非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、多くの 慢性肝疾患の原因と

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、多くの
慢性肝疾患の原因となっており、脂肪肝に始まり、
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維化、肝硬
変という経過をたどる。この慢性肝疾患の病状の悪
化の流れについてはまだよくわかっていない。
Wnt シグナルのコレセプターである LDL 関連タン
パク質 6(LRP6)の変異は、機構は未知であるが早
期アテローム性動脈硬化、代謝性疾患の危険因子、
ヒトにおける NAFLD などの発症において重要で
ある。そこで筆者らは、ヒト疾患に関連する変異で
ある LRP6 R611C 変異モデルを作製した。LRP6
R611C ホモ接合体(LRP6mut/mut)は、脂肪性肝炎
および線維化が確認された。この結果は、非標準の
Wnt/Ras ファミリーA(RhoA)、Rho 関連タンパク
質キナーゼ 2(ROCK2)経路、PKC 経路の活動亢進
によると考えられる。それに応じて TGFβ1 活性
が増加し、LRP6mut/mut マウス肝臓において、ア
ルブミンと共存している a-SMA およびビメンチン
の発現も増加していた。また、HepG2 細胞におい
て LRP6 をノックダウンしたところ、a-SMA およ
びビメンチンの発現が増加し、Wnt シグナル伝達
障害の肝細胞の分化転換への関連が示唆された。Wnt シグナル伝達の変化が、NASH 病変に関与してい
ること、また(LRP6mut/mut)マウスに Wnt3a を投与することにより肝炎および肝線維症が抑制される
ことが明らかとなった。この結果は NASH 関連疾患とヒトの遺伝的変異とをつなぐ重要な知見であり、
LRP6 および非標準の Wnt 経路が今後 NASH の治療標的になる可能性を示唆している。