市場調査部レポート - マネースクウェア・ジャパン

2015 年 5 月 29 日(金)発行 No.012
市場調査部レポート
0
マンスリー・アウトルック(2015/6)
「調整」の終わり!?
~2015 年 6 月の見通し~
《ファンダメンタルズ》
さまざまな「調整」が既に終わったか、まもなく終わる可能性があります。ドルの実効レートは「調整」が終わ
って反発しています。米景気の「調整」も終わりつつあるようです。ドイツ長期金利の急反発とユーロ高という
「調整」も一巡した模様です。いずれも、ドル高要因と考えられます。足もとのドル円の急騰は「スピード調整」
の可能性を示唆していますが、日銀の追加緩和期待が高まれば、「円安」が一段と進むかもしれません。
米国の利上げが現実味を帯びるならば、高金利通貨にとり逆風かもしれません。ただ、各国の金融政策
の「違い」に注目したいところです。利上げが予想される南アや、やや織り込み過ぎの利下げ観測が後退す
る可能性のある NZ などの通貨は比較的堅調かもしれません。トルコは中銀が利上げできるかに注目です。
<主要国の動向>
・【米国】 ドル高をサポートする利上げはあるか、それはいつか
・【日本】 「円ポジション」は再びショートが拡大するか
・【ユーロ圏】 ユーロはなぜ反発したか、「パリティ」はないか
・【英国】 「EU 離脱」はポンド安要因か
<資源国・新興国の動向>
・【オーストラリア】 2 日の RBA 政策会合、今後の金融政策に言及されるかどうか注目
・【ニュージーランド】 11 日 RBNZ 政策金利発表、「据え置き」か「利下げ」か
・【カナダ】 中銀は政策金利を据え置き、利下げは打ち止めか
・【トルコ】 総選挙後にリラ高になるか
・【南アフリカ】 SARB 総裁、近い将来の利上げを示唆
《テクニカル・予想レンジ》
・【ドル円 : 118.5 ~ 127.5 円】
下値はマイナス 1σ(シグマ)、上値は先行きのプラス 3σを想定
・【ユーロ円: 126.0 ~ 139.5 円】
下値は 4 月安値水準、上値は先行きのプラス 1σを想定
・【ポンド円: 182.0 ~ 196.0 円】
下値は週足基準線、上値は先行きのプラス 3σを想定
・・・ほか当社取扱 11 通貨ペアのテクニカルポイントを解説
1
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≪ファンダメンタルズ≫
6 月のテーマは、「調整の終わり」と考えています。ドルの実効レートは 3 月中旬にピークをつけて、下落して
いましたが、足もとで反発しています。ドルの「調整」は終わり、改めて経済ファンダメンタルズの格差や金融
政策の方向性の違いを反映してドルが堅調に推移するとみています。
ただ、ドルの実効レートが直近ピークを超えて新たな「ドル高」の領域に入れば、米国は警戒感を強めるか
もしれません。ドルが各国通貨に対して等しく上昇すると仮定すれば、新たな「ドル高」領域とは、対円で
127 円超、対ユーロで 1.06 ドル超です。<詳細は 29 日配信のスポットコメント「実効レートでみる米国の「ド
ル高」警戒水準とは?」をご参照ください>
米国景気は「調整」局面、いわゆるソフトパッチを終えて、回復基調を強めています。昨年後半のように、
利上げ観測が急速に高まり、ドルが一人勝ちとなった状況が繰り返されるかどうか、それは今後の経済指標
次第かもしれません。ただ、ソフトパッチを通り過ぎたことで、FRB はいよいよ利上げに向けて舵を切り始めそ
うです。
今年に入って、「円ショート(売り)」のポジションは大きく減少し、「調整」が進みました。今後、改めて「円シ
ョート」ポジションが積み上がるのでしょうか。日本の消費者物価が日銀の 2%を大きく下回って前年比 0%
台で推移しそうななか、追加緩和期待が改めて「円ショート」の材料になるかもしれません。
4 月以降、ドイツの長期金利が急騰し、ユーロ高をもたらしました。ただ、ドイツの長期金利低下とユーロ安
からの「調整」は既に終わった可能性があります。ギリシャとユーロ圏など債権団との交渉は難航しており、
一時的にせよギリシャはデフォルト(債務不履行)するかもしれません。「秩序だったデフォルト」であれば、金
融市場の動揺は小さいかもしれませんが、ユーロ安の材料にはなりそうです。
エコノミストの政策金利予想
現在
2015年
6月末
9月末
12月末
2016年
3月末
6月末
米国
0.25
0.25
0.45
0.70
0.95
1.20
日本
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
0.10
ユーロ圏
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
英国
0.50
0.50
0.55
0.60
0.80
0.95
カナダ
0.75
0.75
0.70
0.70
0.75
0.85
豪州
2.00
2.00
1.95
1.95
1.95
2.00
NZ
3.50
3.45
3.40
3.40
3.50
3.75
南アフリカ
5.75
5.75
5.85
6.05
6.30
6.40
トルコ
7.50
7.50
7.40
7.45
7.60
7.70
政策金利の水準。単位:%
Bloombergが調査したエコノミスト予想の平均値(調査は主に5月実施)
対象エコノミストの人数は国によって異なる(米国74人、南ア10人など)
出所:Bloombergより作成
2
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米国が利上げに近づくならば、高金利通貨にとって逆風になりそうです。ただ、各国の金融政策の「違い」
には注目する必要があるでしょう。利上げが予想される南アや、やや織り込み過ぎの利下げ観測が後退す
