歴史の正義回復はどのようになされるのか? キム・ドンミン(漢陽大 新聞放送学科兼任教授、東学民族統一会共同議長) 市民社会が歴史正義回復のための役割を担うためには力を結集しなければならない。Schelling は 2005 年ノーベル賞授業演説で、福島の教訓が核武器拡散禁止の原則が維持される力であり、この原 則が持続的に維持されるためには、米国の意志が重要だと語った。Schelling は、人々は他人の行動 から影響を受け意識しながら行動し、また自身の行動は他人の行動に影響を及ぼすと述べた。これが、 Schelling が主張する核武器使用禁止の原則が形成される背景になるという論理だ。 人間が合理的理性をもつ存在だという前提から出発するゲーム理論だ。去る5月、交通事故で亡く なった John Nash は、ゲーム理論の創始者である John von Neumann と Schelling の論理を発展さ せ、「ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)」理論を開発した。互いに相手の立場を考慮し行動を決 定しようとする時に均衡が形成されるという論理だ。これは、利己的な個人が他人を意識する必要な く私益のために働けば、結果的には公益に帰結するというアダム・スミスの自由主義論理を覆すこと から、ナッシュにノーベル賞が与えられた。 ここで重要なことは、協商の当事者たちの力だ。国家間の協商も同様だ。市民社会は歴史の正義回 復のための協商テーブルに参与することで、全体に利益となる均衡を作り出す力を持たなければなら ない。協商の場の外でデモをする程度では、歴史を変えることはできない。冥王星が太陽系の恒星の 地位を失ったのは、十分な質量としての重力を行使できなかったためだ。恒星ならば、公転の軌道が 一定な中で、自己の公転の軌道での支配権を行使できねばならないのに、そうできなかったのだ。歴 史正義回復のための協商テーブルは、現実から主題が歪曲された中で、その主体は、米国を中心に、 日本と中国、そして韓国政府である。この構図が不均衡な状態の中で韓国政府の態度はあいまいだ。 強大国の間で韓国という衛星は弱いようだが、太陽系に例えれば最も遠いところにいる海王星程度の 衛星だが、それでも厳然たる資格を持った協商の当事者であり恒星である。韓国政府がしっかりとす れば、偏りのない均衡を作り出すことができるのだ。米国を牽引した 6・15 宣言や 9・19 合意がその よい事例として証明している。 従って、市民社会はひとつになり、無視できない力(重力)として韓国政府を圧迫することに集中 し、合わせて米国と日本政府にも合理的選択をするよう訴えていかなければならない。それが可能で あるか点検し組織しなければならない。今しなければならないことはそれだ。韓米日市民団体が例年 の行事として一度会い、発言することで終えてはならない。そしてまずは、韓国の市民団体がひとつ になることから始めねばならない。このように分散した状態で、一度の行事を組織するのに力をかけ る程度の軟弱さでは何もできない。米国と日本の市民社会もこうした方向で実践してくれることを願 っている。
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