呼吸器領域・細胞診に関するアンケート調査と課題(PDF

精度管理委員会からの報告
第104回⽇本病理学会総会(2015年 5⽉ 2⽇・名古屋)
精度管理の新時代 WS-5-3
呼吸器領域・細胞診に関する
アンケート調査と課題
⽻場礼次1,⼤林千穂2,畑中豊3,増⽥しのぶ4
1⾹川⼤
病理診断科・病理部,2奈良医⼤・医・病理診断学
3北海道⼤病院CDx部⾨,4⽇本医⼤・医・腫瘍病理
背 景
進⾏期⾮⼩細胞癌に対する分⼦標的治療薬
を中⼼とした内科的治療の⼤きな進歩とと
もに、肺⽣検・細胞診での腺癌と扁平上⽪
癌の鑑別、EGFR変異やALK転座に対する
分⼦診断が求められている。
⽬ 的
病理診断部⾨における肺⽣検・細胞診の検
体や検査内容の現状を把握する。
肺癌診療ガイドライン
分⼦診断
形態診断
⽇本肺癌学会
2014年版
⽅
法
• 病理学会認定施設(452施設)のうちメー
リングリスト登録のある387施設にメール
にてアンケート調査参加を依頼した。
• 趣旨説明およびアンケート内容は病理学
会ホームページから閲覧し、FAXまたは
メール添付で提出することとした。
• 期間;平成26年8⽉25⽇〜9⽉17⽇
アンケート内容
(A) 各施設に関する⼀般的事項について
17項⽬(① 病理医・検査技師の数、②⽣検
固定・作製、③ 細胞診固定・作製、④IHC
検査、⑤ FISH検査の状況)
(B) 呼吸器検体に関する事項について
32項⽬(⑥ 検体採取、⑦ 肺⽣検ガラス枚
数、⑧ 肺癌のIHC、⑨ 肺癌EGFR検査、⑩
肺癌ALK検査、⑪ ALK-IHC、⑫ ALKFISH、⑬ ALK RT-PCR)
(A) 各施設における⼀般的事項
① 病理医・検査技師の数等
回答数
130施設(回収率33.6%)
⼤学病院
27 (16.6% 163)
がん拠点病院
62 (15.6% 397)
公⽴病院
34
私⽴病院
15
② ⽣検組織検体の固定⽅法(複数回答)
ホルマリン(10%緩衝)
ホルマリン(20%緩衝)
ホルマリン(10%⾮緩衝)
ホルマリン(20%⾮緩衝)
凍結
その他
72
33
19
18
6
9
157
③ 細胞診検体固定⽅法(複数回答)
95%エタノール
129
乾燥固定
78
Cytorich Blue
11
Cytorich Red
22
その他
13
253
④ IHC全般について
120
100
80
60
ほぼ全てを自施設で実施
40
全て外注
20
0
一部自施設で実施
④ IHC全般:⾃動免疫染⾊装置と検出試薬
70
60
50
40
30
20
10
0
Dako Autostainer
Leica BOND
Nichirei Histostainer
Roche/Ventana
Benchmark
対応試薬のみ使用
対応試薬と別の試薬を使用
別の試薬のみ使用
試薬の報告なし
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
Dako Autostainer
Leica BOND
Nichirei
Histostainer
Roche/Ventana
Benchmark
対応試薬のみ使用
対応試薬と別の試薬を使用
別の試薬のみ使用
試薬の報告なし
④ IHC全般: IHC検査の検出試薬
Dako Autostainer(複数回答)
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Leica BOND(複数回答)
30
25
20
15
10
5
0
Roche/Ventana Benchmark(複数回答)
Nichirei Histostainer(複数回答)
25
20
15
10
5
0
70
60
50
40
30
20
10
0
④ IHC全般: 実施枚数と⼀次抗体数
⑤ FISH検査全般
FISH検査実施状況
FISH検査項⽬数(複数回答)
14
自施設で
実施
21%
12
10
8
6
4
外注
79%
2
0
1項目
2‐5項目
6‐10項目
10項以上
(B) 各施設における呼吸器検体
H26年度診療報酬改定
(7)肺悪性腫瘍(腺癌、扁平上⽪癌)が疑われる患
者に対して「注2」の加算を算定する場合は、腫瘍が
未分化であった場合等HE染⾊では腺癌⼜は扁平上⽪
癌の診断が困難な患者に限り算定することとし、そ
の医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に詳細に記
載すること。なお、既に区分番号「D004-2」悪性
腫瘍組織検査の「1」悪性腫瘍遺伝⼦検査の「イ」
EGFR遺伝⼦検査(リアルタイムPCR法)、「ロ」
EGFR遺伝⼦検査(リアルタイムPCR法以外)⼜は区
分番号「N005-2」ALK融合遺伝⼦標本作製を算定
している場合には、当該加算は算定できない。
⑥ 呼吸関連組織の検体採取
1週間の呼吸器関連組織診件数
病変にヒットしているか?