る可能性のある NZ などの通貨は比較的堅調に推移するかもしれません(トルコはリラ安が再開すれば、そ
れを止めるのは利上げしかなさそうです)。前ページにエコノミストの政策金利予想を掲載しました。「ピンク」
が利上げの可能性が相応に織り込まれているケース、「水色」が利下げの可能性が相応に織り込まれてい
るケースです。
<主要国の動向>
【米国】 ドル高をサポートする利上げはあるか、それはいつか
米景気サプライズ指数は足もとでようやく上昇に転じてきました。予想を上回る(ポジティブ・サプライズの)
経済指標が増えてきたことを意味しています。昨年は寒波の影響がはく落したことで 3 月以降に「V 字」回復
しましたが、今回は軟調局面が長引きました。それでも、今後の経済指標が改善を示し続ければ、利上げ
観測が高まりそうです。
5 月 22 日の講演で、イエレン FRB 議長は「経済が私の予想通りに改善を続けるならば、年内のいつかの
時点で利上げを開始するのは妥当だ」と語りました。また、フィッシャー副議長は 26 日の講演で、「予測の
不確実性という制約があるなかで、(金融政策の)先行きに対して市場に準備させるために、出来る限りのこ
とをやってきた」、「正常化のタイミングやペースに関して、市場は驚くべきではない」と語りました。副議長は
利上げのタイミングに言及したわけではありませんが、市場に利上げの接近を意識させるものでした。
6 月 16-17 日の FOMC で利上げが実施されることはなさそうです。4 月の FOMC の時点で「多くの参加者
が 6 月の利上げはありそうにないと考えた」ことが議事録で明らかになりました。それでも、6 月の FOMC では、
各参加者の利上げ時期や幅に関する予想と経済見通しが公表され、イエレン議長の記者会見も予定され
ています。「9 月利上げ開始」の観測が高まるかもしれません。要注目でしょう。
米景気サプライズ指数
0.8
ポジティブ・サプライズ
0.6
↑
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
↓
-0.8
ネガティブ・サプライズ
-1.0
2012
2013
2014
2015
「景気サプライズ指数」は、市場予想を上回る(ポジティブ・サプライズの)経済指標が
増えると上昇し、下回る(ネガティブ・サプライズの)経済指標が増えると低下する
出所:Bloombergより作成
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【日本】 「円ポジション」は再びショートが拡大するか
4 月の消費者物価は、食料とエネルギーを除く「コアコア」が前年比+0.4%と、昨年 4 月の消費税増税の
影響がはく落したことで、3 月の同+2.1%から大きく落ち込みました。日銀は 4 月の「経済と物価情勢の展望
(展望レポート)」で、物価目標 2%の達成を従来の「2015 年度を中心とした時期」から「2016 年度前半」
へと先送りしました。また、黒田総裁は 5 月の会合後の会見で「追加緩和は、今は必要ない」との姿勢を堅
持しました。もっとも、原油価格の上昇が続く場合を除けば、今後 1 年程度で物価目標を達成するのは難し
いとみられます。新たな展望レポートが公表される 10 月の会合などに向けて、黒田総裁の言う通り、日銀が
「必要であれば躊躇しない」で追加緩和に踏み切るとの期待が高まるかもしれません。
米 CFTC(商品先物取引委員会)によれば、「円ショート(売り)」のポジションは年初から縮小が続き、5 月
中旬にはほぼ中立になっていました。日銀の追加緩和期待が高まれば、それを材料に新たなショート・ポジ
ションの構築が進むかもしれません、その場合は、円安要因になりそうです。
日本の消費者物価上昇率
(前年比%)
3.0
2.0
日銀の目標:2.0%
1.0
0.0
-1.0
コアコア
-2.0
2005
2006
2007
2008 2009年 2010
2011
2012
2013
2014
2015
「コアコア」は食品とエネルギーを除く
2014年4月の消費税増税(5⇒8%)の効果は+1.7%
出所:Bloomberg、日銀資料より作成
【ユーロ圏】 ユーロはなぜ反発したか、「パリティ」はないか
4 月中旬から 5 月中旬までユーロが反発しました。これはドイツの長期金利が急反発したことが背景でした。
他の主要国の長期金利が 1 月末頃に原油価格の反発を受けて上昇に転じた一方で、ドイツの長期金利は
ECB の QE(量的緩和)開始やギリシャ情勢を材料に低下基調を続けました。しかし、ドイツの長期金利がゼ
ロ%近辺まで低下したのはさすがに行き過ぎだったのでしょう。もっとも、米国などの長期金利の 1 月末以来
の上昇幅と同じくらいドイツの長期金利は短期間に上昇しており、キャッチアップは終了したとみられます。
ドイツの長期金利が再び低下基調に転じるか、あるいは英米の長期金利の上昇についていかなければ、
ユーロ安要因となりそうです。ただし、ドイツをはじめユーロ圏景気は相応に回復基調をみせているので、「パ
リティ(1 ユーロ=1 ドル)」まではかなり遠いかもしれません。
ギリシャとユーロ圏など債権団との交渉は引き続き難航しています。6 月には 4 回計 16 億ユーロの IMF へ
の返済が控えています。ギリシャ政府は残りの支援金 72 億ユーロを獲得できなければ、返済は不可能であ
4
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り、履行する意思がないことを明らかにしています。土壇場で交渉が合意に至る可能性はありますが、合意
が遅れて支払いが遅延するなどして、ギリシャが一時的にせよデフォルト(債務不履行)状態に陥る可能性
はありそうです。債務者が返済の意思を保持したままで支払いの遅延を通達する、あるいは債権者と合意し
