第29回 秋田県教育研究発表会資料 【5日C会場④】 「英語 de 数学」授業チャレンジプロジェクト 大館市立下川沿中学校 教諭 米澤 佳祐 教諭 水沢 浩子 講師 相馬 昌明 1 はじめに 日本語と英語には,文法の違いだけでなく表現方法にも違いがある。例えば英語圏では,長方 形に日本語のような「たて・よこ」という概念はなく, “length(長さ) ”と“width(幅) ”とい う捉え方をする。同様に,分数の言い方も英語では分子から読む。分子を分母で割るという表現 である。また,別の面から捉えると,数学用語の中には日常の生活でよく耳にする英語がある。 例えば, “square(正方形・平方・2乗) ”や“cube(立方体・立方・3乗) ” , “infinite(無限) ” などがある。 中学校の英語では教える内容は決まっているものの,このような英語の表現方法や考え方を他 教科から学ぶ活動が,柔軟な思考の手助けになり,英語力の相乗的な力に発展するのではないか と考えた。これは数学だけに限らず,音楽や社会・理科などの教科でも同様な現象がある。英語 自体を学ぶだけではなく,その文化の一部に触れることで,学習に大きな深まりが出てくるもの と考える。 2 英語で数学(他教科・領域)を行う目的 (1) 固定的な日本語の表現に捉われず,他教科・領域での英語表現を理解し,柔軟な思考でその 事象を表現する生徒を育てる。 (2) 日本語と英語の違いに焦点をあてながら,英語力の向上を図る。 (3) “伝わらない”という経験をすることで,伝えようとする(言語表現)力を向上させようと する学習意欲をさらに引き出す。 (4) 将来,様々な場面で英語で自分の考えを伝える言語能力の基礎を養う。 3 活動の実際 1学期の後半(7月)に,帰りの会前に行う5分間の計算ドリルの答え合わせを英語で行った。 生徒の反応から,理解している様子や意欲などに手ごたえを感じたため,50分間の授業を実践 するいい流れをつかむことができた。 (1) 中学3年 3章「2次方程式」 学習課題:Which pattern should we use? 2次方程式を因数分解の考えを用いて 解くことができるかどうかをどのように 判断するか,という内容を学習した。因 数分解で解く方法と平方根の考えを使っ て解く方法のそれぞれのよさに気付かせ, 英語で発言した。 1 1回目の実践を通して,生徒によっては数学に対するハードルが低くなった様子が見られ た。また,1回目の実践では「数学的な見方や考え方」と「数学的な技能」の観点で評価を 行ったが,英語での表現や意欲から,英語の評価も可能ではないかと感じ,2回目の実践へ とつなげた。 (2) 中学3年 5章「相似な図形」 学習課題:How do you find the length of our school’s building? 実測できないものの大きさや長さを,既知の長さを用いて求めるにはどうすればよいか, という内容を学習した。航空写真から,グラウンド上の 100m 走の白線や 25m プールの縦の長 さなど,実際の長さが明らかであるものを見つけ出し,それをもとに比例式を用いて校舎の 長さを求める学習を英語 で行った。 本時のまとめにおいては,ちょうど その時期に英語の授業で学習していた 関係代名詞を取り入れ,英文で表現し てまとめた。このような授業構成によ って,数学の観点での評価とともに, 英語の観点でも評価することができた。 4 成果と課題(○成果 △課題) ○英語で発問することで日本語よりも簡潔になり,それに対して生徒も簡潔に答えられるように なった。本時の授業のねらいや,教師が生徒に求めることが明らかであれば,生徒への発問が より精選される。そのため,授業に無駄がなくなり,引き締まった授業となる。 ○「数学は不得意だが英語は得意な生徒」が進んで挙手発表することができる。一方, 「英語は不 得意だが数学は得意な生徒」は,自分が求めた答えに自信があるため,堂々と発言できる。生 徒一人一人が自分の得意な所でしっかりと活躍できる場面が増えた。 ○意図的に「伝わらない経験」をさせることで,より上手に伝えようとし,表現する能力が向上 する。生徒に「伝えたい」と思わせるには, 「伝わらない」ということを実感させることが必要 だと感じた。 ○生徒によっては,数学に対するハードルが低くなる。数学者が使う言葉を自分が使っていると いう喜びも生まれた。 ○教科の融合によって,新たな発見や気付きが生まれる。 ○今回は「英語 de 数学」を実践したが,数学以外でも可能なのではないか。生徒の実態や学校・ 地域の特色によって,他教科・領域でも行うことができると考える。 △50分の授業のうち,どの段階まで英語での授業ができるのか。日本人ならば,どの教科の授 業にも,日本語で押さえておきたい重要語句や,日本語での解釈が必要なことなどがたくさん ある。授業内容に応じて,英語で進める部分と日本語で進める部分を分けなければいけない。 △「英語 de 数学」を行うには,時間割を数学科と英語科の教員のTTに編成しなければならな い。今回私たちは,数学科2名と英語科1名の計3名で授業を実践したが,カリキュラムや時 数等の関係で,事前にしておかなければいけない計画や準備がたくさんあった。 2
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