修 士 論 文 の 和 文 要 旨

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学
氏
論
名
文
題
目
研究科
稲生
博士前期課程
剛
知能機械工学
学籍番号
専攻
0634008
固溶強化Cu-Sn-P合金双結晶の粒界における
動的再結晶の方位差依存性
要
旨
1. 目 的
動的再結晶は高ひずみエネルギーが不均一に集中した箇所で発生しやす
く、優先的な核形成サイトとして結晶粒界が上げられる。粒界すべりが起
こらない条件下での、動的再結晶の発現に及ぼす粒界方位差の影響、なら
び に 固 溶 元 素 の 働 き に よ る 影 響 に つ い て 4NCu を 比 較 材 と し て 調 査 す る 。 本
実 験 で は [ 0 1 1 ] ね じ れ 粒 界 を 持 つ 固 溶 強 化 型 の Cu合 金 で あ る Cu-Sn-P合 金
を 用 い て 、粒 界 に 対 し て 垂 直 方 向 に 高 温 圧 縮 試 験 を 行 い 、粒 界 近 傍 で の 動
的 再 結 晶 挙 動 と 核 生 成 メ カ ニ ズ ム に つ い て 調 査 す る こ と を 目 的 と す る 。再
結 晶 粒 の 結 晶 方 位 分 布 、高 温 変 形 中 の 母 相 結 晶 回 転 に 伴 う 方 位 差 変 化 に つ
いても調査する。
2.方法
ブ リ ッ ジ マ ン 法 を 用 い て 方 位 差 が そ れ ぞ れ 1 0 ゚ ~ 3 0 ゚ の [ 01 1 ] ね じ れ 粒 界
を 持 つ C u -S n - P 合 金 双 結 晶 及 び 4 N C u双 結 晶 を 作 製 し た 。 放 電 加 工 機 を 用 い
て粒界が圧縮軸に対して垂直方向となるように双結晶試験片を切り出し
.
た 。そ し て 真ひずみ速度έ =2.0×10 -3 ~2.0×10 -1 s -1 、T=1073KでCu-Sn-P合金双結
晶についてはε=0.2、0.5、1.0まで、4Ncu双結晶についてはε=0.2、0.8まで単軸
圧縮を行い、組織を観察するため急冷した。圧縮軸に対して平行な面に切り出し、
OIM解析を用いて動的再結晶の発生過程を調査した。
3.結果
(1) Cu-Sn-P合金双結晶及び4NCu双結晶にて高温圧縮試験を行うと、初期方位差が
大きいほど応力レベルが低下した。これはすべり面の交差する角度が高方位
差のものほど大きく、粒界すべりによる応力緩和効果と考えられる。また、
4NCuに比べてCu-Sn-P合金では変形抵抗が最大で1.5倍ほど上昇し、Sn とP添
加の影響が大きく現れた。
(2) Cu-Sn-P 合金双結晶において、初期方位差が大きいものほどひずみ量の増加
に伴い、その粒界方位差の増加の度合いが大きかった。
(3) Cu-Sn-P 合金双結晶において、粒界上及び粒内でも新粒の生成が見られた。
粒界上ではセレーションにより、粒内ではすべり帯が交差した領域が変形帯
となり優先的に新粒が生成した。4NCu の結果と比較すると、Sn、P の添加に
より粒界移動が妨げられセレーションの幅も小さく、動的再結晶粒も小さく
なった。
(4) 動的再結晶粒は、粒界上及び粒内においても、ほぼ全ての粒に関して双晶が
確認でき、多くの場合多次双晶の関係が見られた。