たうえで債務の減免を行うなどの「秩序だったデフォルト」のケースでは、金融市場の混乱は大きくないかも
しれませんが、ユーロ安要因にはなりそうです。
ギリシャの主要な支払期限
5月中
年金・公務員給与支払い
6月5日
12日
16日
19日
6月中
6月30日
IMF返済 3億ユーロ
IMF返済 3.5億ユーロ
IMF返済 5.8億ユーロ
IMF返済 3.5億ユーロ
年金・公務員給与支払い
ギリシャ支援期限
7月20日
ECB保有の国債 35億ユーロの償還
8月20日
ECB保有の国債 32億ユーロの償還
7月以降も、IMF返済や、年金・公務員給与の支払い等は
発生するが、本表では割愛
出所:Wall Street Journal紙から作成
【英国】 「EU 離脱」はポンド安要因か
5 月 7 日の総選挙では、予想外に与党保守党が単独で過半数の議席を獲得しました。選挙結果は当面
の政治の不透明感を払拭し、ポンド上昇に寄与しました。ただし、キャメロン首相は 2017 年末までに「EU離
脱」の国民投票を行うと約束しています。EU離脱は、英国経済や金融市場の地盤沈下を通じてポンド安要
因になるとみられます。国民投票はまだ遠い先ですが、英国はその前に残留条件として移民規制などEU
改革の交渉を始めるでしょう。その過程で、英国が「離脱カード」をちらつかせるようであれば、ポンドに下押
し圧力が加わりそうです。
一方、BOE(英中銀)は「次の一手」が利上げである可能性を強く示唆しています。今後の経済指標によっ
て利上げ観測が高まるようであれば、目先的にはポンドが上昇する局面があるかもしれません。
総選挙 (2015年5月7日)
保守党勝利
労働党勝利
EUとの条件交渉
国民投票 (2017年末ま でに実施)
EU離脱
EU残留
出所:M2J作成
5
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<資源国・新興国の動向>
【オーストラリア】 2 日の RBA 政策会合、今後の金融政策に言及されるかどうか注目
RBA(豪中銀)は 5 月 5 日の会合で、政策金利を 0.25%引き下げ過去最低の 2.00%とすることを決定し
ました。RBA の利下げは 2 月に続いて今年 2 回目でした。
声明では、今後の金融政策について 4 月の「一段の緩和が適切となる可能性がある」との文言が削除さ
れ(*金融政策について言及なし)、豪州経済に対する見方も 4 月から前向きなものに変化しました。
これを受けて、市場では RBA の利下げ打ち止め観測が浮上。利下げが行われたにも関わらず、豪ドルは
上昇し、豪ドル/円は 5 月 14 日に一時 97.24 円と約 4 か月ぶりの高値をつけました。
ただ、18 日に RBA のロウ副総裁は「必要ならば利下げを行う余地は依然としてある」と発言。また、19 日
に公表された 5 日の会合の議事録で「ガイダンスがなくても、今後の政策行動の余地は制限されない」とメ
ンバーが考えていたことが明らかとなり、追加利下げの可能性は依然残っていることが示されました。
6 月 2 日に RBA は政策金利を発表しますが、5 月の利下げ効果を見極めるため、2.00%に据え置くとみ
られます。今回最大の焦点は、声明で“今後の金融政策について言及するのか”になりそうです。上述のロ
ウ RBA 副総裁の発言や議事録をみると、言及があるとすれば「追加利下げの可能性がある」ということにな
りそうです。
市場の金融政策見通しを反映する OIS(翌日物金利スワップ)によると、今年 11 月の会合に向けて RBA
が政策金利を 2.00%に据え置く確率は低下していきます。それでも、10 月までは据え置きの確率が 50%
を超えており、10 月までの市場のメインシナリオは「据え置き」となっていることが確認できます。
仮に 2 日の声明で追加利下げの可能性に言及された場合、このシナリオが変化し、豪ドルに下押し圧力
がかかるかもしれません。
市場が織り込む今年 11 月までの RBA の政策金利の確率
*OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。5 月 28 日時点
出所:Bloomberg より作成
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【ニュージーランド】 11 日 RBNZ 政策金利発表、「据え置き」か「利下げ」か
RBNZ(NZ 中銀)は 4 月 30 日の会合で、政策金利を 3.50%に据え置きました。ただ、今後の金融政策の
方向性で大きな変化がみられました。
3 月の会合時の声明では、「将来の政策金利の調整が上昇あるいは低下になるかは今後の経済データ
次第」とし、“利上げと利下げの両にらみ”の姿勢を示しました。それが 4 月 30 日の声明では、「現時点で利
上げは検討していない」として利上げの選択肢を排除。さらに「需要が鈍化し、インフレ圧力が一段と低下す
れば、政策金利の引き下げが適切になるだろう」と表明し、利下げの可能性に言及しました。
RBNZ が利下げの可能性に言及したことで、市場では RBNZ の利下げ観測が再燃。さらに乳製品価格の
下落も下押し圧力となり、NZ ドル/円は 5 月 12 日に一時 87.00 円と約 2 か月ぶりの安値をつけました。
NZ ドルは、6 月 11 日の RBNZ の政策金利発表が最大の相場材料となりそうです。市場では、RBNZ は年
内に利下げ(0.25%ずつ計 2 回との見方も)に踏み切るとみられており、市場の金融政策見通しを反映する
OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場は 5 月 28 日時点で、RBNZ が年内に利下げを行う確率を約 90%
織り込んでいます。
