血前あるいは1ー2回の 関節出血後、通常1ー2歳で開始 方法:血友病 A 25-40 単位/kgを週に3回 血友病 B 25-40 単位/kgを週に2回 トラフレベル(一番低いとき)を 1%以上保つ 末梢静脈を基本とするが、場合によっては中 心静脈カテーテルを使用 2008年広友会 Nilsson IM, et al: J Int Med 1992 1日おきの定期補充療法 ìäó^å„ÇÃååíÜëÊVIIIàˆéqó 45 40 35 25 ë ÊV I I I à ˆ éq ä à ê´ ( % ) 30 20 15 10 5 0 0 0.25 0.5 2 3 4 5 10 24 34 48 é ûä ‘ 2008年広友会 4 8. 2 5 50 50 51 52 53 58 72 82 96 Joint Outcome Study 重症型血友病A小児の関節障害予 防における定期補充療法と出血時 補充療法の比較 Manco-Johnsonら New England Journal of Medicine, 2007年 2008年広友会 試験背景 • 過去何十年間もの研究報告 (ほとんどはスウェーデンとオランダ) – 定期補充療法が出血時補充療法に比べ、出血回 数を減少させたり、関節障害の進展を遅延さること が示されていた • 定期補充療法の導入・処方は地域によって異 なる – 効果的な用量は経験的に決められていた • 関節内出血の回数を減少させるのに凝固因 子製剤の定期補充療法が有効であるか否か を評価する無作為試験のエビデンスはない。 Stobart K, Iorio A, Wu J. Cochrane Database Syst Rev. 2006;2:CD003429 2008年広友会 Joint Outcome Study 目的: 小児重症型血友病A患者に対する関節 内出血の予防、関節障害の低減・予防の 観点から、定期補充療法の有用性を出 血時補充療法との比較により検討する Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 2008年広友会 試験方法(1) • 米国内の血友病センター 15施設 • くじ引き試験で定期補充療法と出血時補充療法を 比較 • 対象: – 血友病A (FVIII活性 <2% ), インヒビター陰性 – 年齢:30ヶ月齡未満 – 関節が正常で、どの関節でも、2回以上出血していない • 試験期間: – 1996年8月~ 2005年4月 Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 2008年広友会 試験方法 (2) 定期補充療法群 (32名) 無作為割付 (n = 65) 出血時補充療法群 (33名) 0 1 2 3 4 5 (年) • 定期補充療法群: 25 単位/kg 隔日輸注 • 出血時補充療法群: 出血直後に40単位/kg、24・72時間後に 20単位/kg、計80単位/kgまで輸注 • 使用製剤: コージネイト® または コージネイト® FS (計1700万 単位) • 評価項目: – 関節(足・膝・肘)の6歳時MRIおよびX線による関節機能 – 関節内出血および他の出血の回数、輸注回数、第Ⅷ因子製剤使用量 – 関節の臨床評価、コンプライアンス(どれだけきちんとやったか) 2008年広友会 Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 参加した患者さんの病状 定期 補充療法群 出血時 補充療法群 患者数 32 33 登録時年齢(歳) 1.6 1.6 31 (96.9) 31 (93.9) 1 (3.1) 2 (6.1) 18 (56) 13 (39) 過去の指標関節内出血回数,平均(幅) 1.0 (0-5) 0.6 (0-3) 過去の総出血回数, 平均 (幅) 6.2 (0-35) 6.8 (0-32) FVIII活性, 患者数 (%) < 1% 1 – 2% 登録以前の指標関節*内出血 あり, 患者数 (%) ※両方の肘、膝、足首の関節 Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 2008年広友会 結果: 正常関節の割合 指標関節全てが正常であった患 者の割合(6歳時, MRI評価) (%) 