15MF8

1
2015 年 5 月 14 日
2.2.寡占と規制緩和
現実の市場は完全競争でも独占でもない
寡占:
少ない企業数で、競争あるいは協調
複雑な「戦略的相互依存」: ゲーム理論をつかって分析(ここではきちんとは説明しない)
2
ケーススタディー:
アメリカ航空産業規制緩和(1970 年代後半)
規制緩和以前: 新規参入全面禁止、価格競争全面禁止
3
規制緩和をめぐる事前の論争
航空産業は「自然独占」である:
固定費用が大きい(規模の経済性)
一社で操業した方が効率いい: 参入規制
独占価格阻止:
価格規制
カーター大統領: 規制緩和によって航空産業を活性化、効率化したい
問題点:
実際に複数企業が同一路線に参入しないと競争はおこらないのでは?
規制緩和と規模の経済性は相いれないのでは?
4
コンテスタブル市場(William Boumol et al.)
独占企業の「戦略的な行動選択」に着目
ライバルが実際に参入しなくても「参入の脅威」さえあれば独占企業は低価格をつける
⇒
∴
独占企業が価格を平均費用より高く設定(正の利潤)
ライバルは参入して、独占企業よりすこし低く価格設定して顧客を奪い、正の利潤を稼ぐことが
出来る
独占企業は、ライバルの行動を戦略的に読み込む結果、価格を平均費用とほぼ同じに低く設定す
ることになる
生産費用:
q  0 の場合
q  0 の場合
cq  F (可変費用+固定費用)
0
5
平均費用より高い価格(参入の脅威)
⇒
平均費用イコール価格 pcon (コンテスタブル)
(これはパレート最適ですか~?)
6
コンテスタビリィティーに対する反論:
サンクコスト(埋没費用)の存在
生産費用:
固定費用 F はサンクコストかもしれない
q  0 の場合
cq  F
q  0 の場合
F ( 0)
参入すると、価格競争の結果、「価格=限界費用」になってしまう。サンクコスト F 分赤字になる
∴ ライバルは参入するインセンティブもたない
∴ 独占企業は独占利潤最大化価格を設定できる(もし参入すれば p  c まで競争(略奪価格))
7
さらなる議論:参入後の「協調(Collusion)」の可能性
実際にライバルが参入しても熾烈な価格競争をするとは限らない
参入後、サンクコストを回収できる程度に、価格カルテルを形成しようとするに違いない
∴
複数企業が同一路線にて共存
⇒
規模の経済性の観点からは非効率
アメリカ政府の判断
固定費用は無視できないがサンクコストではないだろう
競争によって安全性が侵害される危険性はないだろう
⇒
コンテスタビリティーを根拠に、徹底した規制緩和を断行
その結果は?
8
規制緩和の効果
事前の予測は大きく外れた:
現実はもっと複雑だった、しかし理解可能 な範囲
寡占企業行動の戦略的理解が必要だった:
ゲーム理論の重要性
(1980 年代より急速に応用経済学に浸透していく)
9
航空産業規制緩和の効果についての
4つのポイント
・
・
・
・
バブ&スポーク・ネットワークシステム
暗黙の協調
略奪価格
価格差別化
10
バブ&スポーク・ネットワークシステム
短期間で自生的に秩序付けられた市場構造
規模の経済性(ネットワーク外部性)
:
ハブ空港(大都市)経由
ハブ間で大型輸送、低需要空港の閉鎖
(ハブ・スポークは最適なネットワークか?)
製品(サービス)差別化、あるいは、テリトリー化:
ハブ周辺ごとに航空会社が棲み分け
企業合同、アライアンス:
ハブ間での連携強化
11
暗黙の協調と略奪価格
略奪価格(Predatory Pricing)
:
新規参入に対して、限界費用未満の価格をつけて、退出するまで報復:
企業倒産(ex. パンナム)
寡占化促進
暗黙の協調:
長期的協調関係
明文化された契約なくても「自発的に」カルテル価格を設定
ゲーム理論による説明: 繰り返しゲーム
囚人のジレンマ
カルテル価格
競争的価格
カルテル価格
10 10
0 15
競争的価格
15 0
1 1
囚人のジレンマが(無限に)繰り返されるとどうなる?
Grim Trigger Strategy
12
価格差別化
価格差別化によってさらに独占利潤高められる!
Why?
13
個別消費者に「willingness to pay(限界効用)
」そのものを支払わせる:
パレート最適達成!(供給 D( c ) )
だが、如何にして可能か??
消費者は willingness to pay を低く偽って申告するだろう
(本当は 1000 円だしてもほしいのに、
「500 円以下じゃないと買わないぞー」)
14
航空会社がとった価格差別化戦略
購入時期に応じて価格を変更!
複雑な価格差別化戦略を如何に実行するか?
CRS(Computer Reservation System)の導入
ソフトウェア開発業者が航空会社とタイアップ(ex. IBM と American Airline によるセイバー)
代理店に普及
排他的取引「SABRE ではアメリカン航空のチケットしか表示されない(?)」