授業づくりの要点をつかもう 1 ○ 単元の構想 一つ一つの授業をよりよいものにするには,単元(題材)全 体の指導構想が重要です。 単元を構想するポイントは二つあります。 ポイント1 単元(題材)目標と評価規準の明確化 単元(題材)全体を見通し,目標を明確にしましょう。また,どの授業で どの観点を評価するかを考えましょう。 ポイント2 単元(題材)を通して目標に迫るための教材の分析・検討 その単元(題材)で何をねらうか,子どもにどのような力を付けるかを決 めましょう。また,教材分析を踏まえて,教材のどこを中心に扱うか,他に 用いる教材はないか等を検討しましょう。←すでに「手立て」の一つです! その単元(題材)を通して,どんな力を子どもに付けるか,そのための手立て をどうするのかを考えることが重要です。 実際には何を考えればいいのか ○ 単元目標の設定 学習指導要領解説に記載されている目標,内容から決定します。 ○ 評価規準の設定 「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料(国立教育政 策研究所刊行)」などを参考に,評価規準を設定します。 ○ 子どもの実態(レディネス)把握と分析 これまで子どもは何を学び,どんな力を付けているのか,逆に身に付かな かった力は何かなど,単元の学習内容に関する子どもの実態を把握し,その 原因を分析します。 ○ 目標を達成するための手立ての考案 その単元で扱う教材を分析し,どんな教材をどのように扱うかなど,目標 達成のための手立てを考えます。手立てには次のようなものがあります。 ◇ 教材の精選・・・・・・・・・どの教材のどの点を利用するのか など ◇ 場の設定・・・・・・・・・・どんな環境でどんな教具を使用するのか など ◇ 関わり合いの組織・・・・・・どんな形態や活動で学習していくのか など ◇ 基本的な授業展開の方法・・・どのように学習課題を設定するのか など ◇ 言語活動の工夫・・・・・・・自分の考えの表出や話合いで工夫すること など まずは,単元全体の授業構成を考えてから, 1時間ごとの授業づくりを考えることが大事なんだね。 2 本時の構想 ○ 「さあ,本時の計画を立てよう」と机に向かってもなかなか書くこと はできません。指導案を書く前に行う大切な作業があります。それはそ の授業(本時)の全体像をイメージすることです。これを本時の授業を 構想すると言います。 本時の授業を構想するポイントは五つあります。 【本時の構想のポイント】 その1 本時のねらいの設定と子どもの実態把握・分析 学習指導要領解説や教科書を基に,本時のねらいを設定します。 次に,ねらいに関連して,前時までの既習事項や子どもがつまずきそう な所など,授業前の子どもの実態を把握し,その原因を分析します。 その2 まとめの明確化 ねらいに整合した目指す子どもの姿(まとめ)を子どもの言葉で具体的 にイメージして決めます。 その3 学習課題の設定 目指す子どもの姿(まとめ)と正対した学習課題(「~だろうか?」)を 設定します。 その4 学習課題を生み出す活動や教材提示の考案 「学習課題を生み出すための手立て」として,活動の内容や教材提示の 工夫を考えます。 その5 学習課題を解決するための手立ての考案 学習課題と正対したまとめに至るまでの「課題を解決するための手立て」 として,追究する活動や働き掛けを順序立てて考えます。 構想カード ★☆構想カードを使ってみよう☆★ 授業を構想するとき便利なのが「構想 カード」(p.7資料1)です。指導案を書 く前に,構想カードにポイントを書き込 んでおきます。この構想カードを基にし て指導案をつくると,一貫性のある指導 ・ねらい ・子どもの実態 ① 学習課題を ④ 生み出す活動や教材提示 学習課題 ③ 案になります。 書く順番を①→②→③→④→⑤とする 追究する活動や働き掛け⑤ と構造化された確かな学びの授業となり ます。④により学習課題をもたせること ができるか,⑤の手立てで,課題解決ま で到達できるか,そこがポイントです。 