11 日の会合の利下げの確率は 70%程度織り込まれています。ただ、3.50%に据え置かれる確率も
30%程度あることから、NZ ドルは RBNZ の決定に素直に反応しそうです。「利下げ→NZ ドル下落」「据え置き
→NZ ドル上昇」の展開が予想されます。ただ、据え置かれたとしても RBNZ の利下げ観測は残るとみられる
ことから、NZ ドルは次第に上値が重くなるかもしれません。
市場が織り込む今年 12 月までの RBNZ の政策金利の確率
*OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。5 月 28 日時点
出所:Bloomberg より作成
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【カナダ】 中銀は政策金利を据え置き、利下げは打ち止めか
BOC(カナダ中銀)は 27 日、政策金利を 0.75%に据え置きました。決定後の声明によると、「原油安によ
って所得が減少している可能性を考慮すると、最近の経済指標は個人消費が比較的堅調であることを示
唆した」ことが背景でした。原油価格(WTI 先物)は 3 月中旬に 1 バレル=42 ドルまで下落した後、足もとで
は 60 ドル近辺で推移しています。
BOC は今年 1 月 21 日にサプライズの利下げを実施しました。当時ポロズ総裁は、「原油安により、インフレ
見通しや金融市場の下方リスクが増大しており、そうしたリスクに対する保険である」とコメントしました。同総
裁は 4 月 21 日の講演で、「あの『保険』は適切な分量であった」と語り、追加利下げが検討対象でないこと
を示唆しました。一方で、自身の予想の最大のリスクは「米国景気の上振れ」だとして、カナダ景気が米景
気にけん引されるシナリオにも言及しました。今後、原油価格が再び下落することがなければ、結果的には
1 月の利下げ 1 回で打ち止めだったということになるかもしれません。
カナダの政策金利
7%
BOC政策金利
6%
5%
4%
3%
2%
1%
0%
2000
2003
2006
2009
2012
2015
出所:Bloomberg より作成
【トルコ】 総選挙後にリラ高になるか
6 月 7 日の総選挙の後はリラ高になるとの見方があります。政治の不透明感が払拭されることに加えて、
エルドアン政権からの圧力が低下することで TCMB(トルコ中銀)が利上げに動き易くなるとみられることが背
景です。
ただし、選挙の結果によって、トルコリラへの影響は異なるでしょう。以下に 3 つのシナリオを考察します。
第 1 は、与党 AKP(公正発展党)が大勝するケース。獲得議席数が半数(275)を超え、6 割(330)に達
すれば、憲法改正の国民投票を発議できます。3 分の 2(367)以上となれば、国民投票なしで憲法を改正
できます。このシナリオでは、憲法改正により大統領権限が今以上に強化されるので、外国投資家はトルコ
を敬遠するかもしれません(リラ安要因)。
8
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第 2 は、AKP が過半数握るも、6 割に満たないケース。現状が維持され、かつ憲法改正はなくなるので、
政治の不透明感は払拭されそうです。リラにとってのベスト・シナリオでしょう。
第 3 は、AKP が過半数に達さないケース。連立工作がなされるでしょうが、政治は安定を欠く状況が続く
可能性があるので、リラ安要因となりうるでしょう。
なお、クルド系の HDP(人民民主主義党)が 10%の足切りラインを超えて議席を獲得できれば、AKP から
議席を奪うことになりそうです。一方で、HDP は、議席獲得に至らなければ、「不服従」の市民運動を展開す
るとしており、HDP の動向は選挙後の政治情勢に対して影響しそうです。
インフレ率が TCMB の目標 5%を上回って推移するなか、選挙後初の 6 月 23 日の会合で、どのような判
断が下されるかも興味深いところです。会合前には TCMB を試すようなリラ売り仕掛けが出るかもしれませ
ん。
【南アフリカ】 SARB 総裁、近い将来の利上げを示唆
SARB(南ア中銀)は 21 日、政策金利を 5.75%に据え置きました。SARB は昨年 1 月に 0.50%、7 月に
0.25%の利上げを行った後、5 会合連続で政策金利を据え置いています。
SARB のクガニャゴ総裁は 21 日の政策会合後の会見で、「インフレ見通しの悪化は、この据え置きのスタ
ンスをいつまでも維持することができないことを示唆している」と指摘。また、「昨年 1 月に(金融政策の)引き
締めを開始した。依然としてそのサイクルにある」との見解を示し、21 日の会合ではメンバー6 人のうち、2 名
が 0.25%の利上げを主張したことを明らかにしました。
クガニャゴ総裁の会見は、SARB の次の一手は「利上げ」であることを改めて示し、しかも利上げは近い
将来に行われる可能性を示唆したと言えそうです。
エコノミストの多くは、SARB が年内に利上げを行うとみているようです。ブルームバーグの調査によると、5
月 21 日時点でエコノミストは 14 人のうち、11 人が年内の利上げを予想しています。「据え置き」の予想が 3
人です。
(チーフアナリスト 西田明弘)
(アナリスト 八代和也)
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来週の主要経済指標・イベント
6月1日
当社予想
53.0
23:00 【米】ISM製造業景況指数(5月)
市場予想
52.0
前回値
51.5
既報のNY連銀やフィラデルフィア連銀の5月の製造業景況指数はやや弱めだった。ドル
高が重石になっている可能性はあるものの、4月の「新規受注」は先行きの改善を示唆
6月2日
13:30 【豪】RBA政策金利発表
2.00%