100 定期補充療法群で 有意に高かった 93 93 定期補充療法群に対する 出血時補充療法群の 相対危険度(RR) ●MRI: • p = 0.002 • RR 6.1 (1.5-24.4) •関節障害のリスクは定期補充 療法群で83%低かった 80 55 55 60 ●X線: • RR 5.2 (0.65-41.5) 40 MRI:X線の一致性: • 指標関節の97% 20 0 出血時補充療法群 Episodic (n = 29) 2008年広友会 定期補充療法群 Prophylaxis (n = 27) 結果:関節損傷・出血回数・製剤使用 定期補充療法群 出血時補充療法群 32 33 1497 (47,895) 1490 (49,179) MRI (n=27 定期; n=29 出血時)* 2 (7) 13 (45) X線 (n=28 定期; n=27 出血時) 1 (4) 5 (19) 20,896 6,176 11,289,372 3,736,807 関節内出血, mean ± SD (中央値)** 0.63 ± 1.35 (0.20) 4.89 ± 3.57 (4.35) 総出血, mean ± SD (中央値) ** 3.27 ± 6.24 (1.15) 17.69 ± 9.25 (17.13) 患者数 試験日数, 平均 (合計) 関節損傷あり, 患者数 (%) FVIII製剤輸注回数, 合計 ** FVIII製剤輸注単位数, 合計 ** 患者1人あたり年間出血回数 有意差あり: * p<0.05, ** p<0.001 2008年広友会 結果:出血回数の推移 関節内出血およびその他の出血の年齢別月平均回数 定期: 関節内 定期: その他 出血時: 関節内 出血時: その他 年齢(歳) 出血時補充療法群では関節内出血およびその他の出血の平均回 数が試験期間を通じて次第に増加した 定期補充療法群の出血回数は低い値を維持していた Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 2008年広友会 結果:副作用・コンプライアンス 定期補充療法群 出血時補充療法群 32 33 1497 1490 96% (96-100) 98% (98-100) 0 3 (9)* 2 (6) 0 1.70 ± 8.03 (0.25) 0.47 ± 0.85 (0.24) CVAD 使用 29 (91) 25 (76) 1回以上のCVADに関連した感染症 6 (21) 6 (24) 患者数 平均試験日数 コンプライアンス (処方量に対する輸注量の%), 平均値 (四分位数間範囲) 生命を脅かす出血, 患者数 (%) 高力価インヒビターの発現, 患者数 (%) 血友病関連の入院(患者1人あたり年間回数), 平均 ± SD (中央値)‡ CVAD使用, 患者数 (%) CVAD:中心静脈アクセス器具 * 頭蓋内出血 (n=2), 消化管出血 (n=1) ‡ ほとんどはCVADの留置または抜去のため 2008年広友会 ※いずれの項目も両群間に有意差なし Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 まとめると ●観察期間が長期にわたり(平均 >4年間), 参加した血 友病患者数は多数にのぼる (65名)。 ●25 単位/kg,隔日輸注の定期補充療法は関節損傷開 始前の乳幼児に特筆すべき結果をもたらした。 ●定期補充療法群において有意な出血回数の減少と関 節損傷リスクの低下が認められた。 – MRI および X線 の結果は一致していた – MRI は早期の微細な変化を捉えていた ●関節の保護、出血の予防には、より高い凝固因子製 剤の費用が必要であった。Manco-Johnson et al. NEJM;357(6):535-544,2007 2008年広友会 欧米の成績が意味するもの 血友病の重症型に対する定期補充療法は、 関節症を防止できるとおもわれる。 定期補充療法は、関節障害発症以前に開始 する(一次)ことにより最大効果を得る可能性 がある。関節障害発症以後に開始した場合 は、関節症の進行を完全に阻止することは できないかもしれない。 2008年広友会 わが国の定期補充療法ー小児科施設の 現状調査より 定期補充療法が行われている割合は血友 病A重症で26%、血友病B重症で17%であった。 