5件以下
11%
ヒットしないこと
が多い
15%
20件以上
29%
5‐10件
25%
ヒットしてな
いことがある
46%
10‐20件
35%
細胞診件数も同様の結果
ほぼヒットして
いる
39%
細胞診件数も同様の結果
呼吸器の組織・細胞検体についての評価
診断し難い
4%
診断し易い
9%
やや診断し難い
27%
ふつう
60%
相関あり
• 呼吸器関連組織診件数と検体の
病変ヒット率
• 呼吸器関連細胞診件数と細胞数
の採取量
• 診断のし易さと細胞数の採取量
⑦ 肺⽣検で最初に薄切する枚数
90
80
70
60
50
40
作製しない
30
20
10
時々
1 2 3≧
1 2 3≧
0 1 2 3≧
1枚にのせ
る薄切
特殊染⾊⽤
4‐9
0 1‐3 10≧
作製
0
HE数
IHC⽤
EGFR検査⽤
⑧ 肺癌の組織型IHCマーカー
扁平上⽪癌マーカー(複数回答)
腺癌マーカー(複数回答)
150
100
80
60
40
20
0
100
50
0
TTF‐1
NapsinA
神経内分泌腫瘍のマーカー(複数回答)
150
100
50
0
PE10
その他
⑨ 肺癌のEGFR変異検査
EGFR変異検査
⾃施設で
実施
8%
外注
92%
Cycleave法
Quenching Probe法
LH-MSA法
記載なし
⑩ 肺癌のALK検査
ALK-IHCを⾃施設で実施しているか?
ALK-IHCを⾏わない理由
はい
41%
外注
59%
ALK外注施設では
ALK-IHCを院内実施する予定
導⼊予定がある
15%
保険適⽤になれ
ば導⼊
28%
導⼊予定はない
57%
40
35
30
25
20
15
10
5
0
⑪ 肺癌のALK-IHC(1)
ALK-IHCを院内実施している施設では
⑪ 肺癌のALK-IHC(2)
60
⼀次抗体
結果が主治医に伝わるまでの⽇数
1日
4%
40
20
2日
12%
0
5A4
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
D5F3
ALK1
増感検出⽅法
Anti‐ALK その他
1週間以上
30%
3‐5日
41%
5‐7日
13%
⑪ 肺癌のALK-IHC(3)
ALK-IHC時の
対象コントロール利⽤検体
ALK-IHC時の
陽性コントロール
60
40
50
30
組織標本
40
20
あり
10
30
なし
0
20
セルブロック
10
0
細胞診標本
ALK陽性肺癌
28
リンパ腫
9
その他
3
⑫,⑬ 肺癌のALK-FISH, RT-PCR検査
ALK‐FISHの実施状況
ALK RT‐PCRの実施状況
自施設で
実施
7%
外注
93%
自施設で実
施
6%
外注
94%
導⼊予定がある
14
導⼊予定はない
85
⑫ ALK-FISHを⾃施設で実施
90
80
70
60
50
病理医
20
IHC陽性のみ
10
全て
実施対象
セルブロック
組織
細胞 技師
対象の検体
判定者
低い陽性頻度
判定困難
30
標本作製が困難
40
0
なし
技師+病理医
負担感
あり
導入予定
(外注施設のみ)
まとめ(1)⼀般的事項
1. 病理医数、技師数、検体数:施設間差⼤
2. ⽣検組織検体の固定液、固定時間:施設
間差あり
3. IHC:約9割以上が⾃施設で実施
4. IHC件数、抗体数、⾃動免疫染⾊装置:
施設間差あり
5. ⾃動免疫染⾊装置と検出試薬:対応試薬
以外の試薬使⽤あり
6. FISH実施施設:約2割が⾃施設で実施
まとめ(2)呼吸器検体
1. 呼吸器関連組織・細胞診件数:施設間差⼤
2. 病変のhit率:施設間差あり(件数と病変hit
率、件数と細胞採取量、診断率と細胞採取量
が相関)
3. 肺癌の免疫染⾊:使⽤抗体は各施設ほぼ⼀致
4. EGFR検査:⾃施設(8%)
5. ALK検査:外注>⾃施設、抗体(5A4)、実
施のタイミング(異なる)、検出法(異な
る)、⽇数(異なる)
6. ALK-FISH:⾃施設(7%)
7. ALK RT-PCR:⾃施設(6%)
今後の課題
1.呼吸器検体→
・固定時間、固定法、固定液などの標準化
2.腺癌・扁平上⽪癌の鑑別 →
・抗体パネルの標準化、精度管理
3.ALK-IHC →
・固定、標本作製、染⾊、判定の標準化
・精度管理やガイドラインの作成
4.ALK-FISH、 ALK RT-PCR →
・固定時間、固定法、固定液、採取材料、
・提出法などの標準化
5.EGFR →
・精度管理
6.検体採取→
・臨床医に対する検体採取状況と取扱いに関する啓蒙