2.00%
2.00%
RBAは5月に0.25%の利下げを実施したばかりであり、利下げ効果を見極める段階か。今
回の焦点は、声明で追加利下げの可能性に言及されるかどうか。RBAのロウ副総裁は5
月18日に、必要ならば利下げを行う余地は依然としてあるとの見方を示した
6月3日
16:00 【トルコ】消費者物価指数 前年比(5月)
7.80%
8.17%
7.91%
TCMB(トルコ中銀)の目標5%を上回り続けており、6月23日の会合で利上げが検討され
る可能性がある
6月4日
20:45 【EU】ECB政策金利発表
0.05%
0.05%
0.05%
21:30 【EU】ドラギECB総裁会見
少なくとも来年9月までQE(量的緩和)を継続する意向を改めて表明しよう。総裁会見で
は、ギリシャの民間銀行に対するELA(緊急流動性支援)の妥当性を問われる可能性も
ありそう
3:00 【米】ベージュブック(地区連銀経済報告)公表
景気は寒波や港湾ストを背景とした「ソフトパッチ(調整局面)」からの立ち直りが確認で
きるか。雇用や賃金動向はとくに注目される
20:00 【英】BOE政策金利発表
0.50%
0.50%
0.50%
3 7 5 0 億ポンド 3750億ポンド 3750億ポンド
【英】BOE資産購入目標
「次の一手」は利上げとみられるなか、そのタイミングや条件に関するヒントが出てくるか
6月5日
6月7日
21:30 【米】非農業部門雇用者数変化(5月)
24.0万人
22.3万人
22.3万人
【米】失業率(5月)
5.4%
5.4%
5.4%
今年1-4月は平均19.4万人と20万人をわずかに下回った。寒波や港湾ストなど一時的要
因が大きいとすれば、20万人超のペースに戻ることが期待される。賃金の伸びが加速す
るかどうかにも要注目
【トルコ】総選挙
市場予想はBloomberg、5月29日10:00現在。発表日時は日本時間。
2015年11月までの金融政策の市場予想
政策金利%
利下げ
現状維持
利上げ
米国
0-0.25
0%
66%
34%
英国
0.50
15%
71%
14%
NZ
3.50
90%
10%
0%
カナダ
0.75
24%
76%
0%
ユーロ圏
0.05
68%
32%
0%
豪州
2.00
51%
49%
0%
OIS(翌日物金利スワップ)を用いた確率。5月28日時点
出所:Bloombergより作成
10
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【2015 年 6 月の通貨ペア別予想レンジ】
通貨ペア
ドル円
コメント
ユーロ円
コメント
ユーロドル
コメント
豪ドル円
コメント
豪ドルドル
コメント
NZドル円
コメント
NZドルドル
コメント
カナダドル円
コメント
ポンド円
コメント
南アランド円
コメント
トルコリラ円
コメント
予想レンジ
118.5 ~ 127.5
下値はマイナス1σ(シグマ)、上値は先行きのプラス3σを想定
126.0 ~ 139.5
下値は4月安値水準、上値は先行きのプラス1σを想定
1.03 ~ 1.18
下値は先行きのマイナス2σ、上値はプラス1σを想定
93.0 ~ 98.5
下値はプラス0.5σ、上値は先行きの週足先行スパン上限を想定
0.75 ~ 0.83
下値はマイナス2σ、上値は1月高値を想定
87.0 ~ 91.5
下値はマイナス1.5σ、上値は先行きのプラス1σを想定
0.70 ~ 0.76
下値はマイナス3σ、上値は日足先行スパン上限を想定
96.0 ~ 103.5
下値は日足先行スパン下限、上値は先行きのプラス2σを想定
182.0 ~ 196.0
下値は週足基準線、上値は先行きのプラス3σを想定
9.8 ~ 10.5
下値は週足先行スパン下限、上値はプラス1.5σを想定
42.5 ~ 50.5
下値はマイナス2σ、上値は週足先行スパン上限を想定
(2015/5/28時点)
(シニアアナリスト 山岸 永幸)
※このレンジ予想はテクニカル指標を基に客観的に判断しており、相場の行方を決定付けるものではございません。
最終的な投資判断はご自身の意思決断によりお取引頂きますようにお願いいたします。
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《テクニカル》
1.ドル円 (予想レンジ: 118.5 ~ 127.5 円)
[ドル円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+3σ
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
-3σ
・ドル円は、軒並み市場予想から下振れした米経済指標をうけて 5 月中旬まで狭いレンジでの推移を余儀
なくされました。しかし、5 月下旬には市場予想を上回る米経済指標が増加、イエレン FRB 議長が年内の
利上げ開始を示唆したため、一時 124.43 円と 2002 年 12 月以来の水準に上昇しました(5/28 時点)。
・週足ボリンジャーバンドでは、各線の間隔が拡大 = ボラティリティ(変動率)が高まる傾向がみられます。
縮小 ⇒ 拡大は「トレンド相場」への移行を示唆するサインと言われ、プラス 3σに沿った上昇が続けば、
昨年 8~9 月のような上昇トレンドが発生する局面が想定されます。一方、再びプラス 2σを下回る場合は、
利益確定売り先行から、マイナス 1σ水準の 118 円台へと押し戻される可能性もありそうです。
・下値節目としては、マイナス 1σ(5/28 時点 118.29 円)、または 4 月 29 日安値 118.43 円、などが挙げ
られます。
・一方、上値節目としては、プラス 3σ(同 123.68 円) が今後 1 ヵ月で 3.84 円ほど上昇すると推測される
