フィリピンのスリガオで積まれるニッケル鉱貨物、液状化の懸念

Gard Alert
フィリピンのスリガオで積まれるニッケル鉱貨物、液状化の懸念
こちらは、英文記事「Surigao, Philippines – increasing concerns about
possible liquefaction of nickel ore cargoes」(2015 年 7 月 21 日付)の
和訳です。
最近、フィリピンのスリガオ(Surigao)でニッケル鉱を積
み込んだ船舶の事故がニュースになりました。貨物が液状
化したことで船体が傾き、船員が船を放棄する事態に至っ
たようです。本稿は、これを機会に、この種の貨物の輸送
に伴う危険性について皆様の注意を再度喚起するものです。
特にディナガット(Dinagat)などのスリガオ地域で船積みされるニッケル鉱の安全性については懸念が
高まっています。現在ニッケル鉱は、IMSBC コードにおいて液状化する可能性のあるグループ A 貨物に
分類されており、荷送人は、貨物の水分含有量が運送許容水分値(Transportable Moisture Limit [TML])
を下回っており、かつ、安全に運送できることを証する申告書と証明書を提供するよう義務付けられて
います。残念なことに、フィリピンや以前にはインドネシア(禁輸前)の荷送人が発行する貨物書類が
不正確であった事例が多数に上っています。その中には、人命や船舶の損失を伴う重大な結果を招いた
例もあります。
貨物サンプルは積込み時には比較的乾燥して見えることがあり、また、ニッケル鉱は粘度分を多く含む
ため、缶テストに合格する可能性があります。現在 IMSBC コードには、「缶テスト後にサンプルが乾燥
していたとしても、当該物の水分含有量は運送許容水分値(TML)を超えたままである可能性がある」と
明記しています。IMSBC コードには記載はありませんが、
高いところから落とした際に飛び散るか否かが、
貨物の水分含有量が超過していることを示すおおよその目安となります。航海中に船舶の動きやエンジ
ンの振動等によってニッケル鉱が攪拌されると、弾性が生じ、液状化する可能性があります。詳細情報
はこちら(英文)にてご覧いただけます。
過去のロス・プリベンション関連記事 1において液状化する危険性のある貨物を取り扱う際の注意点につ
いてご紹介してきましたが、ここで、再度ご確認をお願いします。その中でも、下記の項目が特に重要
です。
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1
荷送人の証明書をむやみに信用しないこと。
缶テストの結果のみに依拠して貨物の積込みを行わないこと。
船長が、
非安全貨物の積み込み拒否や、
独立した試験機関でのサンプル分析の手配を行う際には、
経験豊富なサーベヤーからも助言を求めること。
船積作業時に貨物が攪拌されないようにすること。貨物は、高いところから落としたりせずにホ
ールド内に積み込むこと。
Loss Prevention Compilation「Liquefaction of solid bulk cargo」
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液状化貨物に対するGardの保険カバーについては、2012 年 2 月 1 日付の「Gard Insight: 貨物の液状化‐
最新情報」もご覧ください。何らのチェックも行われずに非安全貨物が積み込まれた場合や、信頼性を
欠く証明書が荷送人から提供された実績のある国において、独立した試験機関によるサンプリングや分
析が行われずに缶テストだけに依拠して危険貨物が積み込まれた場合、十分な保険てん補が得られなく
なる可能性があることにご留意ください。 2
さらに詳しい情報は、Gard のウェブサイト内の「Cargo Liquefaction」セクション(英文)でもご覧いた
だけます。
2
ただし、サーベイヤーの手配とラボでの検査がなければ必ずカバーが損なわれるということではありません。サーキュ
ラーでの注意事項はあくまで缶テストのみに依拠した場合です。貨物の安全性について船長と船主が、その他の周辺事情
により、総合的に判断をし、その上で検査機関での検査の手配を行わなかったとしても、貨物の安全性と積み込みの判断
が(また、その判断に至った背景について)
、合理性に足ると考えられる場合は、クラブカバーを拒否するものではありま
せん。弊クラブの方針は、液状化貨物の運送・荷役に関して、絶対の報告義務はないとし、安全性の判断において船主の
裁量権を大きく残したものなっております。
本情報は一般的な情報提供のみを目的としています。発行時において提供する情報の正確性および品質の保証には細心の注意を払ってい
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さい。
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