15歳未満の小児に限ると、前者は47%、後者 は42%であった。 定期補充療法の開始年齢は、血友病A,Bと もに2歳以上が70-80%であった。 一次定期補充療法の割合は未だ少ないが、 増加傾向にある。 2008年広友会 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 瀧 正志 先生 二次定期補充療法の利点と限界 2008年広友会 関節障害が発生してからの予防ではある ものの、障害悪化を遅らせる、出血回数を 減らす、入院や欠席・欠勤日数を減らす、 身体機能や自活能を向上させる、疼痛の 軽減、生活の質を高めるなどの効果は大 きい 月4回の出血->月10回の投与->欠勤2回 週3回の二次定期補充->月12回の投与->出 血・痛み・欠勤なし 定期補充療法の問題点・課題 2008年広友会 製剤から何か感染する心配はないのか? インヒビターの発生は? 静脈アクセス 重症型の全員に同じように行う必要があるか? いつ開始していつ中止するか? 低年齢で家庭治療を導入した場合、親子関係に影 響を与えないか? 成人の投与量および投与間隔は? 医療費は?健康保険で認められるか? 定期補充療法の問題点・課題 2008年広友会 製剤から何か感染する心配はないのか? インヒビターの発生は? 静脈アクセス 重症型の全員に同じように行う必要があるか? いつ開始していつ中止するか? 低年齢で家庭治療を導入した場合、親子関係に影 響を与えないか? 成人の投与量および投与間隔は? 医療費は?健康保険で認められるか? 静脈アクセス 2008年広友会 定期補充の実際の注射の方法 一番自然な末梢静脈(手の静脈)がやはり望 ましい 難しい場合には一定期間に限って中心静脈 アクセスデバイス, CVAD (Central venous access device)が利用可能 2008年広友会 中心静脈アクセスデバイス CVAD (Central venous access device) 完全埋め込み型 (いわゆる中心静脈ポート) 体外型カテーテル (ブロビアック®またはヒッ クマン®) 2008年広友会 中心静脈ポート 2008年広友会 中心静脈ポート 2008年広友会 中心静脈ポートの例 2008年広友会 ヒューバー針(コアレスニードル) エッジ 普通の注射針 ヒューバー針(コアレスニードル) セプタム 2008年広友会 コアレスニードルを用いてポートに穿刺 2008年広友会 ポートから穿刺しているところ 2008年広友会 体外型(ブロビアック®) 注入して いるところ 2008年広友会 ポートと体外式(ブロビアック)の比較 挿入法 閉塞のリスクと予防法 ポート ブロビアック(体外式) 全身麻酔 全身麻酔 同程度 ヘパリン生食を最低1/1-2週? 穿刺2000回、数年? 1-2年程度? 不可能 注意すれば可能 細菌の混入による感染 少なめ? 多め? 穿刺するときの痛み ややあり まったくなし 感染して発熱したとき は抜去する 全身麻酔下で手術室で 抜去 抜去は容易 OK 原則不可 目立たない 目立つ 耐用期間 採血 入浴、プール 外見 2008年広友会 定期補充療法と インヒビター発生 2008年広友会 定期補充開始年齢とインヒビター発生率 定期輸注開始年齢 0歳-6ヶ月 6ヶ月-1歳 1歳-1歳6ヶ月 13 29 27 1.8±1 1.4±3.4 2.2±1.2 2..3±5.4 3.3±2.1 製剤を投与した平均延べ 日数(その範囲) 1147 (126-3198) 960 (60-3171) 982 (127-5742) 1345 (866-2242) 770 (295-2535) 予防投与前の平均投与回 数(その範囲) 26 (0-150) 20 (0-101) 21 (0-150) 45 (0-213) 12 (0-208) インヒビター保有率 (%) 31 17 11 0 0 インヒビター発生前の平均 製剤投与回数 14 25 40 NA NA インヒビター最大値平均 (BU/ml) 11 8 68 NA NA 製剤初回投与からインヒビ ター発生前の期間(年) 1.6 0.4 1.3 NA NA 患者数 関節出血初発年齢 2008年広友会 1歳6ヶ月-2歳 2歳以上 7 van der Bom JG et al: Thromb