カンボジア・トンレサップ湖における乾季の水位低下に伴う水質 - J

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カンボジア・トンレサップ湖における乾季の水位低下に伴う水質変化について
*大八木英夫(日大・院・総合基礎科学) ・遠藤修一(滋大・教育)・奥村康昭(大阪電通大・工)
So Im Monichoth(Min. Water Resour. & Meteorol., Cambodia)・塚脇真二(金沢大・自然計測セ)・
石川俊之(北大院・地球環境)・荒木祐二(横国大・院・環境情報)・向井貴彦(岐大・地域科学)
・藤田浩介(滋大・院・教育) ・森和紀 (日大・文理)
1.
はじめに
メコン河は,チベット高原東端の山岳地域に源を発し,
3.
ミャンマー,タイ,ラオス,カンボジアおよびヴェトナ
結果
Fig.1 は,乾季の水位変化に伴う水質変化を示した.
ムを経て南シナ海に注ぐ,アジア屈指の国際河川である.
11 月は雨季が終了した直後であり,その水質分布は,
広大な流域面積(795,000km2 )を誇るメコン河の流域の
トンレサップ川を通じて流入したメコン河の逆流水の
中にトンレサップ湖が存在する.トンレサップ湖は,乾
流入が終えた直後の水質分布を表している.メコン河の
季のおける湖面積が琵琶湖の約 4 倍(約 3,000km2 )に
EC は高く(200μS/cm)水質は Ca-HCO3 型であった.ト
達する広大な湖であり,かつ,メコン河からの逆流水の
ンレサップ湖全体の EC が 80-100μS/cm でメコン河の水
混入により湖水位の季節変化が極めて大きい湖として
質組成と類似していることが明らかとなった.これに対
知られている.
し,トンレサップ湖に流入する Seim Reap 川などの支流
トンレサップ湖の調査は,カンボジアやその周辺諸国
の溶存成分が乏しく EC は 13-80μS/cm であり,水質組
における長年の戦乱,内紛や政情不安などのため,水環
成も異なる.また,1・3・5 月の水質分布より,特に北
境や生態系の現況について十分に行なわれておらず,か
部湖岸部にて変化が認められ,EC が低下するだけでな
つての調査結果も散逸しているのが現状である.よって,
く,Na+ ・Cl- の割合が増加していることが確認された.
学術上の希少性ならびに社会的重要性から,トンレサッ
したがって,乾季における水質変化は,雨季にメコン
プ湖の理化学的特性の形成機構や生態系の維持機構を
河の逆流水により水位が上昇するとともに溶存成分に
早急に評価することは必要であると考えられる.
富んだ水質組成を成すが,乾季に水位が低下することに
特に,水位変動に伴い湖の水質特性が季節によって変
化することが予測されることから,メコン河やトンレサ
よって溶存成分に乏しい流入河川からの影響により特
に河口部において水質変化がすると考えられる.
ップ湖流域の河川水の流入・流出と湖内部での湖水の挙
動が同湖の水質特性の形成にどのように寄与している
かに注目して考察をする.
2.
研究方法
本研究は,カンボジア・トンレサップ湖を対象として,
2004 年 11-12 月,2005 年 1 月,2-3 月および 5-6 月に
行なった.各地点では,深度・水温・電気伝導度(EC)・
Chl-a・濁度・pH・DO を多成分水質測定器(AQ1180(ア
レック電子))を用いて測定した.水質分析は,HCO3は 4.3Bx 法,その他の無機主要成分(Cl-,SO42-,NO3-,
Ca2+,Mg2+,K+ ,Na+ )はイオンクロマトグラフィーに
よって分析を行なった.
Fig.1 Distribution of water quality in Lake Tonle Sap
at dry season.
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