選択的血漿交換療法の 現状とこれから

第36回
日本アフェレシス学会学術大会
ランチョンセミナー 1
選択的血漿交換療法 の
現状 と これから
日時
平成27年10 月 30日(金)12:00 ∼13:00
会場
川越プリンスホテル 第1会場(ダイヤモンドルーム)
座長
山 路 健
順天堂大学 膠原病内科
先生
演者
大久保 淳
先生
花房 規男
先生
東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター
東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座
共催
第36回日本アフェレシス学会学術大会
選択的血漿交換療法 の
施行方法 と 位 置 づ け
東京医科歯科大学医学部附属病院 ME センター /
大久保 淳
自己免疫疾患における本邦でのアフェレシス療法は、
アルブミン
(Alb)置換における血漿交換療法(Plasma Exchange:PE)
や
二重膜濾過血漿交換療法( Double Filtration Plasmapheresis:DFPP)、置換液を必要としない免疫 吸着療法
( Immuno Adsorption Plasmapheresis:IAPP)が施行されているが、各治療とも凝固因子の低下が問題となる。
選択的血漿分離器 Evacure® EC-4A10( EC-4A)は、IgG の篩係数は 0.5 であり、Fib の篩係数は 0 、凝固第13 因子は
0.17 であるため、凝固因子を保持しながら抗体除去が可能であり、
さらにサイトカインの除去も可能である。
近年自己免疫疾患に対する治療として、EC-4A を用いた選択的血漿交換療法(SePE)が施行されてきている。
本学においても 2012 年より SePE の施行を開始し、現在までに 300 回程度の施行経験がある。SePE は Alb 溶液を用いて
患者循環血漿量(Plasma Volume:PV)
の 1.1 倍程度の置換量で施行すると、IgG は 50%程度除去可能であるが、分子量の
しかし Fib や第 13 因子は 20%程度の低下に抑えられている。
さらに Alb 置換における PE を
大きい IgM は除去できない。
隔日に 3 回施行した群(PE 群)
と、PE 施行後 SePE を 2 回隔日に施行した群(併用群)、SePE を隔日に 3 回施行した群
(SePE 群)での、初回治療前値と 3 回目終了後の低下率を比較した。IgG の低下率は、PE 群、併用群、SePE 群において、
各々 81.9%、75.8%、72.7%であり、併用群や SePE 群でも高い低下率を示していた。一方 Fib の低下率は各々 80.6%、
36.8%、16.6%であり、PE 群に比べ併用群では半分以下、SePE 群では 20%以下と保持可能であった。
本セミナーにおいて SePE の施行法や注意点、位置づけについて考察したい。
選択的血漿 交 換 療 法 の
最近の知見 と 今 後 の可 能 性 に つ い て
東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座 /
花房 規男
選択的血漿交換療法(SePE)は、通常の膜型血漿分離器よりも孔径の小さいエバキュアープラス EC-4A を使用した
アルブミン
(Alb)置換の単純血漿交換療法のことである。SePE の特長は、凝固因子であるフィブリノーゲンや第13因子
などの高分子量物質を保持したまま IgG 抗体やサイトカインを除去できる点であり、新しいモダリティとして注目されている。
本講演では、過去に本学会で報告のあった各先生方の発表を紹介し、今後の可能性について述べたい。
まず、春日井市民病院の高橋先生が発表された中毒性表皮壊死症の症例である。ステロイドが奏功しなかったため血漿
交換療法が行われ、通常の FFP 置換による PE と SePE を施行し救命に至っている。
次は、東北大学病院の西山先生が発表された抗 MuSK 抗体陽性の重症筋無力症の症例である。初期治療として血漿
吸着による抗体除去が行われたが抗 MuSK 抗体陽性が判明したため、SePE に変更し臨床的改善が認められた。
最後に、秋田大学の中永先生が発表された全身エリテマトーデスと関節リウマチの症例である。両例とも急性増悪により
ICU 入室となり、EC-4A での Alb 置換ではなく FFP 置換(希釈なし)が施行され救命に至ったものである。
これらの報告からも分かるように、SePE は 凝固因子を温存できるというユニークな特長を有する。この特長を利用し、
連続的・高頻度に PE を施行する必要がある自己免疫疾患などでは特に有効かもしれない。EC-4A の機能と現行の治療
方法などから、SePE の将来の可能性についての考え方を述べたい。
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