16. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態進展に おける骨格筋

 6 . 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態進展に
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おける骨格筋脂肪化の意義
佐賀大学 医学部 内科学 北島陽一郎、江口有一郎、磯田 広史、
石橋絵理子、大座 紀子、高橋 宏和、
水田 敏彦、尾崎 岩太、藤本 一眞
医療法人 ロコメディカル 江口病院 消化器内科
堀江 弘子、平川美智子、小野 尚文、
江口 尚久
佐賀大学 総合診療部
吉岡 経明、小泉 俊三
【背景】我々は本研究会で、骨格筋の質の評価として腹部 CT での腰椎
背側に位置する多裂筋と皮下脂肪との CT 値比を MM/F ratio とし骨格筋
脂肪化の指標として注目し非アルコール性脂肪性肝疾患( NAFLD)の病
態、特にインスリン抵抗性( IR)と骨格筋の脂肪化が関連すること、つま
り、NAFLD 群では正常群に比べ筋脂肪化が進行し、NAFLD に対する前
向き食事運動療法にて筋脂肪化改善群では肝脂肪化の改善と共に IR が有
意に改善すること、IR 改善には内臓脂肪蓄積および筋脂肪化の改善が重
要 で あ る こ と を 報 告 し て き た( Kitajima et al. J Gastroenterol, 2009 )
。
しかしNAFLD は予後の良好な単純性脂肪肝から肝硬変への進展、肝細
胞癌の発症のリスクをもつ非アルコール性脂肪性肝炎( NASH)までの幅
広い表現型をもつ疾患の総称であり NASH の病態進展における骨格筋脂
肪化の意義は明らかではない。
【目的】今回は肝生検で NASH と診断された症例において NASH の病理
学的なactivity と stage と骨格筋の脂肪化の関連について既報の多裂筋脂
肪化評価法で検討を行った。
【方法】対象は当院および関連施設で肝生検により診断されたNASH 34
例(女 性16 例)
。Activity は NAFLD activity score( NAS)を 用 い、Stage
分類として Brunt 分類を用い MM/F ratio 値との関係を検討した。
【結果】NAS score での activity による MM/F ratio の有意差は認めなか
った。進 展 度 と し て は Brunt stage 1 + 2 を early NASH、stage 3 + 4 を
advance NASH とした場合、NASH の進展により骨格筋脂肪化は男性で
進行する傾向、女性では有意に進行していた( p< 0 . 01 )
。また多変量解
析ではNASH の進展が骨格筋脂肪化に影響を及ぼす独立した因子であっ
た( odds ratio = 20 . 18 、p< 0 . 05 )
。
【まとめ】NASH の病態では NASH の進展により骨格筋が脂肪化するこ
とが明らかになった。このことが NASH に特異的な変化なのか肝疾患の
進展としての変化なのかは今後検討しなければならない。