分を加えた 127.52 円、または 21 日線かい離率プラス 5.6%(2014 年以降の最大プラスかい離率)で
127.34 円などが算出されます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のドル円の予想レンジを、118.5 ~ 127.5 円としました。
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2.ユーロ円 (予想レンジ: 126.0 ~ 139.5 円)
[ユーロ円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・ユーロ円週足のボリンジャーバンドで、週足は右下がりで推移する 26 週線を上回る場面がみられました。
週足が同線を上回るのは、今年 1 月初旬以来となります。
・26 週線は右下がりが続いており、ユーロ円は依然として緩やかな右下がりトレンドの途中と解釈されます。
ただ、足もと各線の間隔が狭まり始めており、ボラティリティ(変動率)の低下から急騰または急落のリスクは
低下していると推測されます。
・ギリシャ問題の進展など、ユーロにとってポジティブな材料があれば、ユーロ円は 26 週線を超え、プラス 1
σに近づくかもしれません。逆に、ギリシャ問題の悪化や、ECB の緩和強化など悪材料があれば、再び 4
月安値 126.07 円の更新が視野に入る展開となりそうです。
・下値節目としては、マイナス 1σ(5/28 時点 129.15 円)が今後 1 ヵ月で 2.4 円ほど下落すると推測される
分を差し引いた 126.75 円、または 4 月安値 126.07 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 1σ(同 141.79 円) が今後 1 ヵ月で 2.4 円ほど下落すると推測される分を差し
引いた 139.39 円、または 2014 年 12 月 29 日高値から 2015 年 4 月 14 日安値までの下げ幅の「61.8%
戻し」で 139.10 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のユーロ円の予想レンジを、126.0 ~ 139.5 円としました。
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3.豪ドル円 (予想レンジ: 93.0 ~ 98.5 円)
[豪ドル円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・豪ドル円の週足ボリンジャーバンドで、週足は 26 週線を超え、プラス 1σに近づく場面もみられましたが、5
月 14 日高値 97.24 円近辺には週足一目均衡表の先行スパン上限(97.28 円)もあり、押し戻される形と
なりました。
・26 週線は右下がりが続いており、4 月以降の上昇局面は、昨年 11 月からの下げ過程の中でのリバウンド
と解釈することができます。プラス 1σを超えられない推移が続くと、やや下げ圧力が高まりそうです。
・ただ、各線の間隔が狭まり始めており、豪ドル円は「レンジ相場」に入りかけているのかもしれません。もしも
26 週線を割り込む場合は、マイナス 0.5σ(26 週線とマイナス 1σの中間値)が下値節目とみられます。
同線を大きく割り込まずに推移すれば、プラス 1σを超える水準へと戻す場面も想定されます。
・下値節目としては、マイナス 0.5σ(5/28 時点 93.29 円)、または 2 月 3 日安値から 5 月 14 日高値まで
の上げ幅の「半値押し」で 93.31 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 1.5σ(同 98.19 円)、または週足一目均衡表の先行スパン上限(6/22 時点)で
98.15 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月の豪ドル円の予想レンジを、93.0 ~ 98.5 円としました。
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4.NZ ドル円 (予想レンジ: 87.0 ~ 91.5 円)
[NZ ドル円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/29、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・NZ ドル円週足のボリンジャーバンドで、週足は 26 週線を割り込みましたが、マイナス 1σが下値支持線と
なり、大きな下落は避けられました(日本時間 5/29 13 時現在)。
・4 月中は右上がりで推移していた26週線が、5 月に入り、右下がりに転じました。ただ下落ピッチは緩やか
で、下落圧力が高まったという形ではありません。
・各線の間隔は 4 月後半以降ほぼ変わらず、つまりボラティリティ(変動率)の変化が少ないことを示していま
す。今年 2 月から 4 月中旬にかけて続いた上昇トレンドの反動が、足もとの下落に結び付いたとみられ、右
下がりに転じた 26 週線やマイナス 1σに沿った緩やかな下落が続く可能性はあるでしょう。
一方、マイナス 1σを大きく割り込まなければ、自律反発で 26 週線を再び上回る場面もみられるかもしれ
ません。
・下値節目としては、マイナス 1.5σ(5/28 時点 87.37 円)、または 2 月 3 日安値から 4 月 22 高値までの
上げ幅の「61.8%押し」で 87.22 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 1σ(同 92.19 円) が今後 1 ヵ月で 0.65 円ほど下落すると推測される分を差し
