動静脈分離のための収縮・拡張期自動検出ソフト(FBI-Navi)の 使用

動静脈分離のための収縮・拡張期自動検出ソフト(FBI-Navi)の
使用経験について
公立大学法人福島県立医科大学附属病院 放射線部
○高済 英彰
清野 真也
池田 正光
(Takasumi Hideaki)
(Seino Shinya)
(Ikeda Masamitsu)
樵 勝幸
大葉 隆
村上 克彦
(Kikori Katsuyuki)
(Ohba Takashi)
(Murakami Katsuhiko)
佐藤 孝則
遊佐 烈
鈴木 憲二
(Satoh Takanori)
(Yusa Takeshi)
(Suzuki Kenji)
【目的】
FBI法を用いた下肢の非造影MRAにて動静脈分離を行う際には、最適な収縮期及び拡張期を検出する
ことが重要である。従来は、ECG-prep撮像を行い、撮像者の目視で最適時相を決定していたが、その決
め方において悩むことがあった。今回、収縮・拡張期の自動検出ソフトFBI-Navi「以下Navi」が導入された
ので、その使用経験について報告する。
【方法】
使用機器は東芝社製Excelart Vantage 1.5T XGV Ver9.20。健常ボランティア5名及び有症患者5名の
下肢MRAにおいて、Naviを用いた自動検出でどの程度正確に収縮・拡張期を示すかを検討した。また、従
来の目視による方法とNaviを用いた方法との検査時間を比較した。更に、ROIの設定方法の違いにより信
号強度曲線がどう変化するかについても検討した。
【結果・考察】
NaviはECG-prep画像から信号強度曲線を算出し、信号値の最も低い部分「以下、低値」と最も高い部分
「以下、高値」を表示する。健常ボランティアにおいては、低値は収縮期、高値は拡張期を示した。更に
Naviが示す時相でFBI撮像を行った結果、全例とも動脈が良好に描出された(Fig.1)。自動で収縮期・拡張
収縮 拡張
収縮期
INTENSITY
拡張期
i(HR55)
ka(HR67)
ki(HR62)
s(HR54)
t(HR58)
拡張期から外れた
0
100
200
300
ECG-prep
400
500
600
700
800
900
1000 1100
ms
FBI
Fig.1 健常ボランティア5名のECG-prep信号強度
グラフ(Navi-auto) (上)。FBI-Naviによる画像
(下)
0%
10%
20%
30%
ECG-prep
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
FBI
Fig.2 有症患者5名によるECG-prepの収縮・
拡張期(Navi-auto)(上)。FBI-Naviによる
動脈描出不良例(下)
期を決定する場合の検索時間は、目視では約2
分かかっていたが、Naviを用いることにより20秒
に短縮された。有症患者においては、低値は、
全例とも収縮期を示したが、高値に関しては、拡
張期から外れる症例があった。更に、その症例
において、Naviが示した時相でFBI撮像を行っ
た結果、動脈の描出が良好に得られなかった
(Fig.2)。しかし、手動で拡張期に移動しFBI撮
像を行った結果、動脈が良好に描出された
(Fig.3)。手動による最適時相検索時間は、約1
分30秒となりやはり目視に比べ短縮された。
次に、ROIの設定方法を変えた場合の信号強
度曲線の変化について、症例を交えて報告する。
Fig.4は、ROIを全体に広く設定した場合に信号
強度曲線が乱れたため、血管の場所に絞って
設定した結果、良好な信号強度曲線が得られた
症例である。本例に関しては、小腸内容液など
による影響が大きかったのではないかと考えら
れる。Fig.5は、ROIを左右の血管別々に設定す
ることにより、信号強度に差が出た症例である。
Autoで外れた患者さんの信号強度曲線
4500
4000
3500
3000
移
動
2500
2000
1500
1000
500
0
0
100
200
300
FBI(AUTO)
sys50
sys50 dias250
dias250
400
500
600
700
800
900
1000
FBI(マニュアル)
sys50
sys50 dias650
dias650
Fig.3 拡張期時相をマニュアルで調整し動脈の描出
が改善された症例
L
R
FBI
Fig.4 ROIを左右の血管に設定して良好な信号
強度が得られた症例
Fig.5 ROIを左右の血管に設定して
信号強度に差がでた症例
【まとめ】
Naviにより収縮期・拡張期の検索時間は短縮されたが、臨床では信号強度曲線が乱れる可能性があり、
表示される時相に関しても、必ずしも最適時相とは限らないため、信号強度曲線とprepのサブトラクション像
を確認しながら、手動で最適時相を検索することを念頭においてNaviを使用する必要があると考えられる。
また、Naviを用いた検索の自動化には、更なるアルゴリズムの改良が望まれる。ROIの設定により信号強度
曲線が変化するため、設定方法を工夫することにより様々な場面で応用が利くということが理解できた。
Naviの信号強度曲線の精度は、ECG-prep画像による影響が強いため、より正確なECG-prep撮像を心が
ける必要がある。