市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 5 月 22 日(金)発行 No.061
市場調査部レポート
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ウィークリー・アウトルック
【アウトルック】
【高金利通貨】
「米ドル買い・ユーロ売り」に一巡感、レンジ相場へ!?
SARB 総裁、近い将来の利上げを示唆か
【アウトルック】 「米ドル買い・ユーロ売り」に一巡感、レンジ相場へ!?
来週の注目通貨ペア:
米ドル/円↓ 一時 121 円台回復も、米の早期利上げ観測が後退、持続力は弱そう。
<材料>米消費者信頼感(26 日)、米 GDP 改定値、シカゴ購買部(29 日)
ユーロ/米ドル↑ ギリシャの年金・公務員給与支払いにメドが立てば、ユーロ高の可能性も。
<材料>ギリシャ年金・公務員給与支払い期限(5 月中)
ポンド/円↑ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨は、利上げの可能性を示唆。
<材料>英 1-3 月期 GDP 改定値(29 日)
トルコリラ/円↓ 政策金利据え置きで一段高だが、6 月総選挙接近で不透明感の高まりも。
<材料>トルコ外国人観光客(27 日)、トルコ貿易収支(29 日)
◆↑↓は筆者が予想する相場の方向性(あくまで予想であり、方向性を保証するものではありません)
今週のレビュー:週前半は米ドル高進展も、FOMC 議事録で伸び悩み
今週の為替相場は、週前半は米ドル高・ユーロ安が進みましたが、週後半は米ドルが伸び悩みました。
米ドル/円は、米 4 月住宅着工が市場予想を上回り、米ドル売り・ユーロ買いポジションの巻き戻しが進展。
一時 121 円台半ばまで上昇しましたが、FOMC 議事録で利上げを急がないスタンスが明らかとなり、週末に
かけて伸び悩みました。ユーロ/米ドルは、クーレ ECB 理事の「QE(量的緩和)を 5、6 月に前倒し」との発言
がきっかけで急落。一時 1.11 ドルを割り込みましたが、FOMC 議事録で米ドルが軟調に転じると、1.11 ドル
台を回復しました。ポンドは、英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨で利上げの可能性が示唆されたほか、
英 4 月小売売上高指数が市場予想を上回り、2008 年 9 月以来の高値を記録しました。
豪ドルは、対米ドルでは一時 5 月初旬以来の水準に下落しましたが、週後半には反発。対円でも軟調が
続きましたが、下げ幅は限定的でした。NZ ドルは、対米ドルで一時 3 月中旬以来の安値を付けましたが、週
後半は下げ止まりました。対円では週前半に下落したあと、週末は反発しました。カナダドル/円は、米ドル
高で週初は軟調も、週後半は反発に転じ、週初の下げ幅を帳消しにしました。
トルコリラ/円は、前週の上昇トレンドが継続。トルコ中銀が政策据え置きを決定すると一時 47 円台に乗せ
ました。南アランド/円は、週前半は横ばいとなりましたが、米ドルが伸び悩むと 10.2 円台を回復しました。
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来週のプレビュー:「米ドル買い・ユーロ売り」に一巡感、レンジ相場へ!?
