修 士 論 文 の 和 文 要 旨 電気通信大学大学院 氏 論 要 名 文 題 目 電気通信学研究科 長岡 亜季則 博士前期課程 学籍番号 電子工学専攻 0332038 透明電極薄膜の特性と構造解析 旨 近年、LEDの発光効率や輝度の上昇と価格の低下が進み、安価で信頼性の高い製 品が手に入るようになった。今後は蛍光灯などの照明と置き換わっていくと考え られる。この流れを受け、当研究室においてはLEDが家庭用照明に代替するデバイ スとなる際には、現在のような点光源ではなく面光源としての需要が高まると考 え、大面積発光LEDの開発を試みている。 大面積発光LEDの実現には、透明導電膜を用いた電極の利用が必要不可欠であ る。本研究はこの透明電極を用いたLEDの発光効率を高めるための改善策を探るた め、いくつかのアプローチを行った結果を報告する。内容は大きく二つに分ける ことができる。一つは従来から当研究室において利用されているITO薄膜を用い て、もう一つは材料をZnOに変更してLEDの発光効率を高めることで、ともに大面 積化を目的としている。 前者はITO薄膜が起こす薄膜干渉を制御することにより、利用する波長の透過率 を高められるよう、膜厚と薄膜干渉の関係についてシミュレーションを行うもの である。当初は単一屈折率ITO薄膜でシミュレーションする予定であったが、実際 の実験結果と一致させることが不可能であったため、ITO薄膜の内部構造について 新たに2つの屈折率を持つ2層構造モデルを提案し、その検証を行った。その結果、 実験値とシミュレーション結果の良い一致を得ることができた。また、このモデ ルの妥当性をさらに確かめるため、エリプソメータでの屈折率測定および断面 FE-SEM観測を行った。そしてエリプソメータでの測定値とモデルからの屈折率が 一致し、SEMからもシミュレーションで仮定したモデルに対応する膜構造が観測さ れた。 後者においては、ITOでは物性的に吸収がある紫外光および赤外光波長領域にお ける効率向上のため、ZnOを材料とした酸化物透明導電膜の成膜条件による特性の 変化を評価したものである。成膜にはRFマグネトロンスパッタ装置を用い、Gaド ープZnOをターゲットとして用いた。評価方法としては抵抗率測定、透過率測定、 XRD測定、ホール測定を行い、またRTAによる成膜後の加熱の影響を調べた。電気 特性は現在のITOと同等の品質を持ち、最大可視光透過率97%を達成することがで きた。また応用としてSiC基板にZnO膜を成膜し、CTLM法にて接触抵抗の測定を試 みたが、本研究において行ったSiC基板上への直接成膜においては、接触抵抗は高 抵抗を示した。
© Copyright 2024 ExpyDoc