全体のイメージをつくっておく のが構想カードなんだよね。 まとめ ② 3 ◯ ねらいと評価 単元・題材全体を見通し,本時の「ねらい」と「評価」を明らかに します。 ※ここでいう評価とは,1時間の授業の最後に行う総括的な評価のことです。 ここがポイント! ○ 学習内容と子どもの実態に合わせて,ねらいを設定します。 ・学習内容と手立てを入れたねらいを立てましょう。 「◯◯について①,△△することを通して②,□□することができる③」 ① 「◯◯について」は,本時の学習内容等について,簡潔に記述します。 ② 「△△することを通して」は,目指す姿にするための活動や手立てを記述します。 ③ 「□□することができる」は,本時で目指す姿を記述します。 ○ 授業後の具体的な姿をイメージして評価規準を設定します。 ・本時のねらいに合わせ,子どもの行動や様相(~している)で評価規準を設定します。 ○ 評価するための判断基準と,評価の方法を明確にしておきます。 ・評価規準を受けて,その達成を判断する具体的な子どもの姿(記述・発言・行動等) を設定します。 ・設定した詳細な判断基準は, 指導案の本時展開案にも「ねらいを達成した子どもの姿」 として書きます。 ・評価の方法は,ノートやワークシートでの記述,問題づくり,小テスト,発展問題・ 適用題・評価問題,発言や行動の記録等があります。 具体的には‥・・ 小学校5年 図形 「三角形の求積」 ・ねらい 「三角形の求積について①,既習の図形(長方形,平行四辺形)に変形したり,考え方の 共通点や相違点を話し合ったりする活動を通して②,倍積や等積で変形する求積の方法 を理解することができる。③」 ・評価規準 「三角形を既習の図形(長方形,平行四辺形)に変形することにより,三角形の面積の 求め方を考えている。」 ・規準の達成を判断する具体的な子どもの姿 評価規準に照らして, 「おおむね満足できる」状況(B)を設定します。(B)としておおむ ね満足な「子どもの記述・発言・行動」を,具体的に記述します。(B)を設定すること で,(A)が設定しやすくなります。(A)は,(B)より質の高い姿ですので,まず(B)をしっ かりと設定しましょう。 おおむね満足できる状況(B)‥ 既習の図形に変形して,三角形の面積を求めている。 十分満足できる状況(A)‥‥‥ 複数の変形の仕方で,三角形の面積を求めている。 評価規準は,ものさしを当てる対象のような ものです。(A)や(B)は,その具体的なものさ しの目盛りのようなものです。 ここがポイント! 例えば,次のような適用題(底辺6cm,高さ4cm の三角形の求積)を提示し評価します。 ○(B)(おおむね満足できる状況)は,次のように なります。 (B) C1(倍積:新たに三角形を書き加え, 以下の式を記述している) 6×4=24 24÷2=12 12cm2 (B) C2(等積:新たに三角形を書き加え, 以下の式を記述している) 4÷2=2 6×2=12 12cm2 4cm 6cm 2cm ○(A)(十分満足できる状況)は,次のように なります。 (A) 上記(B)C1,C2 など,複数の求積方法で面積を求めている。 6cm ○ ねらいを達成していない子どもには個別に対応します。 ・ 個別指導(その時間内,次時の前)をする。 ・ ノートやワークシート等に助言をコメントする。 ★ 教師のノート等に個別指導の ・ 次時の始めに,補足説明をする。 記録を残すとよいでしょう。 ・ 次時の始めに,前時の復習の小テストをする。 ・ ねらいを達成していない子どもへの教材を用意する。・・・・・・・など。 評価の蓄積 テストの点数だけで 成績が決まるわけで はないんだね。 ○ 観点別に評価を蓄積し,評定の資料とします。 ○ 1時間の授業で4観点(国語は5観点)全ての評価 をすることは難しいので,ねらいに合わせて本時で 評価する観点を定めます。 ○ 単元全体を通しても,評価できない観点が出てくる 場合があります。 