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D.O.M.E.>臨床検査辞典>CLD011:TP
臨床検査辞典
011
TP
First edition:2009/6/15
Last update:2009/6/15
正 式 名 称 血清総タンパク(Serum Total Protein)
略
称 TP
別
名
概
略 ・血液中を流れるタンパク質の総量。ただし、血液中を流れるタンパク質の大部分は、アル
ブミンと γ-グロブリンなので、TP はそれら 2 つのタンパク質の変動を反映する。
・栄養障害、肝疾患、腎疾患の指標となる検査項目だが、TP のみでは診断特異性は低く、血
清タンパク分画の検査も必要とされる。
作
用 ・血液中に含まれるタンパク質は、主に以下に挙げる作用を有している。
1.栄養源
主にアルブミンが分解されアミノ酸を生じ、タンパク質欠乏組織のタンパク質を合成
したり、糖新生でグルコースを合成してエネルギーを獲得したりする。
2.キャリアー(輸送担体)
3+
2+
トランスフェリンは Fe 、セルロプラスミンは Cu 、リポタンパク質は各種脂質を
特異的に結合し、その結合体は血中に溶解して、特定の臓器へ運搬する。
3.浸透圧の維持
主にアルブミンの側鎖の解離により血清浸透圧が調節され、血管内の水分と組織内の
水分の移行を調節している。
4.緩衝作用
血清タンパク質の側鎖の解離により、血液の pH の調節が成されている。
5.生体防御作用
γ-グロブリン分画に含まれる免疫グロブリンは抗体活性を有する。補体もグロブリン
分画に含まれている。
6.血液凝固・線溶作用
特に内因性凝固因子(フィブリノーゲンなど)は、その大部分が血漿タンパク由来とな
っている。
7.酵素
生体反応の促進・調節作用を有する。
分
布 ・TP では、血清中に含まれるタンパク質を検査対象としている。
基 準 値 ・6.3 ∼ 8.4[g/dL](測定:ビウレット法)。概ね 6.5 ∼ 8.5[g/dL]と把握すればよい。
・年齢別では、新生児期ではかなり低く、壮年期に高くなり、老年期に低くなる。
・性差があり、男性の方が女性よりやや高値を示す。
・立位の方が、臥位よりやや高値を示す。
・運動により、血液が濃縮されて高値を示す。同様の理由で、夏期の方が冬期より高値を示
す。また、これまでの理由を総合すると、夕方時に高値を示し、早朝時に低値を示す。
・血清タンパク分画の基準値は、下表の通り。
分画
基準値[%/37 ℃]
およその基準値[%/37 ℃]
アルブミン分画(Alb)
60.3 ∼ 72.7
60 ∼ 70
α1-グロブリン分画(α1)
1.5 ∼ 3.4
1.5 ∼ 3.5
α2-グロブリン分画(α2)
4.8 ∼ 8.5
5∼9
β-グロブリン分画(β)
6.9 ∼ 10.9
7 ∼ 11
γ-グロブリン分画(γ)
11.0 ∼ 20.9
11 ∼ 21
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D.O.M.E.>臨床検査辞典>CLD011:TP
臨床的意義 ・栄養障害、肝疾患、腎疾患の指標になる。
・低値を示す場合、肝機能の低下によりタンパク質が合成されない、又は、腎臓の障害によ
り主にアルブミンが尿へ漏出するネフローゼ症候群がある。低値を示す場合の多くはアル
ブミンの低下に起因していることが多く、次いで γ-グロブリンが低下している。
・高値を示す場合、タンパク質合成細胞が異常に増殖しており、多発性骨髄腫や原発性マク
ログロブリン血症がある。高値を示す場合は、γ-グロブリンの増加に起因していることが
多く、脱水症以外ではアルブミンの増加が原因となっていることは少ない。
・血清検体をセルロースアセテート膜電気泳動すると、アルブミン分画(Alb)、α1-グロブリ
ン分画(α1)、α2-グロブリン分画(α2)、β-グロブリン分画(β)、γ-グロブリン分画(γ)の 5
分画に分離される(下図参照)。
アル ブミン分画(Alb)
α2 分画(α2)
β-γ分画
α2-マク ログロブリン
α2-リポ タンパク質
ハプ トグロビン
セルロ プラスミン
IgA
IgM
IgD
IgE
(プレアルブミン)
グロブ リン分画
(+)
(-)
α1分画(α1)
α1-アンチトリ プシン
α1-酸性糖タン パク質
α1-リポタン パク質
β分 画(β)
トラン スフェリン
ヘモ ペキシン
β-リポ タンパク質
α1C/Aグ ロブリン(C3)
γ分画(γ)
IgG
<参考.TP が高値又は低値を示す場合の詳細>
程度
値[g/dL]
疾患・原因
高値
8.4 以上 多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、自己免疫性肝炎、
慢性肝炎、肝硬変(初期)、慢性炎症性疾患、悪性腫瘍、脱水症
低値
6.3 以下 ネフローゼ症候群、肝障害、栄養障害、吸収不全症候群、
低 γ-グロブリン血症、炎症性疾患(微生物感染含む)
※ 測定法:ビウレット法
<参考.血清タンパク分画の臨床診断に有用なパターン例>
疾患・原因
Alb α1 α2 β γ
その他
無アルブミン血症
↓
ネフローゼ症候群
↓
↑
α1-アンチトリプシン欠損症
↓
無トランスフェリン血症
↓
無(低)免疫グロブリン血症
↓
肝硬変
↓ ↓ ↓
↑ β-γ binding
M タンパク(単一クローン性免疫グロブリン)
α2-γ に急峻なピーク
※ 測定法:セルロースアセテート膜電気泳動法
検 体 取 扱 ・検体量は、血清 0.5mL(総タンパク測定、分画共通)。
・検体は、採血後速やかに血清分離し、冷蔵保存で約 1 週間、冷凍保存で長期間安定。
・溶血により正誤差を生じる(ヘモグロビンが測定対象に入ってしまうため)。
・厳密な値を知りたい場合は、早朝空腹時の採血が望まれる。
薬剤影響
アイソザイム
測 定 法 ・数多く測定法は存在するが、多くはビウレット法により測定される。
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