責任限度額の引上げ / Increase in liability limits (Japanese)

Gard Alert
責任限度額の引上げ
こちらは、英文記事「Gard Alert: Increase in liability limits」(2015 年 5 月 20 日付)
の和訳です。
「1996 年の海事債権についての責任の制限に関する条約」(以下、
「1996 年議定書」)の責任限度額について、限度額を 51%引き上げ
る条約改正が 2015 年 6 月 8 日に発効します。
1976 年海事債権についての責任の制限に関する条約(LLMC)
LLMC 条約は、船主、用船者、船舶管理者、運航者に加えて海難救助者に対し、1 件の事故から生じる特
定の海事クレームに対する責任に制限を設けることを認めています。人命損失または人身傷害について
のクレームとその他の損失や損害についてのクレームとでは異なった限度額が適用されます。人命損失
または人身傷害についてのクレームの方がその他のクレームよりも限度額が高く(下記表を参照)、そ
の他のクレームよりも優先されます。限度額は船舶の総トン数(GT)に基づいて設定されており、IMF が発
行する特別引出権(SDR)によって表されます。
新しい限度額
適用限度額は、一般的なインフレ要因とクレームに関連するインフレ要因の両方を考慮して適宜調整さ
れます。主要な改正は、2004 年 5 月に発効した 1996 年議定書の採択によって行われ、2012 年 4 月に
IMO の法律委員会は、1996 年議定書に基づく限度額の 51%の引上げを決定し、2015 年 6 月 8 日に発効
します。さらなる詳細については IMO 決議 LEG.5(99)を参照してください。
影響
修正限度額により、重大な海事事故が発生し 1996 年議定書の締約国の法律に従ってクレームの示談や裁
定が行われる場合の船主の責任負担は増加することになります。注目すべきことは、1976 年 LLMC 条約
の締約国のうち、1996 年議定書に加盟していない国では今回の限度額の変更の影響を受けないことです。
下記は、新しい限度額による影響について 2 つの例で示したものです。(US ドルでの計算)
船舶
クレームの種別
ばら積み船
(50,000 GT)
人命損失または人身傷害
5130 万 US ドル
7750 万 US ドル
その他の損失または損害
2570 万 US ドル
3880 万 US ドル
人命損失または人身傷害
1 億 1340 万 US ドル
1 億 7130 万 US ドル
その他の損失または損害
5670 万 US ドル
8560 万 US ドル
石油タンカー
(150,000 GT)
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1996 議定書の限度額
2012 年改正の限度額
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その他の所見
上記の変更は、貨物クレームに対するヘーグ・ヴィスビー条約、乗客クレームに対するアテネ条約また
はタンカーによる油濁についてのクレームに関する CLC92 といった特定の種類の個々のクレームへの責
任に対して制限を設ける権利に影響を及ぼすものではありません。さらに、責任負担の変更については、
標準 P&I 保険の適用範囲であり、国際的な海事条約やそれらの条約の締約国の法律に基づき発生する法的
責任に対応します。
推奨事項
1996 年議定書の対象となる海事クレームに適用される責任の限度額の増加に注意するとともに、自社フ
リートの船舶に対する潜在的な責任負担の影響について、船舶サイズと運航パターンを考慮に入れて検
討するようにしてください。
さらなる情報については、2014 年 7 月 8 日付の Gard Insight の記事「Increased limits of liability enter into
force in 2015(2015 年に発効する責任限度額の引き上げ)(英文)」を参照してください。
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