読書の窓 - JA 全中

板”の普及など、従前から精
自然農法の提唱や自然とむ の
し み
共 存 を 見 え る 化 す る“ 虫 見
にならない重要な価値を持っ
える。しかしながら農はカネ
し、農を農業に矮小化して捉
黙のうちに成長や発展を強要
自然との一体化した在り方で
資本主義の次にくる社会と
して、人間が動植物を含めた
いと述べるのである。
ズム)で捉えなければならな
の前に愛郷心(パトリオティ
見つめ、愛情を持って接する新竹勇
とのコミュニケーションも大事です」
にあるJAこばやし御 池 肥育セン
介さん(29)
。ここは、宮崎県高原町
と、続けました。
肺炎や気管支炎、下痢などを患っ
ター。買い手のつかなかった生後10
た子牛を繁殖農家から買い取り、立
か月ほどの子牛を買い取り、20か月
派な牛に育てるのも肥育センターの
ほどかけて約750kg まで肥育し、出
重要な仕事のひとつ。
「昨年 9 月の
荷します。最近は和牛、特に宮崎牛
競りで117kg だった牛が、生後16か
などのブランド牛の人気が高く、数
月の今では300kg に」
「元気な牛に
が不足していることから市場では高
育つのが何よりもうれしい」と、餌
値で取引されています。
を与える作業にも力が入る新竹さん。
「大きく、そして質のよい牛を育て
彼のまなざしが、宮崎の畜産を支え
る」
「そのためには、餌の種類や量、
ている象徴のように感じました。
読書の窓
んだこととも合致するのだが、
力的でいて軽やかに活動をし
ていること、それ故農業は市
あり、それが農本主義者の生
配ります」と、新竹さん。
「さらに牛
評者=堀田 学
推進の過程で、単に一産業と
宇根氏の主張は等身大で実感
てきた宇根豊氏である。同氏
場経済の価値では評価できな
き方であって、農業を営むか
与える時間、牛の体調などにも気を
な瞳ですね」
。重さ約500kg の牛を
47
月刊 JA
2015/05
(県立広島大学生命環境学部准教授)
位置づけられてしまった「農
的だ。比較優位の問題点や国
の著書は本誌でも幾度か紹介
いばかりか、繰り返し、過去
どうかではない、態度の問題
「好きなところはこの愛らしい大き
いけ
『農本主義が未来を耕す 自然に生きる
業」と本来あるべき「農」を
家安全保障でさえ、農を矮小
別 筆 が 乗 っ て 感 じ る。 一 見、 か ら 未 来 に 伝 承 す る 役 割 を
してきたが、本書の同氏は格
担っており、これが社会の土
なのだと主張する。
区分する。近代化思想は①国
化 し た 見 解 で あ る と 同 時 に、
古色蒼然として感じる農本主
台となっているのだとするも
人間の原理』 宇根 豊
民国家、②資本主義、③民主
ナショナリズムに通じる。そ
義の復興を説くのである。単
のである。
現代社会の在り方を強く批
判しているのだが、穏やかで
写真と文:大塚雅貴
表紙のことば
多くは農業の持つ外部性や
多面的機能として、かつて学
大柱として掲げ、暗
に往年の農本主義を引き合い
どこか達観しているようにす
主義を
に出すのではなく、明示的扱
その上で農本主義の つの
原理を、①反近代化・反資本
ら見える。広く社会のあるべ
わ い しょう
いは避けたと述べられている
主義の原理、②反国家・在所
き姿を考える上で、多くの示
ばん
が、
「新しい農本主義」を提
優先の原理、③自然への没入
そうぜん
唱しようという試みである。
唆を与えてくれるであろう。
尊重の原理にあると説く。
3
本書は、まず社会の近代化
3
み
発行:現代書館
定価:2,484円(税込み)