引いた 91.54 円、または 4 月 29-30 日で空いた「マド」の下限 91.14 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月の NZ ドル円の予想レンジを、87.0 ~ 91.5 円としました。
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5.カナダドル円 (予想レンジ: 96.0 ~ 103.5 円)
[カナダドル円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・WTI 原油先物価格が一時 64 ドル近くまで上昇し、産油国通貨であるカナダドルも強含みで推移しました。
・カナダドル円は 5 月 12-13 日に一時 100 円を超えました。100 円超えは今年 1 月 12 日以来の出来事
です。その後は達成感の台頭や原油先物価格の落ち着きもあり、上値の伸びは鈍化しましたが、5 月入り
以降、週足は常に 26 週線を超えており、比較的堅調な推移が続いています。
・週足ボリンジャーバンドでは各線の間隔が狭まりつつあり、「レンジ相場」的な様相が強まっています。原油
相場が再び上昇すれば、2014 年末水準の 103 円台への上昇も想定されますが、右下がりで推移する
26 週線に沿って下落すれば、4 月中旬水準の 96 円台への調整も考えられそうです。
・下値節目としては、マイナス 0.5σ(5/28 時点 96.22 円)、または日足一目均衡表の先行スパン下限
96.19 円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 2σ(同 104.54 円) が今後 1 ヵ月で 0.9 円ほど下落すると推測される分を差し
引いた 103.64 円、または 21 日線かい離率プラス 4.7%(2014 年以降の最大プラスかい離率)で 103.76
円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のカナダドル円の予想レンジを、96.0 ~ 103.5 円としました。
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6.ポンド円 (予想レンジ: 182.0 ~ 196.0 円)
[ポンド円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+3σ
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
-3σ
・5 月 7 日に行われた英総選挙では、与党・保守党が過半数の 331 議席を獲得、最大野党・労働党は
232 議席と低迷しました。この結果をうけて大幅に上伸したポンド/円は、20 日の英中銀金融政策委員会
(MPC)議事要旨で、利上げの可能性が示唆されたことで一段高。190 円大台を超えました。
・ポンド/円の週足ボリンジャーバンドでは、週足はプラス 2σに沿って上昇する形となっています。昨年 11
月には同線を超えて、プラス 3σをも上回る場面がありました。今回もプラス 2σを超えれば、プラス 3σに
近づく、または上回る場面があるかもしれません。
・不透明要因として、EU 離脱を問う国民投票の行方と、ギリシャ問題による通貨ユーロの推移が挙げられ、
ポンド/円が下振れする場合は、26 週線程度への調整も想定されるでしょう。
・下値節目としては、週足一目均衡表の基準線(5/28 時点)で 182.58 円、または 26 週線(同)の 182.28
円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 3σ(同 194.99 円)が今後 1 ヵ月で 0.8 円ほど上昇すると推測される分を加え
た 195.79 円、または 21 日線かい離率プラス 5%(2014 年以降の最大プラスかい離率)で 195.72 円、
などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のポンド円の予想レンジを、182.0 ~ 196.0 円としました。
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7.南アランド円 (予想レンジ: 9.8 ~ 10.5 円)
[南アランド円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・南アランド円は、大規模な計画停電の影響で 4 月下旬まで軟調推移が続きましたが、4 月最終週以降は
5 週連続で上昇。今年 3 月初旬以来の高値水準となりました。
・ただ、ボリンジャーバンドの各線の間隔は足もと縮小し始めており、南アランド円は「レンジ」相場に入りつつ
あることを示唆しています。
右下がりで推移しているプラス 1σ(5/28 時点 10.34 円)が上値抵抗線となり、同線で抑えられる場合は、
5 月入り以降の上げ幅を帳消しにする 9.8 円台前半への調整が起こる可能性も想定されます。
・プラス 1σを超える場合には、プラス 1.5σ、または、その水準に近い 2 月 21 日高値の 10.41 円近辺が
上値節目として意識されそうです。
・下値節目としては、マイナス 1.5σ(5/28 時点 9.83 円)、または週足一目均衡表の先行スパン下限 9.87
円、などが挙げられます。
・上値節目としては、プラス 1.5σ(同 10.44 円)、または 2 月 21 日高値 10.41 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月の南アランド円の予想レンジを、9.8 ~ 10.5 円としました。