Haemost, 89:475-9, 2003 一見インヒビター値は早期に定 期補充を開始した患者さんで高 く見えるが… 2008年広友会 第VIII因子インヒビターの発生のしか たについての現在の考え方 重症血友病A患者さんの約1/4-1/3が 何らかの形でインヒビターを産生する 発生する患者さんではほとんど10-20 回以上の製剤投与後発生する ただし一過性の弱いインヒビターが小 児期以降に発生して自然に消失する こともある 2008年広友会 遅く開始した患者さんの発生率が低いのはインヒビター発症リ スクの高い時期を過ぎていた可能性が高い 定期輸注開始年齢 0歳-6ヶ月 6ヶ月-1歳 1歳-1歳6ヶ月 13 29 27 1.8±1 1.4±3.4 2.2±1.2 2..3±5.4 3.3±2.1 製剤を投与した平均延べ 日数(その範囲) 1147 (126-3198) 960 (60-3171) 982 (127-5742) 1345 (866-2242) 770 (295-2535) 予防投与前の平均投与回 数(その範囲) 26 (0-150) 20 (0-101) 21 (0-150) 45 (0-213) 12 (0-208) インヒビター保有率 (%) 31 17 11 0 0 インヒビター発生前の平均 製剤投与回数 14 25 40 NA NA インヒビター最大値平均 (BU/ml) 11 8 68 NA NA 製剤初回投与からインヒビ ター発生前の期間(年) 1.6 0.4 1.3 NA NA 患者数 関節出血初発年齢 2008年広友会 1歳6ヶ月-2歳 2歳以上 7 van der Bom JG et al: Thromb Haemost, 89:475-9, 2003 『血友病A重症型74人のインヒビター発生率を 治療レジメで分類比較した研究』 一次定期補充療法を行なった 23名のインヒ ビター保有率は最終的に0%だった オンデマンド療法あるいは二次定期補充療 法を行なった 43名のうち18名(42%)にインヒ ビターが発生した ただし、6ヶ月未満で治療を開始した患者さ んのインヒビター発生率は62%と高率だった Escuriola-Ettingshausen, et al(Germany): Haemophilia (2004), 10:57, suppl 2008年広友会 定期補充療法がインヒビターの 発生率を上げる強い証拠はな いが、6ヶ月齢より以前に定期 補充療法を開始すると発生率 がやや上がるかも知れない 2008年広友会 定期補充とインヒビター Yes? or No? 定期補充とインヒビター発生の因果関係に ついては一定していないがどちらかというと 関係ないという意見の方が多い もし定期補充をしなかったらインヒビターが 発生しなかったのか、過去の症例を振り返っ て調べることには限界があり、これから定期 補充をする患者さんを観察していくことが必 要である 2008年広友会 免疫寛容導入療法 Immune tolerance induction (ITI) • インヒビターが発生する重症血友病患者では第VIII 因子や第IX因子に対する自己抗原寛容が成立して いない • 第VIII因子や第IX因子などの免疫原をある程度大 量でかつ頻回に投与することにより「後から」寛容を 導入することが可能である • 治療開始当初は免疫刺激によりインヒビター値は上 昇するが、成功例では徐々に低下する 2008年広友会 過去に行われたITIの小規模臨床研究 Protocol 用量 成功率 Bonn 200–300 U/kg/ day (BID) 73% (86.7%) Malmö FVIII level > 30% (TID) + IM Smith 成功の定義 Median pre IT titre (BU) Median time on Rx (mos) Normal FVIII R/S 8.8 (< 10) 15.0 (14.7) 80% (63%) Normal FVIII R/S <10 (4.5) 1.3 (?) 