「消化吸収から考えた糖尿病 ―上手な間食のすすめと診断基準改定の

平成 22 年度指導者のための健康・栄養セミナー
「消化吸収から考えた糖尿病
―上手な間食のすすめと診断基準改定のトピックス―」
講師 東邦大学医学部総合診療・救急医学講座
教授 瓜田 純久先生
が必要で、経腸栄養剤選定も重要である。
1.糖尿病の診断基準
空腹時血糖が正常域であっても食後に高血糖
3.水の機能性
硬水と軟水との機能性の違いが消化吸収に影
になる場合があり、75gOGTT 試験(糖負荷試
響を与えるかどうかについてラット実験を行っ
験)が推奨される。
食後の高血糖が酸化ストレスとなり血管内皮
機能障害をおこし、動脈硬化が発生すると言わ
た。その結果、軟水のほうが吸収は早かったが、
小腸機能において変化はなかった。
ただ、硬水を与えたラットは、水・食事の摂
れている。そこで、食後の高血糖を押さえるた
取量が軟水を与えたラットより減ることがわか
めに低 GI 食品の利用が望ましい。
GI 食品とは、糖吸収速度別に分類したもの
で数字が低いほど糖吸収速度が緩やかである。
った。ゆえに、食事時硬水を摂取すれば食事量
を制限できるのではないだろうか?
しかし、値段や嗜好などから、吸収をおさ
(図 GI の分類)
大豆は低 GI 食品であり、それを素に作られ
える効果のある飲み物商品 J ティをおすすめす
た焼き菓子商品 SJ の利用は理にかなっている。
る。他の飲料と比較をした結果、商品 J ティの
商品 SJ は、朝食時に摂取すると、朝食後の
血糖上昇をおさえるだけでなく、昼食後の血糖
効果が高いことがわかっている。
4.まとめ
糖尿病での消化吸収において、消化管は高血
上昇もおさえることがわかっている。
糖を回避するために対応している。
2.糖の消化吸収
糖の消化吸収は、75gOGTT 試験での呼気検
糖尿病は、糖の吸収・代謝が低下している場
査で水素ガスまたはメタンガスの測定によりわ
合と、亢進している場合があるので、治療・栄
かる。消化管で吸収されなかった糖は、次の消
養指導するうえで考慮が必要である。
合併する疾患によって、糖の消化吸収が変化
化管の腸内細菌の発酵が生じガスを発生する。
ガスの発生時間により消化不良の部位が特定さ
するので同一症例でも注意が必要である。
れる。ガス発生が、前半でみられた場合は小腸
において、後半でみられた場合は大腸において
消化不良(吸収障害)が起こったと考えられる。
炭水化物の消化吸収障害があると、血糖上昇は
緩やかとなり、血糖上昇をおさえる可能性があ
る。
吸収障害がひどい場合は、栄養障害・低血糖
を起こす可能性があるので注意が必要である。
生活習慣の変化は消化吸収に変化を与える。
その結果、生活習慣病を発症し、更に消化吸収
に変化を与える。特に糖尿病では、炭水化物の
消化吸収が変化するが、食後高血糖を回避する
ことで改善することができる。
糖の種類によっても吸収速度が違うので考慮
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(文責 病院 富田真生)