米・独の「10 年債金利差の縮小」で、米ドルが売られ、ユーロが買われた前週の流れが反転。「金利差が
再拡大」したことで、今週前半は米ドルが買い戻され、ユーロが売り直される展開となりました。
とくに、米 4 月住宅着工件数と建設許可件数が市場予想を上回った 19 日の米・独 10 年債金利差は
1.69%と、5 月 4 日の水準に回復しました。ユーロ/米ドルは、5 月 5 日安値 1.1065 ドルから同月 15 日の
高値 1.1464 ドルまで 8 営業日で 3.6%上昇しましたが、20 日安値は 1.1059 ドルと 3 営業日で 5 月 5 日
からの上げ幅を帳消しにしました。今週のユーロ/米ドルは「スピード調整」局面にあったといえます。
ただ、こうした「米ドル買い戻し・ユーロ売り直し」の流れが来週以降も続くかどうか、やや微妙なようです。
注目された FOMC 議事録では、6 月利上げに消極的なメンバーが多かったことが判明しました。
「多くの参加者が、6 月会合までに利上げ開始の判断をするための十分な情報が入手出来ない」と考えた
ことが明らかとなりましたが、FOMC 以降に発表された経済指標は軟調なものが多かったことから、6 月の
FOMC での利上げの可能性はほぼ無くなり、米ドルの上昇力を削ぐことになりそうです。
来週は、26 日に耐久財受注、消費者信頼感指数など、29 日には第 1 四半期 GDP 改定値、シカゴ購買
部協会景気指数など、さまざまな米経済指標が発表されます。6 月 16-17 日の次回 FOMC に向けて、こ
れら米経済指標を精査する流れが続きますが、米 4 月小売売上高や 5 月 NY 連銀製造業景気指数など
4 月以降も下振れが目立つ現状からは、来週の指標発表の結果が良くても米ドルの上値は重く、もし悪くて
も、再来週以降の指標を見極めたいとの姿勢から、下げ幅は限定的となる「レンジ相場色」が強まる可能性
が考えられます。
その一方、ユーロにとって重石となりそうなのは、やはり「ギリシャ財政懸念」です。
ユーロ高・米ドル安が進行した前週は 5 月 12 日の IMF 返済(7.5 億ユーロ)を実行、懸念が後退したことも
ユーロ高を支えました(IMF の口座から緊急準備金を取り崩したことが、のちほど判明)。しかし、今週に入り、
ギリシャのバルファキス財務相は 6 月 5 日の IMF 返済(3 億ユーロ)について「年金や公務員給与の支払い
を優先する」と発言し、ユーロが下落する場面もみられました。ギリシャは 5 月中に年金・公務員給与支払い
を行う必要があり、さらに 12 日に IMF から引き出した準備金を「数週間以内に」入金する必要があります。
ECB は 19 日に、緊急流動性支援(ELA)を通じてギリシャの市中銀行が借り入れられる資金規模を引き上
げましたが、増加額は 2 億ユーロとごくわずかであり、しかも融資金利は標準的な ECB 融資よりも高いため、
ギリシャの信用リスク低下には繋がらない内容と考えられます。
現行のギリシャ金融支援の枠組みは 6 月末に期限切れを迎えるため、ギリシャのバルファキス財務相は
「支援再開に向け、6 月第 1 週までに合意する必要がある」と述べましたが、債権団との交渉は今後も難航
しそうです。
ギリシャ問題が悪化すると、「レンジ相場色」が強まる米ドルに対してユーロは下落するかもしれませんが、
同問題が好転、または目立った動きがみられない場合は、ユーロ/米ドルは今週の下げ幅を取り戻す動きと
なるかもしれません。
(シニアアナリスト 山岸永幸)
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【高金利通貨】 SARB 総裁、近い将来の利上げを示唆か
SARB(南ア中銀)は 21 日、政策金利を 5.75%に据え置くことを決定しました。SARB は昨年 1 月に
0.50%、7 月に 0.25%の利上げを行った後、5 会合連続で政策金利を据え置いています。
SARB の政策金利の推移
(出所:Bloomberg)
◆21 日の会合でメンバー6 人中 2 人が利上げを主張◆
SARB のクガニャゴ総裁は 21 日の政策会合後の会見で、「インフレ見通しの悪化は、この据え置きのスタ
ンスをいつまでも維持することができないことを示唆している」と指摘。また、「昨年 1 月に(金融政策の)引き
締めを開始した。依然としてそのサイクルにある」との見解を示し、21 日の会合ではメンバー6 人のうち、2 名
が 0.25%の利上げを主張したことを明らかにしました。
クガニャゴ総裁の会見は、SARB の次の一手は「利上げ」であることを改めて示し、しかも利上げは近い将
来に行われる可能性を示唆したと言えそうです。
◆CPI は目標上限を上回るとの見通しを示す◆
SARB はインフレ目標を採用しており、CPI(消費者物価指数)の前年比を中期的に+3〜6%の範囲内に
収めることを目標にしています。