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8.トルコリラ円 (予想レンジ: 42.5 ~ 50.5 円)
[トルコリラ円ボリンジャーバンド] (週足、2014/7/27~2015/5/28、出所:FX Chart Square)
+2σ
+1σ
26 週線
-1σ
-2σ
・ヨーロッパと地政学的に近く、経済面でもユーロ圏との関係が深いため、トルコリラ円はユーロ上昇につれて
強含みの推移が続きました。5 月 20 日にトルコ中銀は政策金利据え置きを決定、市場予想通りだったこと
も買い安心感に繋がり、一時 47 円を超える場面もみられました。
・6 月 7 日の総選挙で、エルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)が勝利を収めれば、政治面での
不透明感が後退し、トルコリラは上昇するかもしれません。ただ大統領や政府・与党が景気刺激のための
利下げ要求を再び強めれば、トルコリラは下落するとみられます。
・右下がりで推移する 26 週線(5/28 時点 47.89 円)を超えれば、次の上値節目はプラス 1σと推測されま
すが、政局不透明や利下げ圧力の高まりなどがあれば、マイナス 2σに近づく場面もありそうです。
・下値節目としては、マイナス 2σ(5/28 時点 42.39 円)、または 2014 年 1 月安値 42.88 円、などが挙げ
られます。
・上値節目としては、プラス 1σ(同 50.64 円)、または週足一目均衡表の先行スパン上限(6/15 時点)で
50.49 円、などが挙げられます。
・これらの計算値から、向こう 1 ヵ月のトルコリラ円の予想レンジを、42.5 ~ 50.5 円としました。
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(その他の通貨)
9.ユーロドル (予想レンジ: 1.03 ~ 1.18 ドル)
・下値の節目は、週足ボリンジャーバンドのマイナス 2σ(5/28 時点 1.0256 ドル) が今後 1 ヵ月で 0.0055
ドルほど下落すると推測される分を差し引いた 1.0311 ドル。
・上値の節目は、週足ボリンジャーバンドのプラス 1σ(同 1.1854 ドル)、または 2014 年 5 月高値から 2015
年 3 月安値までの下げ幅の「38.2%戻し」で 1.1807 ドル。
10.豪ドルドル (予想レンジ: 0.75 ~ 0.83 ドル)
・下値の節目は、週足ボリンジャーバンドのマイナス 2σ(5/28 時点 0.7496 ドル)、または 21 日線かい離率
マイナス 3.9%(2014 年以降の最大マイナスかい離率)で 0.7590 ドル。
・上値の節目は、プラス 2σ(同 0.8299 ドル)、または 2015 年 1 月高値 0.8289 ドル前後。
11.NZ ドルドル (予想レンジ: 0.70 ~ 0.76 ドル)
・下値の節目は、週足ボリンジャーバンドのマイナス 3σ(5/28 時点 0.7039 ドル)、または 21 日線かい離率
マイナス 5%(2014 年以降の最大マイナスかい離率)で 0.7035 ドル。
・上値の節目は、週足ボリンジャーバンドのプラス 0.5σ(同 0.7629 ドル)、または日足一目均衡表の先行ス
パン上限(6/4 時点)で 0.7601 ドル。
(シニアアナリスト 山岸 永幸)
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<執筆者>
西田 明弘(にしだ あきひろ)
市場調査部 チーフアナリスト
1984 年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを
経て、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテ
ジストとして高い評価を得る。2012 年 9 月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市
場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2J の WEB サイトで「市場調査部レポート」、
「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑
誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
山岸 永幸(やまぎし ながゆき)
市場調査部 シニアアナリスト
1986 年、ユニバーサル証券(現、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)入社後、株式ス
トラテジスト、アナリスト、チャーチスト、先物トレーダーなど株式業務全般に携わる。
1987 年に出向先の大和証券で「一目均衡表」に出会って以降、28 年間にわたり、均
衡表と実践的な活用法を探究。2012 年春マネースクウェア・ジャパンに入社。セミナ
ー講師として多数の顧客にノウハウを伝えるとともに、多数のレポートを配信。また、
様々なメディアに出演し、活躍中。
八代 和也(やしろ かずや)
市場調査部 アナリスト
2001 年、ひまわり証券入社後、コールセンター、為替関連の市況ニュースの配信、レ
ポートの執筆など FX 業務に携わる。2011 年 12 月、マネースクウェア・ジャパンに入
社。市場調査部に所属し、豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした
「オセアニア・レポート」を執筆している。FX に携わり 11 年。
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