触仮現運動中に生じる知覚特性の研究

修
研究科・専攻
氏
名
論 文 題 目
要
士
論
文
の
和
文
要
旨
大学院 電気通信学研究科 人間コミュニケーション学専攻
博士前期課程
大島 沙也佳
学籍番号
0836002
触仮現運動中に生じる知覚特性の研究
旨
触覚は従来福祉など限られた分野でしか利用されなかったが、近年エンタテイメントやナビゲ
ーションなど一般的な用途への応用が盛んになってきた。しかしながら触覚アプリケーションの
一般への普及速度は緩やかであり、その一因は触覚提示の難しさにある。皮膚は全身に存在する
ため、現実に起こる事象をありのまま提示するには全身に刺激子を配置しなければならず、その
ため装置が巨大化してしまうのだ。この問題の解決法として、しばしば触覚の知覚特性が利用さ
れる。仮現運動と呼ばれる錯覚は、離れた距離に振動子をおいても、振動子を現実に動かすこと
なく刺激の運動感を提示できることから、ナビゲーションへ応用されることが多い。しかしなが
ら、それらアプリケーションが提示する刺激の質感は常に均一であるという問題点があった。一
般への普及を目指すならば、使い心地などの要素を左右する刺激の質感を自由に提示する必要が
ある。そこで本研究では、仮現運動の運動刺激の質感がどのような条件下で変化するのか調べる
ことを目的とし、仮現運動生起に強く関わるパラメータである“振動周波数”、
“振動子の数”、
“刺
激持続時間”を各々変えて仮現運動を提示して、運動刺激にどのような変化が生じるか調べた。
実験の結果、振動周波数が高くなるにつれ運動刺激の太さが細くなることが判明した。振動周
波数の変化によって、皮膚状の 1 点に与えた刺激の大きさが変化することは既に知られており、
本実験の結果はこれと類似するものだと思われる。また周波数ほどの影響力は無いが、刺激持続
時間が長くなるにつれ運動刺激が太く感じられるようになることも判明した。この現象は 1 点刺
激を与えた場合には生じず、仮現運動を提示した場合にのみ観測された。また振動子の数は運動
刺激の太さに影響を与えなかった。本実験により得た知見を用いることで、仮現運動提示の際に
運動刺激の太さを変えて提示することが可能となった。