南アフリカの 4 月 CPI は前年比+4.5%と、3 月の同+4.0%から上昇率が加速しました。依然として SARB
の目標の範囲内に収まっているものの、クガニャゴ総裁は 21 日の会見で、インフレ見通しのリスクは上向き
と指摘、CPI は来年第 1 四半期に目標を外れて+6.8%でピークを迎え、その後目標上限の+6%近辺にとど
まるとの見通しを示しました。インフレ見通しの上振れリスクの要因として、エネルギーコストの上昇、食品価
格の上昇、ランド安などを挙げています。CPI が今後目標を外れるまで上昇するとの見通しが、SARB が利上
げ再開に傾いている背景です。
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南アのインフレ率
(出所:Bloomberg)
◆中銀の金融政策スタンスの違いが南アランドの支援材料に◆
ただ、クガニャゴ総裁は先週、「インフレ目標を一時的に外れても対応する必要はないが、持続的な高イ
ンフレとなれば対応する必要がある」との見解を示しています。
今後目標を上回るとの見通しを示しているとはいえ、足もとの CPI は SARB の目標レンジの中央にあること
を考えると、SARB が次回 7 月 23 日の会合で利上げを決定するかどうかは微妙でしょう。今後、CPI などで
インフレ圧力の高まりが確認される必要があるかもしれません。
エコノミストの多くは、SARB が年内に利上げを行うとみているようです。ブルームバーグの調査によると、5
月 21 日時点でエコノミストは 12 人のうち、9 人が年内の利上げを予想しています。「据え置き」の予想は 3
人です。
RBA(豪準備銀行)は今月追加利下げに踏み切り、また RBNZ(NZ 準備銀行)も今年中に利下げを行うと
の観測が強まっています。高金利通貨と言われる国の中銀が金融緩和方向にある中で、SARB が年内に
「利上げ」を行うとみられていることは、南アランドにとってプラス材料です。南アランド/円は一段と上昇する
可能性があります。
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
当社予想
0.0%
5月26日 21:30 【米】耐久財受注 前月比(4月)
市場予想
-0.5%
前回値
4.0%
3月は航空機受注が急増したが、4月はその反動が出そう。設備投資の先行指標となる
非国防資本財(航空機を除く)は3月に前月比-0.4%と低調だった
23:00 【米】消費者信頼感指数(5月)
96.0
95.2
95.2
既報の5月のミシガン大学消費者信頼感指数は大幅な低下となったが、雇用状況を反映
しやすいコンファレンスボードの本消費者信頼感指数は比較的堅調か
5月27日 23:00 【加】BOC政策金利発表
0.75%
0.75%
0.75%
OIS(翌日物金利スワップ)によれば、「次の一手」は利下げが見込まれるが、5月利下げ
の予想確率は1割未満にとどまる
5月29日
G7財務相・中央銀行総裁会議(~29日まで。独、ドレスデン)
8:30 【日】消費者物価指数 前年比(4月)
0.0%
【日】消費者物価コア指数 前年比(4月)
0.5%
【日】消費者物価コアコア指数 前年比(4月)
0.3%
-
2.3%
2.2%
2.1%
前年比では消費税率引き上げの物価押し上げ効果がほぼ消滅。実力で0%台前半のイ
ンフレ率がヘッドラインにも現れることに
21:30 【米】GDP改定値 前期比年率(1-3月期)
-0.5%
-0.9%
0.2%
3月の貿易収支の赤字が予想以上に大幅だったことで、速報値からの下方修正は不可
避か
23:00 【米】シカゴ購買部協会景気指数(5月)
54.5
53.0
52.3
同指数は2-3月に50割れまで急落しており、4月に小反発した。5月はさらなるフォロース
ルーが期待される
市場予想はBloomberg、5月22日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年11月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
67%
33%
英国
0.50
14%
72%
14%
NZ
3.50
89%
11%
0%
カナダ
0.75
16%
84%
0%
ユーロ圏
0.05
69%
30%
1%
豪州
2.00
52%
48%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。5月21日時点
出所:Bloombergより作成
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<執筆者>
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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