〇 年間指導計画の中でバランスよく,全ての観点の 評価をします。 4 ○ 学習課題 教材と発問を工夫して,子どもの問いを基に学習課題を生み出すよ うにします。 学習課題の条件 できるだけ多くの条件 を満たした学習課題に なるようにしよう。 ・子どもが興味・関心をもち,意欲的に追究できるものです。 ・一部の子どもだけでなく学級全体で共有するものです。 ・1時間を通して追究していくものです。 ・努力すれば解決できる程度の難易度のものです。 ・それを解決すると,本時のねらいが達成されるものです。 「学習課題」の扱い方 ○ 学習課題は,「何を」「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」「どれを」「どうやって」 「本当か」「できるのか」などを意識して設定します。 ○ 教材提示と発問の工夫により,子どもに問いをもたせ,「学習課題」を設定しま す。 ○「今日の学習課題は○○です」と教師が最初から一方的に宣言してしまうと, 子どもの主体的な追究は生まれません。 ○ 学習課題は,「~だろうか?」という疑問形で記述するのが基本です。 ○ 学習課題を板書するときは,四角で囲み,子どもに意識付けます。 ○ 学習課題「~だろうか?」に正対した学習のまとめを板書するのが基本です。 ※ p.6「学習のまとめと振り返り」p.13「板書」 p.15「ノート指導」参照 <具体例> 小学校社会科「これからの日本の食料生産」 T:(清水市と新潟市のスーパーで売られているまぐろの刺身を提示して)二つの ラベルを比べてみましょう。 C:どちらもびんちょうまぐろだ。おいしそうだなあ。 C:とれている場所はどちらも同じだ。 C:値段がかくれているぞ。いくらなのかなあ。 T:(二つの値段を知らせる。) C:値段が違うよ。新潟の方がすごく高い。 T:みんなは何を不思議だと思っていますか。 C:とれた場所は同じなのに,値段が違うことです。 T:今日はどんな学習課題ができそうですか。 学習課題:同じまぐろなのに,値段がこんなに違うのはどうしてだろうか? 5 ○ 学習のまとめと振り返り 授業の終末に,本時の学習内容をまとめたり,学びを振り返らせた りする時間をつくります。 授業終末における2つの STEP STEP1 学習のまとめ ○ 何を学んだのかを実感させるために,教師が学習内容をまとめます。その際,子 どもの言葉を拾いながら,まとめが学習課題と正対するように留意します。 <例> 学習課題 三角形の面積はどうやって求めればよいだろうか。 ま と め 長方形や平行四辺形に変形して求めればよい。 STEP2 学習の振り返り 〇 学びを自覚させるために,自分の学習の過程や変容を振り返らせます。その際, 何をどのような方法で振り返らせるのか,計画的に行うようにします。 <例1> 書く内容を例示し,選択させて書かせる方法 「今日の振り返りを次の三つから選んで書きましょう」 ①「なるほど・よく分かった」 ○○さんの という考え(説明)を聞いて, ということが分かった。 ②「変わった」 はじめは, だと思ったけれど, どうしてかというと だからだ。 ③「次は…」 について学び, だった。次は, <例2> 書き出しや文型を示して作文形式で書かせる方法 「はじめは」「授業での参考意見や資料など」「今は…」 今日は,・・・について考えました。 はじめは,・・・と考えていました。 でも,○○さんの△△の考えを聞いて,・・・が分かりました。 今は,・・・と考えるようになりました。 「学習のまとめ」と「振り返 り」 は違うんだね。 「振り返り」 は「感想」とも違うんだね。 に変わった。 たい。 資料1 ねらい 構想カード 教科 単元名 ① -1 構 どんな子どもに(子どもの実態) ① -2 想 指 学習課題を生み出す活動や教材提示 導 学習課題 ③ 追究する活動や働き掛け まとめ ② ⑤ ④ 学校名 氏名
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