200 U/kg/day (BID) 100% Normal FVIII R/S 2.9 5 Rocino 100 U/kg/day (QD) 80% Normal FVIII R/S 3.6 13 Kasper 50 U /kg/day (QD) 73% Normal FVIII R/S 0.7 3 Dutch 25 U/kg (QOD – TIW) 83% Inhibitor titre < 2BU, FVIII R > 50%, S>6h 2.5 12 Gruppo 100 U/kg/week + IM 63% Negative inhibitor titre 2.5 24 2008年広友会 DiMichele D. Haemophilia 2003; 9: 382-6. Pr 8M 7M 6M 5M 4M 3M 2M 1M I 2W IT 9M 10 M 11 M 12 M 13 M 14 M 15 M 16 M 17 M 18 M 19 M 20 M 21 M 22 M 23 M 24 M 25 M 26 M 27 M 28 M 29 M 30 M 31 M 32 M 33 M e B ethesda units ITI期間のインヒビター値の推移 35 30 25 Pt-1 Pt-2 Pt-3 20 15 10 5 0 Post ITI Months 重症型の全員に同じよう に行う必要があるか? 2008年広友会 一律な投与法でよいか 重症型患者さんの中でも出血パターンには 大きな個人差が認められる 個々の患者さんの出血頻度に合わせて治療 計画を個別に設定する考え方もある 「例えば」出血の頻度に合わせて週0-3の範囲で 回数を調節する 頻回に出血する患者さんは増量する 2008年広友会 ただし、よほど注意深く観察していないと関 節障害が進んでしまう。 いつ開始していつ中止するか? 少なくとも二次定期補充療法だけでは関節 症の発症を100%予防することは出来ない 関節出血が繰り返される前に開始すること がのぞましい 早期に定期補充を開始した小児が成人に なったとき、運動器機能が正常ならオンデマ ンド療法へ切り替えても関節障害は進行しな いかも知れない? 2008年広友会 日本小児血液学会による 「乳幼児重症型血友病に対する定期補 充療法の研究」 2008年広友会 何を調べるのか? 乳幼児の重症型血友病患者さんで定期補充 療法をこれから希望する患者さんにお願いし て登録し、 1)関節症の進展予防効果 2)出血予防効果 3)ADL改善効果 を定期補充療法開始年齢毎に調べて、何歳 で定期補充療法を開始するのが一番いいの か調べる 2008年広友会 研究の方法 開始年齢により4つの群(P1群;0から2歳未満、P2群;2から4歳未満、 P3群;4から6歳未満、P4群;6から8歳未満)に分け、各群の年齢が6 〜8歳まで経時的に追跡調査する。 開始 1年 2年 3年 4年 5年 6年 P1群 P2群 P3群 最終評価 P4群 2008年広友会 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 瀧 正志 先生 どんな患者さんに研究の参加をお願いするのか? 2008年広友会 倫理委員会で本研究が承認された(名大病院でも 承認されました)病院にかかっている患者さん これから定期補充療法を希望している8歳未満の 重症型の患者さん(AもしくはB) インヒビターが陰性(0.6 BU/ml未満)の患者さん 過去の足首、膝および肘関節の出血回数が判って いる患者さん 保護者から文書による同意が得られた患者さん 以下の患者さんは研究に参加できません 投与量の多寡に拘らず過去に定期補 充療法を行なったことがあるか、現在す でに行なっている患者さん(ただし、直 前数カ月以内の週1回以下の定期補充 療はこれに含めない) 2008年広友会 試験での定期補充療法の方法 2008年広友会 原則として、血友病Aは隔日あるいは週に3回、血 友病Bは2日おきあるいは週に2回 注射する時間は原則として活動前の朝 投与量は血友病A、Bともに25〜40単位/kg/回 もちろん、出血に伴う止血のための補充、手術時 の補充などは適宜実施する 注射の方法は、末梢静脈の穿刺を原則とするが、 困難な場合は中心静脈カテーテルあるいは埋込み 型カテーテルを利用する すべて保険診療で行なう。 血友病治療の方向性の変化 出血に対する止血治療 :出血時に凝固因子の補充療法 欠損した凝固因子を補い出血させない治療 2008年広友会
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